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内省としての文章
"言葉"について考えることが増えた。
それは、文章を書く機会が増えたということもあるし、3歳になる娘さんとの会話を通して改めて言葉の面白さを知ったということもある。
また、何よりも教育の場に立った時に子ども達に"言葉"を通して、"言葉"についてどう伝えていけばいいのかを考えるようになったこともある。
何かで見たか読んだかしたのだけど、"言葉"が生まれた背景としてこれまでは、人とコミュニケーションを取るために言葉が発展してきたと考えられていた。
でも、最近の研究では思考を深めるために発展した、との見方があるそうです。
コミュニケーションのためのツールとして発展したと思われていた言葉が、実は人とコミュニケーションを取る以前に、なにかを考え、整理し、より深めるために必要だったということ。
言葉の本質的な意味を、改めて知ったような気がしました。
言葉が無ければ、イメージの中でしか思考は深まらず、それを論理的に整理するのは難しい。
ところが言葉が生まれたことにより、頭の中で色々なことを考えられるようになった。
言葉を通してはじめて、自分が何を考えているのかを、自分で知ることができる。
「どう書くか」よりも「何を書くか」
どんな言い方、どんな書き方をすれば人に伝わるか、というスキル的な話しはよく見かけます。
もちろん、言葉の持つ役割のひとつが人に何かを伝えることなのだから、それが大切なのは充分理解できる。
だけど、本当に大切なのは「何を書くか」のような気がするのです。
「何を書くか」については書きたいと思っている人には必ずある、という前提とされてしまっていることに疑問を感じるのです。
「書きたい」=「書きたいことがある」とは限らないのではないだろうか。
「書きたいことがない」のに「何かを書きたい」なんて人が思うわけがない、と決めつけてないだろうか。
僕は「書きたいことがない」のに「何かを書きたい」と思うことはわりと多い。とは言え、文章を書くことが好きかというと、圧倒的に苦手意識の方が強い。
この書きたいことがないのに書きたい気持ちがなぜ起こるのかを考えてみると、自分の中に書きたいことの火種のような物はあるのだと気がつきます。
「何」をいかにして切り出すのか
何となく感じたことっていざ文章にしてみると面白くなかったり、チンケだったりしてしまう。
また「何」を日常の生活の中からどう切り出せばいいのかと迷うこともある。
大げさに言えば、文章、言葉にできないことで自分がどうにもつまらない人生を歩んでいるようにすら思えてしまうのです。
同じような毎日を送っているはずなのに、それを切り取る視点を持っているか否かはだいぶ違う。
「共感される」というのは読んだ人が同じような体験をしていたり、思いを感じていたりしていると言うことだろう。
つまり、書き手(話し手)が特別な経験をしているわけではないのです。
娘さんが面白いことをした。気になるニュースを見た。仕事で面白いこと(辛いこと)があった。
そんな些細な日々の出来事。それを経験した瞬間は言葉にできそうなのに、いざ言葉にすると「なんだか違う」気がする。
または、文章にしようなんて思える出来事は自分には特にないと感じてしまう。
「何を書くか」があってはじめて「どう書くのか」がある。
この「何」というのがその人らしさに繋がるのだろうと思うのです。
内省としての文章を書く
内省としての文章を書く、と言うのは決して目的やゴールではなく、文章を書く過程を通して自分の好奇心や探究心を広め、深めることが目的。
同じ景色を見ても、同じ出来事があってもその出来事を言葉として切り出す力を持っている人は、その出来事からより多くを学び、その学びをより深めることができるのだと思うのです。
その感じたこと、整理したいことをより正確に表現したり内省したい。だから「育てる」と「育む」の違いが大切だし、「思う」と「想う」の違いも必要になる。
だからこそ、細かいけどニュアンスの違いをより正確に表すためのボキャブラリーや言葉との向き合い方を知りたいと思う。
言葉の発展が「人とのコミュニケーション」と「思考の内省」のための2つの意味があったように。
書きだす文章にも「誰かに伝えたいことがあるから書く」場合と「思考の整理のために書く」場合があっていいと思うのです。
そうした内省としての文章があるんだってことを、子ども達にも考えてみてもらいたいと思うのです。
※この記事は2018/6/9、LINE BLOGに掲載したものです
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