焦燥感とノリと『ウクレレ』。
『ウクレレ』を買った。中古で約1万円。以外に痛い出費である。買った当初から後悔とまあいっかと適当な気持ちが並行していた。
2月の終日。友人たちと久しぶりに飲みに行って、ご飯を食べながら馬鹿な話や真面目で現実的な話をしていると今日で2月終わりやんと言う話になった。2021年になってからこれといった思い出がない。気付いたら3ヶ月も経っていた。何もしていない。本当に何も。
僕は来月の4月で25歳になる。友人たちも大学生の時に知り合ってから4年が経ち、共に25歳になる。20代半ばになって、周りから大人として認められるようになったが、精神的には変わらない。18歳頃から時が止まったままみたいだ。このまま、何もせず一年後も再来年後も似たようなことを話しているのではないかと焦燥感が年々積もり、どうするべきか緊急会議を開いた。
何か始めるなら、自分たちの好きなものが共通している旅に関するものが良いだろうと言う話になり、旅と言えば音楽だろうと結果になった。海外や僕たちが居る京都でも何処にいっても路上ライブをしているアーティストが居た。それと共に憧れがあった。楽器や歌声だけで自分という存在を表現し、金銭を稼ぎ自由に旅をする人々。あんな風に成れたらと幾度も思ったが、実現することはなかった。今がその時なのではないかと。
酒が抜けていない足取りで楽器屋に向かい、各々が良いと思った楽器を手に取り悩んだ末に買っていく。僕と友人はウクレレを選び、もう一人の友人はインドの打楽器を買ってそのまま鴨川を目指す。元々ギターを10年以上やっていたので、ウクレレを選んだ。持ち運びのしやすさもあるが、海を見ながら砂浜でウクレレを弾いている自分のイメージが何故か浮かんだ。引っ越しまで1ヶ月もないのに荷物を増やしてどうすると思ったが、序盤に書いたようにまあ良いかと思ってしまった。
鴨川等間隔で座るカップル横目に、少し離れた場所に座って弾けもしないのに弾いた。その日はかなり寒くて、河川敷沿いは特に冷える。その寒さすらどうでも良いような夜だった。高揚感とそこそこ痛い出費のウクレレと名前も忘れてしまったインドの打楽器が2月の終わり、良く分からないノリから始まった楽器の演奏と共に僕たちの笑い声がただ響いていた。
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