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ニューヨーク4年目突入: 日本人として世界で戦う事

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こんにちは。昨年投稿したnoteの記事に思った以上の反響を頂き、折角なので更に1年経過しての所感をどなたかの参考となればと思い投稿します。

所感としては一通りの適応(言語、文化)は完了し、良くも悪くも漸く「アメリカ人」として振舞える様になったなという感覚です。何もなければ永住権も来年取得出来る予定なので、移民として経験する最大の苦労という点では一通り終わったのかなと感じています。

ただ、厳しい現実としてアメリカ社会ではこれで漸くスタートラインに立てただけであるという事も感じています。自身のキャリアやプロフェッショナルライフについてはかなり思考の変化が大きい一年となったので以下に綴っていこうと思います。


日本人・マイノリティである事による苦悩

前回の記事に私が経験した挫折について詳しく記載しましたが、今年は少し違う形で苦悩を感じました。

特に大きかったのは「日本人」「移民」である事に対する差別発言で、プロフェッショナル・プライベート双方の場面で何回か言われました。「日本は奇妙な文化を持っている」「日本人は縦社会育ちだから何を言われても従順であるべきだ」「クソ外人」といった、個人的には受け入れがたい発言でした。当然発言者達は白人ですが、驚きなのは本人達にあまり悪気がないと言う事です。

これについては異なる意見があるでしょうが、最終的に私は「私がその人に私しか提供出来ない突き抜けた価値を提供出来ていないためにこの状況が生まれた」と気付きました。もし私が自分しか提供出来ない価値を提供し、相手に価値ある人間だと認められていたらこのような状況は避けられたのだと。(アメリカメディアの大谷翔平選手への意見が掌返しレベルで変わったのも彼が圧倒的な価値を見せ付けたからだと思います。)

一方でどれだけ努力しても、アジア系移民としてはアメリカのマジョリティにはなれない現実を痛感しました。アメリカで生まれ育ち、ネットワークを構築してきたアメリカ人に、全く同じフィールドで戦った場合は彼等よりも突き抜けた価値を提供するのは難しいだろうと感じました。

自己認識としても「日本人」「アジア人」「移民」というアイデンティティがとても強くなったなと感じる一年間でした。

自身の価値に対する自問自答:同化から異化へ

ここから色々と思考を昇華させて、どうすれば自分という人間をこの市場でブランディングして価値のある人間として売っていけるか、という問いに暫く向き合っていました。

結論から言えば、私は日本人としてのルーツを最大限に活用すべきだと考えるようになりました。日本とアメリカの両方の文化を深く理解し、両市場でネットワークを構築していることを活かした方が差別化も出来るし勝ちやすい。これを使わないのは論理的に考えてもオポチュニティロスだなという事に今更気づきました。

私は渡米から2年程度はアメリカ社会への「同化」に力を入れ、アメリカで「アメリカ人」として見られるために努力しました。この際は正直移民である事を少し後ろめたく思っていました。

しかしアジア系アメリカ人や有色人種のアメリカ人との対話を通じて、これはアメリカで生まれ育っていても苦労する問題なのだという事を学び、この同化戦略を取った上で勝つ事はかなり難しいのだと理解しました。

アジア系アメリカ人がマイノリティとして幼少期から苦労している話等を聞き、正直自分はアメリカで育たなくて良かったなと今は思っています。
自分の日本で育った事に対する感謝と喜びも感じる様になり、結果私は自分のアイデンティティを強調し、自分の「日本人」「アジア人」「移民」である事も活用してキャリアを作って行こうと思う様になりました。

読者の方には何を分かり切った事を今更言っているんだと思われる方も多いかと思います。しかし、アメリカ現地で戦う日本人移民としてはこの「日本カードをいつ切るか?」という問いは飲み会などでも必ず全員一度は議論するトピックなのです。

私の場合はアメリカで3年働いて同化しようと奮闘するうちに、どうしてもアジア的な思考回路を捨てきれない事に気付きました。謙虚さや、他人の気持ちを慮る事が美徳とされてきた社会で育ったので、どうしても自己主張をアメリカ人やインド人レベルでまだできないなという感覚があります。

しかしながら、これらの感覚も寧ろ素晴らしい物であり全く捨てる必要の無いものだと今は感じています。この様な違和感を感じ始めてから改めて自国の歴史や文化を勉強する事で今は移民である事、日本人である事に多大な誇りを抱く様になりました。

この様な様々な葛藤を経て私は今後異化路線を取って差別化して行く事を決めましたが、その異化路線、そして所謂「日本人カード」の切り方というのにも数種類あるなと感じているので簡単にまとめつつ自分の思考を纏めたいと思います。

日本人カードの切り方

「日本人カード」という言葉が馴染みのない方もいるかもしれませんので、私の理解を共有します。これは『日本語能力や日本の文化理解、日本市場での人脈や市場理解を活用したキャリアの選択』を指します。

具体的なキャリアパターンとして、私がお会いした日本人の方をベースに考えると以下のような選択肢が考えられます。(これらのキャリアパターンに対するアプローチは多様で当然正解は無いと思います。)

日系企業

①日本企業の駐在員
②日本企業の現地採用社員

外資系企業

③外資系企業現地採用社員(日本・アジア担当ロール)
④外資系企業駐在員(日本・アジア担当ロール)

…③④共に金融機関で米国にオフィスを持つ日系企業を担当されているジャパンデスクの方がNYでは多い印象です。

起業

⑤日本の強みやアセット、日本とのネットワークを利用した米国現地起業家
… Oishii社、Bokkusu社等

⑥日本の強みやアセットを利用して国内起業後、米国進出している起業家
…CADDi社、ZEALS社等

もっと広範化すると日本を「アジア」と言い換える事も出来ますが、この様なパターンのキャリアを積まれている方にNYでお会いさせて頂きました。私は現在日本カードを切れていないので、⑦外資系企業現地採用(非日本関連)という部類に入ります。このパターンの内訳としてはビッグテックやコンサル、投資銀行の方が多いなと感じています。

私はこの部類で上り詰めている方々は本当にリスペクトしかありませんし、移住直後に移民でこちらの会社の経営層まで上り詰めている人を自社で見てとんでもねえな…と思った事をよく覚えています。日本人の方だとマイクロソフト本社でCEO直下のEVPまで上り詰められた沼本健さんの事を知り、驚愕しました。

私も渡米当初は正直このルートで日本人である事関係なくアメリカ人と同じ土俵で「アメリカ人」として戦おうと意気込んではいたのですが、私の実力では持っている物を出し惜しみしていてはアメリカで突き抜けるビジョンが見えなかったので戦略変更しようと思ったのがここ数か月の思考回路でした。

自分の「日本カード」とは?

では自分はどう「日本カード」を使って戦おうとしているのかについて自身の現段階での思考を記録しておこうと思います。

結論から言うと、私は今後 (1)海外スタートアップの日本・アジア進出、(2) 日本スタートアップの米国進出 を支援することに焦点を当てたキャリアを構築したいと考えています。

UiPathでSeries Aの段階から参加し、日本市場の立ち上げを経験したこと、複数スタートアップの日本進出支援プロジェクトで経験を積んだこと、アメリカでの経営補佐経験やVCアドバイザーの役割によるネットワークなど、自分が持っている資産を最大限に活用することを考えた結果、この方向で進んでいきたいと(今は)考えています。

ただ、両方のシナリオにおいてアメリカの一流の人間とどれだけ信頼に基づいたネットワークを築けるかが大切だと思っているので、本業としては以上に記載した⑦外資系企業現地採用(非日本関連)を暫くは継続しようと思っています。つまり、日本カードをサイドプロジェクトとして活用しながら、本業ではアメリカ人としてのキャリアを続けてアメリカ人としてもブランディングを続ける「欲張りな二刀流」で進んでいく予定です。

終わりに

私の個人的な目標としては、日本スタートアップの米国進出に長期的に注力したいと考えています。これは日本は良いモノを沢山持っているにも拘らず、それを海外市場、特にアメリカ市場で十分に売り込めていないと感じているからです。

言語の壁に加えて、繊細な気遣いで平和や協調性を大事にしながら物事を進める国民性も含めて日本人が海外で勝負する場合はコミュニケーション方法にチューニングが必要だと思っています。多様性に溢れるカオスな国で育っているアメリカ人やインド人などは日本人の美徳などお構いなしに自己主張で押し切って自分の都合の良い方向に物事を進める事もあるので、日本人が損をする事も多いなと感じています。

ここを彼らと対等なレベルで交渉や議論を進める事でまだまだ日本は勝てると私は信じています。日本国内市場が収縮する中で、多くの企業にとって海外進出は今後必ず考えなくてはならないトピックになると思いますし、既になっていると思います。

そういった時に最初から伴走出来る様なビジネスパートナーになれる事を目指して、私はアメリカの荒れ狂う厳しい環境でまた一年間踏ん張って頑張ってみようと思います。

次回はいつ更新となるがわかりませんが、是非色々な方とお話したいなと思っておりますので宜しければTwitter (Xにまだ慣れない。。)やLinkedInからコーヒーチャットなどお待ちしております。

お読みいただきありがとうございました。それでは!




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