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【随筆】クッキング文学 バターチキンカレー

 日曜日は手の込んだカレーを作るのが趣味、なんてことはまったくないが、今日はお昼前からバターチキンカレーをつくることにした。じつは昨日のうちに、手羽元10本をヨーグルトに付け込んでいたのである。ヨーグルトは250g。ジッパー付きの袋を使うと便利だ。

 鍋にバターを入れて、溶かす。20gでよいところを、欲張って40g入れてしまえ。バターと冠した料理に、バターが多すぎるということはあるまい。鍋を温めれば自然とバターは液状になる。ああいい香りだ。ここに鷹の爪を1つ投入。本当は3本くらい入れたいが、辛すぎると妻が嫌がるから仕方ない。温度が上がるのを見計らって、ニンニクとショウガをチューブから絞り出す。目安はひと片くらいだが、ちょっとくらい多くたってどうということはない。あ、ショウガ入れ過ぎたかも。シャーッという音とともに、湯気と香りが立ち込める。私、料理作ってます感に浸る瞬間だ。気を抜くとすぐ焦げるので、火加減をおさえつつ軽くかき混ぜ、みじん切りした玉ねぎを投入。―――と、皮にくるまったままの玉ねぎがこっちを見ている。しまった、先に切っておくんだった。

 いったん火を止めて、大きめの玉ねぎひとつ、みじん切りに。思ったより少ないな、もう半玉追加しよう。玉ねぎのみじん切りは目に染みるというが、コンタクトレンズをしていると意外と平気。これ、豆知識になるだろうか。さて気を取り直して鍋を再加熱、玉ねぎを炒める。事前にレンチンすると楽なんだけど、今日は時間をかけよう。味の違いに影響するのかは、正直わからない。だけどそれより、今はこの時間をただ楽しみたいのだ。

 玉ねぎが炒まったので、トマト缶をひと缶投入。中火で炒めながら水分を抜いていく。酸味を感じる蒸気がたって、いい感じである。この時点ではカレーというよりイタリアンだな、などと思いながら、焦げないように下からかき混ぜる。カレーは夕食用だし、お昼はパスタにしようか。昼も夜もトマト料理か、まあ悪くはないけど・・・ん?カレーはトマト料理かな?

 さあて、トマトの水分も抜けてきたこのタイミングで、昨日から準備していた手羽元をヨーグルトもろとも鍋にイン。袋を絞るように残さず出し切る。全体をざっくりかき混ぜて、馴染んだら水を・・・あれ、何か忘れてる?―――レシピを確認してようやくミスに気付く。げっ、カレー粉入れるの、トマトの前だった。

 カレー粉 大さじ2
 玉ねぎをあめ色になるまで炒めたらカレー粉を入れ、1分炒める―――

 遅い、入れるのも気づくのも遅いよ。とはいえ嘆いても仕方ない、とにかくカレー粉を投入。水を入れる前で本当に良かった。カレールウの場合はだいたい最後に入れるから、この間違いはあるあるかもしれない。そうだよな、どうだろうな。
 全体を混ぜるように炒めて、いい感じになじんできたので、水を3カップ入れる。それと塩を小さじ1入れて、軽くかき混ぜ沸騰を待ち、あとは弱火で1時間。ちょっとミスしといてなんだが、むずかしい料理ではない。かけた時間がカレーをちゃんとおいしくしてくれるはずだ。立ち込めるスパイシーな香りは、キッチンからダイニングへ、ダイニングからリビングへと流れていく。ああ、いい時間だ。

 しっかり煮詰まった鍋の中身、もう食べてしまいたいという思いに駆られるが、ここは我慢。いったん冷ましておくのが肝心だ。今はまださらさらのカレーが、夕方にはドロリとするはず。鍋にふたをして、一時中断。洗い物をささっとすませて、・・・めんどくさいし、後でもいいかな?


 時間は18時。お昼に食べたナポリタンも、いい感じに消化された。さて夕食にむけて米を炊くぞ。3合、いや4合か。ご飯はあればあるだけ食べるだろうな、やっぱり3合にしておこう。飯を炊きつつ、カレー鍋に火を入れる。温まったところで、ひとくち味見。ウスターソースを大さじ1、混ぜて味を整える。よしカンペキだ。

 ビールが冷えてるか確認しようと、冷蔵庫を開ける。何だろう、銀のボウルが入ってる。中には、はて、小麦粉かなにかだ。と、妻がそれをとって、まな板の上で押し広げ始める。―――ナンか!
 オーブンで焼かれるナンの、小麦の芳ばしい香りの中、お皿にカレーを入れる。ご飯も炊けて、料理もお腹も準備オーケー。

 テーブルに、ご飯とナンと、バターチキンカレー。乾杯は冷えたビール。予定外のナンに感謝。これはありがたい。何がって、ほら、ナンがあるから、有り難しってね。


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