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渡米してからの2年を振り返って思う事 - HARD THINGS 移住版

こんにちは。UiPathのアメリカ本社にて勤務しているTomoと申します。2022年の9月20日を以ってNYに東京から移住してから2年が経ち、振り返るとかなり色々な挫折をしたなと思い、この記事を書く事に至りました。

最近”Zero to IPO”というOkta共同創業者兼COOの方が書かれた本を読み、起業家が経験する苦痛や困難を生々しく書かれてあり「ああ、うちの会社だけじゃないんだな」「分からない中でもがくのは皆が経験する事なんだな」と思い、「自分だけじゃない」と思えた事にかなり救われました。

自分は移住もかなり似た様なプロセスがあるのではないかと感じており、特に帰国子女で最早アメリカの方が長いとかでは無い限り色々な挫折や困難があるのではないかと考えています。

この記事では経験した挫折を幾つかに分けて書いていこうと思います。正確には渡米一年後(丁度一年前)に内省用に書いた事を少し編集して書いています。漸く今楽しくなって来たからこんな事書いていますが、一年前の当時は「NY生活キラキラしてるね!」と言われる中、精神的にかなりキツ過ぎて似た様な経験をしている人にしかシェア出来ませんでした。笑

1: 自己紹介と生い立ち

そもそもお前誰なん?という話があると思うので、以下に纏めました。
簡単に言うと、ほぼ日本育ち・大学も日本で通い、大学在学中に英語を死ぬ気で伸ばした後に、仕事でNYに移住してUiPathという昨年上場した自動化プラットフォームソフトウェアを販売する会社の社長室で経営補佐をしている者です。

ほぼ帰国子女でもなんでもなく、両親の仕事の都合で6歳になる直前までイギリスのロンドンに住んでいましたが、その6年と大学時代の1年のアメリカのミシガン州とフィラデルフィアでの留学以外はずっと日本で過ごしました。留学中はコンサルファームや個人経営の企業で週4でインターンに従事し、今のキャリアにつながっています。

この様な形で留学時代・大学在学時に早稲田国際教養学部の友人や、東京の街中やバーなどにいた外国人と仲良くなったりする事でひたすら英語を話して何とか身に着けました。

更なる詳細はこちらで!

https://note.com/tomo_us/n/n530892f70aa3/landing?puid=08fb04db-b514-49c4-863b-c42d9aa7d34e

2. 出国前に思い描いていた「ニューヨーカー」生活

出国前、正直に言うと自分はある程度「デキる奴」だと思っていました。社内での立ち回りや実際の仕事も自分自身そこそこ上手くやっていた自負もあり、周囲の方から褒めて頂く事も多く、それに加えて英語という側面からも価値を出せていたので自分自身かなり手応えを持ちながら仕事を回していました。
プライベート面でも日本では友人にも恵まれ、比較的友達を作るのも得意な方だったのでNYでも問題なく友人も出来るだろうし、すぐ楽しめるだろうなと思っていました。

日本ではめっちゃ頑張ったし、NYでは経営層と働いてバリバリ成果を残しながら、将来は世界中の 超エリート達と渡り合って仕事をしてやる!と自信満々で出国したのが2年前の自分でした。

3. 理想を様々な面から崩しに来る理想と現実のギャップ

NYに来て最初は浮かれていたのですが、暫くするとどうも手応えがなく、成長している実感が持てない自分に気づきました。そのうち自分の能力の低さに自己嫌悪を覚えたり、何故こんな厳しい環境にわざわざ飛び込んだんだっけ、と思う事もありました。
単純に言うと若手がいきなり経営層やその界隈のドエリート達と仕事をしてそう簡単に価値は出せないよね、でもそもそも自分って若手だとしてもノンネイティブだし言語面・文化面で仕事においても社内の立ち回りにおいても他の若手と比べてもかなりハンデあるよね、と。

こうなってからは結構辛くて会議等でも自信がなくなってきたり、そもそもコロナ禍で出勤出来ず社内の人との関係も築けなくてかなりキツい時期が続いていました。2018年からずっとこっち側で経営チームとして仕事している人たちの輪の中に入って行くのはなかなか辛く、当然ですが移民の若手の気持ちなんて経営層は考える暇もないのでなかなか周りにも頼れず辛い時期が続いていました。

4. 挫折・自信喪失後の苦しみ

渡米一年後の所感としては発展途上、という感覚でした。ただ何が課題で、どう解決すべきかについては言語化して何となく希望が見えて来たものの解決には更に一年かかりました。渡米一年後当時の自分が纏めていた課題を当時の記したまま書いてみます。

言語・文化的制約

  • 思考の深さ・速度ダウン: 日本語だったらもっと出来るのに、と考えてしまう事がある。思考の詰めがどうしても甘くなる。

  • 仕事の進め方の違い: 会議の進め方から、仕事の段取りまで日本の方が丁寧だなと感じる事が多い。その反面、アメリカは早い。自分は色々構造化しながら進めるのが 好きだが、アメリカはその前にガンガン進める傾向があるのかなと 思った。(2年経ってこれは会社のフェーズの問題だったと気づきました。笑)

言語・文化に関係のない仕事能力の不足

  • 専門性(自分の武器)不足:日本では社内人脈と信頼貯金/英語力/プロマネ・ロジカルシンキングで戦っていたのですが、こちらに来ると社内人脈を失い、英語力は価値消滅となっ てしまった。プロマネロールもかなり社内人脈がものをいう所もあるので、なかなかZoomの世界では厳しく、辛い時期が続きました。また、プロマネ と言っても、その上で専門性が無いと話にならないのです。経験が足りない。これからこの不利な状況から作っていかないといけないのがなかなかにキツい。また経験のないVC業務も始めたがキャッチアップが追いつかずに辛い。同僚が死ぬ程優秀なのもまた辛い。踏ん張るしかない。

その他の精神的な負荷

以上は仕事メインの話ですがその他にも色々とあります。NYに住んでいると「ニューヨーカーかっこいい!」「キラキラな生活だね!」などと言われるのですが、正直色々大変だし、精神的に堪えた事も多々ありました。当然SNSなどでは良い面しか見せないのですが、今回は敢えて生々しい側面を記 そうと思います。海外生活もバラ色ではないのです。

  • 孤独

    • 人間関係の再構築・気の合う友人探し:日本では比較的友達が多い方だったのですが、NYに来てからは改めて友人グループをゼロから作り直す必要があった。基本的に僕は尊敬できる人や本当に良い奴だなと心から思える人と仲良くなるのですが、あまりそういう意味で合う人が見つけられなかったり、そもそもそこまでの関係が築けなかっ たりと結構苦労している。 そしてここでも日本人とは違うコミュニケーションプロトコルでないとこっちのコ ミュニティの中には入って行けないなと感じています、苦悩。

    • 出会いの制約:これは自分は特殊だが、コロナのせいで出会いがかなり制限されていた為かなりきつい。自分は人と会う事でエネル ギーが出て、人に会わないと死んでしまう面倒なタチなので結構ダメージデカかったです。

    • 理解されない孤独:

      • アメリカ人:当然ですが、ノンネイティブの移民、かつマイノリティでこっちの企業で戦っている苦しみなどこっちの人には分からないのです。アメリカで働いていれば当然期待値はアメリカ人に求められるものと同じ。その中で生まれる葛藤を理解してくれる友人や同僚など残念ながら殆どいないのです。心無い言葉を言われたりもしますが、一人で飲み込むことが多いです。

      • 日本人:日本人の留学生や駐在員もいますが、自身のキャリアパスがかなり 特殊な為、その人達とは違って一人で切り開かなくてはいけない苦悩がかなり大きい。先陣を切っている人がいない為なかなか相談できる人や理解してくれる人がいない。

  • 予測出来ない未来

    • キャリア:未来なんて分かったらつまらない!と思っていたが、先が見えなくて不安なのも結構辛い。キャリアで言うと自分がアメリカで戦っていけるのか?という不安が常にある。
      自分はかなり負けず嫌いな為、中途半端なキャリアを築くのは本当に嫌で、やるなら上を目指したいと思ってしまう。しかし、この国で上まで昇り詰めることが出来る自信が最近湧いてこず、なかなか将来どうなるかが見えない。

    • 住む場所と恋愛:この不安を持っていると「日本に帰った方がまだ戦えるのではないか」とかいう少し弱気な考えも出てくる。こうすると将来的に住む場所も分からない、そうすると恋愛も結婚も下手にできない、と色々と見えない未来の為に生活面でも結構制約が出てきてしまっているなと感じています。勿論そんなの最終的には自分が決める事だが、キャリアを中途半端にしたくないというプライドから決め切れない。そもそもアジア人男子マジでモテない!!!

  • 経済的負荷

    • 物価:バリ高い。年収1200万位ないと日本レベルの生活できないッス。

    • 家賃:高いです!ルームシェアでもマンハッタンだと15万~25万くらいはかかります。流石ニューヨーク。

5. 克服するきっかけと転機

以上は1年前の自分が記した当時の悩みでした。今見返すと驚くほどに殆どが解消されたなという感覚です。しかし、全てが解消されたのもそこそこ最近でした。自分の克服した方法やきっかけについて以下に記そうと思います。

言語・文化的制約

もうこれは一つに尽きます。逃げずに向き合う事。英語話したいならネイティブから学ばないとネイティブにはなれません。私の友人兼爆推しインフルエンサーAnanya様もこう仰っています。

私は渡米してから日本人と住んだ事もなく、こっちで仲の良い親友もアメリカ人、仕事では日本人が一人なので当然朝から晩まで英語。もちろんとても素敵な日本人の友達も沢山いますが、日本語だけ使う様な環境やノンネイティブとだけ絡んでいてはアクセントやネイティブの言い回し方、アメリカ人の振舞い方などは身に尽きません。

言語・文化に関係のない仕事能力の不足

これは最早解消されていないかもしれないのですが、仕事を回す為に人に頼る事を覚えました。社内人脈を出来るだけ1:1などを通じて構築する、分からない事は仕事を回すためには何が何でも実行しなくてはいけないので、人に聞くしかない。そんな感じでした。しかし経営層を巻込むというのはまた別のレベルの話でしたが、意外と恥ずかしいきっかけでマインドセットを変える事に成功しました。

  1. アオアシ:田舎の中学生が急にスカウトされてプロサッカー選手を目指す漫画です。アニメを腐りかけている時にたまたま見て、主人公が一番下手くそな中プライドを捨ててひたすらに「プロになる・世界に行く」という事だけを目指して周りに聞きまくって、どんどん上り詰めていく姿を見て、「ああ、俺もNYに腐りに来たんじゃないんだよな。こうならなきゃな。」と思いました。

  2. Zero to IPO:始めにも書きましたがOktaの創業者が書いた本です。読み始めると共に共感の嵐で、辛い事が普通である、訳が分からないカオスの中で限られた情報で意思決定をしなくてはならない、等々元スタートアップで最近上場した会社で勤務している自分、そして移住してからの自分の辛さとも色々重なる部分があり、この本を読んでかなり吹っ切れた感覚がありました。

  3. ストレングスファインダー:自分の強みが圧倒的に人間関係構築能力と、ゴールから逆算する事だと気づいてそこを生かせる部分に集中しようと思いました。

これに気づいてからは、自分のどうでも良いプライドなんて捨てて会社の為にやれる事を全部やってやろう、というメンタルになりました。最近は我々も上場してから1年という事で会社も次のフェーズに入った事もあり新しいCo-CEOやその他経営陣をGoogleやMicrosoftから採用し、そこで自分も色々活躍出来そうな場を見つけたりと転機だと感じています。兎に角今は仕事楽しくて夜もあまり寝れなくなりつつあります。笑

以上に書いた通り意外な所から学びが合ったりするので、自分のメンタルが潰れない様にしつつ、色々な人や物に触れると良いのかもしれません。

6. 移民として持つべきメンタリティ(自論)

色々書いてきましたが、今同じような苦しみを経験している方へ自論ですが幾つか持つべきメンタリティを書いてみようと思います。

i. この苦しみは一人だけではないのでシェアしよう

移住で辛いのはあなただけじゃない。寧ろ辛い現実に向き合い続けて乗り越えようとしているあなたは素晴らしい。日本人や移民の人と辛い時は正直に気持ちをシェアしよう、結局わざわざ移住してまでしたかった挑戦も自分が復帰不可能なほどに潰れてしまったら終わりなのだから。

ii.文化適応が終わったら、あなたは現地人より輝ける

第二言語習得、かつ日本とほぼ真逆な文化に完全に適応するというのは半端なく大変だし、精神もすり減らされる事はあなたも知っているはず。そもそも家族や友人を日本に置いて飛び込む覚悟を決めるのも大変な事。それを乗り越えられる程に努力出来るあなたは、今まで馬鹿にしてきたり見下してきたアメリカ人なんて一瞬で抜き去れる。今は辛くても何を掴むために移住してきたのか、その先の栄光を見つめて踏ん張れ。

iii.プライドに邪魔されるな、ただプライドは持ち続けろ

移民なんだからできないことが多いのは当たり前。プライドは自分を前に突き動かし続けてくれるエンジンだが、それにつまらない形で邪魔されるな。前に進みたいなら周りに頼れ、出来ない自分を曝け出せ。弱みを曝け出せるのは強さであり、頼れば助けてくれる人は周りにいる。

7. おわりに

2年経ち、漸く英語もアメリカ出身と思われるくらいには上手くなり、仕事もある程度経営層達と仕事が回せる様になってきています。ただ、自分はまだ仕事で何かを成し遂げた訳ではなく、今漸くスタートラインに立てたなと感じています。

最後に、私の思いとして個人的には日本から海外で挑戦する人はもっと増える必要があるのではないかと思っています。日本の良い部分をたくさん知っているからこそ、遅れている部分は海外で学んだ人材が日本に持って帰る、そんな世界が待っていると良いなと思います。

アメリカに移住した人と話すと、大体の人が日本への帰国を考えていないというのが現実です。給与、仕事環境、文化、様々な面で日本に帰るメリットが見えないという事をよく聞きます。残念ながら私も現時点では同じ意見です。

しかしアメリカや他の国の現地企業で切磋琢磨する人がもっと増えて、日本ももっと海外の人にも魅力的な環境や制度を作り、海外で経験を積んだ人が日本に帰って海外の良い所と日本の良い所と上手く組み合わせていく-そんな事が今後増えていくと良いな、と思ってこの記事を書きました。

個人的に尊敬している大先輩の石坂誠さんの以下の取り組みなどは非常に素晴らしい一例だと思っています。

以上長くなりましたが、もし共感したり、何か思ってくださった方がいればTwitterからご連絡頂ければ幸いです。

漸くスタートラインなので3年目も頑張ります!

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