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手紙その10『再現性』

これは人生の命題の一つ。
僕が人生をかけて追求する最重要課題のお話。


はじめに

僕は『練習』が大好きだ。
野球、ピアノ、執筆、ゲーム、そして仕事。
趣味も仕事も上達してこそ面白いし、
研鑽が自分をさらなる高みに到達させてくれる。
それが人生をより豊かにする。

じゃあ何のために『練習』するのか。
それは『再現性』を高めるために他ならない。
技術の向上、それはそれで意味のあることさ。
だけど『できた』事が偶然では価値が少ない。

伝えたいのは実践レベル。
大人は勿論全ての子ども達にも、わかるように。
そして、教えた子どもたちに出てくる『差』。
この『差』を可能な限り、少なくしていく。
これが僕の使命だと思っている。

技術を伝えるYouTubeなどは多く存在する。
多くは教えた技術を反復練習させる。
反復練習が絶対に必要であるのは間違いない。
反復の中で余計な動きや雑念が取り払われ、洗練されていくのは僕自身も経験している。
けれど、何を意識して反復させるのかまで触れているYouTubeは少ない。
僕が伝えたいのは、そこなのだ。

技術論を語るときによく言う言葉がある。
『◯◯に正解はないが不正解はある。』
再現性も同様に。
その不正解をまとめていこう。

無理をするな

再現性を下げる大半の原因がこれ。
素人を見た時に感じる玄人の感想が大体これ。
『そら無理や』(その動きを再現するのは無理)
「理(ことわり)」に「無い」と書いて『無理』
そう感じさせる『無理』とは何か。
細かく分けるとこんな感じ。

  • パワーが強すぎる・弱すぎる

  • やりにくさや難しさを感じている

  • 関節可動域を超えて動かしている

  • 不必要な動作が含まれている

  • 痛みがあるのに続けている

そのひとつひとつを下に。。

①パワーが強すぎる・弱すぎる

力(%)に対する制御の難しさを下記にまとめた。
(実際はもっと複雑です。イメージしやすさ優先)

80〜100% 最強・制御不可 超ケガしやすい
60〜79% 強・制御困難 ケガしやすい
40〜59% 普通・制御しやすい ケガしにくい
20〜39% 弱・制御しやすい 超ケガしにくい
1〜19% 最弱・制御困難 ケガしない

これは『筋力』に対する無理。
出力を上げればそれだけ制御が難しく、ケガしやすいのは想像に難くないが、出力が最小でも制御が難しい。
これは運動エネルギーが少ないため慣性が働かなくなることと、動かす部位の重さの影響を受けやすいためだ。
そのため、出力が20〜60%くらいがコントロールしやすい。

まず日常動作でイメージしてほしい。

例えば字を書くこと。
20%以下で書いた字は薄くて見えにくい。
60%以上は筆圧が強く見える。

箸を使う。
20%以下では食べ物を落とすだろう。
60%以上では食べ物を切ってしまいかねない。

歯磨き。
20%以下で歯垢は落ちない。
60%以上は歯茎を傷つけかねない。

こんな風に多くの日常動作の出力は20%〜60%内に収まっている事に気付くことだろう。

次に連動性のある動作について。
例えば投球動作。
80km/hのボールを投げるとする。
投球は全身運動になるわけだが、初心者の方の多くは上半身だけで投げようとする。
この時の身体の各部のパワーバランスの悪さが再現性を低くする。

【右投げ初心者のパワーバランス】
左脚 7%
右脚 7%
体幹 10%
左腕 0%
右腕 76%
これは俗に言う「手投げ」のパワーバランスだ。
手投げは初心者に特徴的な投球動作で、出力は右腕に偏重する。76%は制御が困難なためコントロールも悪くなる。右上肢帯への負担が大きく、76%だと一発で壊れる事はないが、再現し続けると肘や肩は間違いなく壊れる。運動としての再現性は低い。

【投げ慣れている右投選手のパワーバランス】
左脚 20%
右脚 20%
体幹 20%
左腕 10%
右腕 30%

左腕以外が「制御しやすい」の範囲に入る。
左腕はその他の部位に働く慣性の力を受けるため10%で事足りる。
全ての部位が「ケガしにくい」の領域に入る。
このような動作は見ていて無理がない。
そのため再現性は高い。

上達させたい動作を反復練習する際には、どれほどの出力を出しているか、どんなバランスか、常にそのフィードバックを分析しながら練習を行うと、驚くほど上達が早く、再現性が上がる。

②やりにくさ・難しさを感じている

これは『難度』に対する無理。
洗練された再現性の高い動作は『やりやすい』『簡単』というところまで落とし込めているからこそ再現性が高い。
ということは『やりにくい』『難しい』と感じるならば再現性は低い。

僕はこの文章をスマホで、フリック入力で書いている。最初は慣れずにやりにくかったもんだが、現在では簡単というところまで再現性を高めた。

『やりやすさ』『簡単さ』の考察、追求から再現性向上にアプローチするのも一つの手段だということを伝えたい。


③正常な関節可動域を超えて動かしている

これは『関節』に対する無理。
捻挫や肉離れなどのケガを誘発しやすい。
また、これ以上は可動しない所から更に動かそうとして、他の部位まで可動させてしまう『トリックモーション(代償運動)』もこれに含まれる。
再現しようとする内に痛みが生じてくる事が多いため、再現が難しくなっていく。
だから、常に関節には『遊び』を意識する。
一つの関節動作で可動域を超えそうなら、『超える前』に隣り合うもう一つの関節で代償させる。
それでも超えそうなら、もう一つ…もう一つ…と動かす関節を増やしていく。
そうして関節運動の連動性を高め、全身運動に近づけていけば『無理』は遠ざかり、再現性は高まる。

④不必要な動作が含まれている

何か技術的な指導をしていると、
『その動き要る?!』ということがよくある。
反復練習は動作を洗練させるために行う。
洗練とは、不必要な部分を削ぎ落とすという事。
普通、反復練習の中で不必要な動作はなくなっていくが、『クセ』として残してしまったり、新たに不必要を継ぎ足してしまってりする事がある。
洗練された再現性の高い動作は極めてシンプル。
ムダのない動きを目指す。

⑤痛みがあるのに続けている

これはもはや再現し続けられない。
単純に無理をしている。
痛みがあると、逃避動作が入ることがある。
逃避動作→新たな痛み→逃避動作→新たな痛み…
この悪循環に陥り、再現性どころでなくなる。
ケガも悪化する。
これは心の痛みにも言える。
根底にストレスがあれば再現性は下がる。
痛みがあれば即座に中止し、新たな動作を模索する。


失敗しよう

『失敗は成功のもと』
練習中は失敗を恐れてはならない。
『1+1=2』
この時、2以外の全数字が不正解になるように。
成功のパターンは多くない。
けれど失敗のパターンは無数にある。
だから、あらゆる失敗を経験する。
その度に軌道修正していく。
トライ・アンド・エラーを繰り返す。
本番や試合で如何なる不測の事態にも対応できるように、その危険性の芽を練習で全て摘む。

イメージしよう

成功までのイメージとその予定調和。
イメージした通りに物事が進むこと。
具体的なイメージ作りが必要になる。
ゴールは『思考停止』。
そのために考えるところからスタートする。
何の考えもなく練習を始めてはいけない。
『なぜ、そうしてるのですか?』
そう誰かに根拠を問われたら、即座に答えられるようでなければ再現性は上がらない。
反復練習で、イメージを固めていく。
思考停止で再現できるまで。

環境を整えよう

計算ミスする子ども達に多いのが数字をキレイに書かないということ。
一か所でも間違えると、それ以降は全て間違ってしまう『筆算』などは特に再現性が求められる。
にも関わらず、字が汚かったり桁を揃えてなかったりすると、ミスの確率は上がるばかり。
計算だけに限った話ではなく、再現性を上げるためには、自分で再現しやすい環境を整えねばならない。

客観的な意見を大切にしよう

先人の言葉はゴールへの最短距離であることが多い。しかし、その先人とは条件や環境が違ったりして、全てが自分のためになるとは限らない。
その意見を尊重しつつも、必要不必要を取捨選択する必要がある。
そして、素人の第三者の意見も馬鹿にはできない。何もわからない人間のほうが柔軟な発想を持つこともある。思いも寄らないアイディアやヒントをもたらしてくれる事も多い。
そういったアドバイスを素直に聞き入れ、ひたすらトライ・アンド・エラーを繰り返す。
ひたすら成功率を上げていく。

終わりに

いかがでしたでしょうか。
本気度が伝わったでしょうか。
元々僕は、治療家として、治療の再現性を高めるために試行錯誤してきました。
そのうち、その再現性の追求が他のことにも繋がる事に気づきました。
息子たちは今、投球動作の再現性を高めるために頑張っています。
そこから更に学び、気付き、それをまたインプットしては噛み砕き、自分なりの解釈を加えてアウトプットする。
その繰り返しです。
まだその真髄を僕は知らないのかもしれない。

いいかい息子たち。
探求の道に終わりはないのです。 

3652文字。
これ、手紙じゃなくて論文だよね。

酔芙蓉
花言葉は『幸せの再来』

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