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正解のないアートの楽しみ方って、いったいどうやるの?『13歳からのアート思考』

タンザニア在住ライターのほりともです(@tmk_255)です。

最近読んだ、おススメの本を紹介します。

『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』

今年のベスト5に入りそうなくらい私にはヒットした本です。

友達が描いてプレゼントしてくれた青色の抽象画が家にあるのですが、訪問客が来るたびに「これは何?」「海?」「イルカ?」など聞かれて、困っていました。

こんな、美術に苦手意識を持ったまま大人になった私のような人には心強くい本。読んだ後は、むしょうに美術館に行って、新しい視点でアートを見たくなる、そんな本です。

最近は、アート思考、美的感覚が求められる時代だ、という趣旨の本が多くあります。この本はそういったものと少し違います。なぜなら、美術の先生が中学生に新しい視点で美術の授業をするという形式で進むので、斬新で楽しいんです。

アートを見るには、それが何を意味するのかを理解したり、解説を読んで背景を知るのではなく「自分の目で良く見る」ことが何より大切。これを、実際どうやってやるの?というのが、この本でわかります。

美術館に行く大人は、絵の横にある解説を読んでから、その後にさっと絵を見て納得した気になりがち。(まさに私)鑑賞というより、確認作業になっていると作者は指摘します。

驚いたのは、中学生が嫌いになる教科の1位が美術なんだそう。なぜなら、今の美術の授業は、絵を上手に書くとか、有名なアート作品を覚えるということに重点をおいているからだと指摘しています。でも、これからの美術は「自分だけのものの見方や考え方」ができるための教育であるべき、そうなれば、私たちは美術の本当の面白さを体験できると言います。

各章では「素晴らしい作品とは?」「アートのリアルさとは?」「アート作品の見方」「アートの常識とは?」「私たちの目に見えているもの」などに分かれて、20世紀の6つのアート(ピカソ、エジプトの壁画、フェルメール、日本の屏風絵、アンディ・ウォーホールなど)を題材にして授業が進んでいきます。

ピカソのあの絵はなぜアートなのか?どこが見どころなのか?いったい何が描かれているのかわからない抽象画とか印象派の絵は、アーティストではない私たちがどうやって楽しめるのか?など。

アートの楽しみ方に「正解はない」とよく言われますが、それじゃ、どうやって私たちアートの知識がない一般の人が楽しめるの?を教えてくれます。

アートの歴史もとても面白い。最初のルネサンス絵画は、教会やお金持ちに雇われた画家が職人として依頼された絵を描きました。だから、「キリスト教」テーマの宗教画や、お金持ちが権力を示すための「肖像画」が多いそうです。その後裕福な市民が、もっと生活に身近な絵画を好んだので、風景、日常生活、静物を題材にした絵が増えます。この時は、「目に映る通りの世界を描く」ことが画家のテーマ。ところが、20世紀に入ってカメラが発明されたことで、アートの目的が変わっていきます。

今度、美術館に行った時にはぜひ試してみたいと思ったのはこの3つ。

①アウトプット鑑賞:作品を見て気が付いたことをアウトプットする

②作品とのやりとり:作品から短いストーリーを紡いでみる

③背景とのやりとり:作品背景を知ったうえで、自分なりに考えてみる

②の「作品とのやりとり」のやり方で、なるほどな~と思ったのは、「絵の見方は千差万別で、いろんな想像を膨らまてみるのはOK」ということ。絵を鑑賞する時に、その画家が何を意図して書いたのかを私たちは知らなくても良いのですね。例えば、音楽を考えると、そうしている人が多い。思い出の音楽は、自分の聞いていた時の体験を重ねて覚えていたりするけれど、その音楽を作った歌手はその人なりの思い入れで作っています。アートも一緒で、歴史的背景や何を描いたものかを知らなくても、自分なりの感じ方や見方をすればいいのだと著者は言います。

子育てにも取り入れられそうなヒントもありました。子供が絵を描くと大人は「何を書いたの?」と聞いてしまいがち。でも、子供が何かを描く時、それは具体的なモデルやイメージをもって描くのではなく、自分の身体の動きによってただ紙の上に刻まれていく「行動の軌跡」であることもあると。大人は「絵=目の前に見えるもの、自分が知っているものを表した」と考えるけれど子供にとって「絵=自分の身体の動きを受け止めてくれる舞台」であることもある。

この子供と大人の違いがわかりやすい例だけれど、こうやって、「絵のとらえ方」は無数にある。

「子供とアートブックを一緒に眺めて、感じたことを話し合う機会」そんな提言もあって、ぜひ子供たちとやってみたいなと思いました。

自分の好奇心や内から湧き出る関心に目を向けられる人がアーティストなのだという言葉が響きました。絵を描いていたりモノづくりをしていなくても、私たちはアーティストとして生きることができるのです。

#わたしの本棚

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