とみ

記憶の雑記。 今は日記みたいだけど、少しずつ物語に変えたいと思っています。

とみ

記憶の雑記。 今は日記みたいだけど、少しずつ物語に変えたいと思っています。

最近の記事

気温 

暑さから逃げるためにエアコンをつけたのですが、気温が変わらない室内は私の時間さえも止めてしまったようです。 外に出ると、暑い、不快、冷たい、ぬるい、寒い、暑い、移り行く気温とそれを携えた人がそこにいて、私だけ取り残されていた気がします。 変わらないことの気持ちよさと快適さは、移り行く人の強さを見ると、弱さに変換されてしまい自己嫌悪に陥る。別の性質のものを個人の中でぐちゃりぐにゃりと拡大収縮伸ばして曲げて、比較してはいけない姿で比較して自分を苦しめるのは、いつになれば終わり

    • 書き散らし12

      ブカブカの黒い服に身を包み、一歩離れた私の友人 私の弾む心と眠そうなおじさん 霧島が飛んだ スカートの丈に悩まなかった15歳 声に会いたいという表現の良さ 私がいう大丈夫とあなたが言う大丈夫の重み 葛根湯を飲む、全てが解決する苦味 カフェインを飲む人 コーヒーを飲む人 床と同化した

      • ゆうれいのはな2

         気づいた時には、家の布団で眠っていた。帰ってきて何もできずに横になったから、布団に触れていない部分からは体温が抜け落ちてしまっている。つめたい足を抱え込んで、布団を体に巻き付け、じっとしていると少しずつ全身が温まってきた。部屋の灯りは消えたままで、カーテンを開け放した窓から外の暗闇が窺える。今は、何時だろう、時間を確かめたいけど、カバンに入れたままのスマホを取るために起き上がる元気もなく、室内が薄く反射した真っ黒な窓を見つめる。  反射した窓の中に映る花瓶に入った花は弱々

        • 書き散らし11

          野球部の帽子、ユニフォーム、やけた肌、全てが憎悪と慈しみをもたらす テニス部のラケット、どうしてこんなにあるの 桜から始まる歌の数 電車からしかまだ桜を見ていない 白木蓮の散り方に自己嫌悪を重ねる 椿のように死にたいとしわしわの手で私の手を握る 種となって冷たい土の中に埋められそのまま芽出さずに眠りたい あの子のために綿毛となって飛んでいきたい

          花嫁友人

           親友が結婚した。  友人に対する独占欲が小学生の時から強かった。隣にいるのは私、その子の親友と呼ばれる立ち位置がいつも欲しかった。奇数グループは大嫌いで、よく見る仲良し3人組って私には怖くて仕方ない。どうしても私は誰かの特別になりたくて、3人仲良しって私とあの子が親友同士で、もう1人「も」仲良しってことだと信じてて、あの子と仲良しの女の子が2人で話している日には腹の底が黒くてドロドロしたもので満たされてしまう。    あの日も、朝から嫌なものを見た。教室の扉をガラリと開け

          花嫁友人

          書き散らし10

          昨日まで白い靴だったのに革靴を履いたひと いつもより歩みが遅い学生 梅と桃、さくらはもう少し コーヒーは温かいのに、ホイップクリームが冷たくて苦手 私の知らない言葉を話す綺麗なひと 知らない言葉だけど綺麗な声で紡ぐからきっと綺麗な言葉 腰の痛み、武士のような佇まいを目指す 同じカフェにいる大事な話をする男女と手を繋ぐだけの男女 見つめあっている2人の長い髪の毛

          書き散らし10

          ゆうれいのはな1

           病院の待合室、次から次へと呼ばれる言葉の中に私の名前はまだない。昼下がりの明るいベージュが待合室を包み込んでいて、普段なら順番が回ってこないことに苛立ちを感じるところだけれど、今日はもう予定もないし、ただただ漂うゆるやかな空気に身をまかせる。  看護師さんはよく通る高い声で知らない人の名前を呼ぶ。カワグチさん、ヒラタさん、コンドウさん。小学生の時に一回だけ同じ班になったカワグチノブオくん、小6の時に放送委員で一緒になったヒラタさん、大学で可愛いと噂だったコンドウユリちゃん、

          ゆうれいのはな1

          書き散らし9

          かえるぴょこぴょこ春っぽいね おおいぬのふぐりの青とホトケノザのピンク 春の訪れを愛せるようになった 杉の木を憎む君と春を慈しむ君 河辺で見た鳥たち、羽ばたきが強くなる 春が寂しい季節だったのは、少し昔のこと 春はたくさんお出かけしようね、初めて私から約束した

          書き散らし9

          自我

           随分と長い時間、文字を書くことから離れていた気がする。私の中で生まれて消えていく感情や、少女の嘆きや男性の物語は誰に認知されるわけでもなく消えてしまうのかもしれない。きっと見たことのある姿でしょう、聞いたこのとある言葉でしょう、それでも私の中に芽生えた言葉や姿を可能な限り、文字にしたいとたまーに思う。  私はこの場所で私の中で死んでいくものたちの言葉を少しでも拾い上げて、書き記していくしかない。歴史の中に私はいなくても、私の歴史の中にあなた達はいたんだと思い出させてあげた

          書き散らし8

          呼ばれない待合室で冷たくなった足先 病室の苦しさの中とびきり素敵な手紙を風にのせてくれた人 あの子はヒーロー お見舞いの花の黄色いこと 乾いたタオルからする家の匂い 明日もし起きなくていいなら、今夜はパーティ 唐揚げの横のレモンをかけるか、あなたはいつも聞いてくれる 黒い靴と白い靴を履いた男女 明日はお休みですね

          書き散らし8

          眠れない夜のこと

          誰にも見つけてもらえないのかもしれない。そんな不安を抱えながら、今日も目を瞑る。 明日がいい日にならなくてもいいから、この時間を永遠にしてください 夜の黒は白に近いと思う あなたに会いたいから夜がなるだけ早くおわりますように 国道沿いの車の灯りが消えない窓 月明かりしか見えない窓 街灯しか見えない窓 窓辺で寝る猫、こっちへおいで みんな何をみながら夜を過ごしていますか

          眠れない夜のこと

          書き散らし7

          甘やかされることと愛されることの隙間 太陽を明るい星と呼ぶ人 ゆうたくんともえちゃん やりがいとかくそくらえとか 最後に乗ったフェリーでしたお別れ パーティの主役が消えた夜

          書き散らし7

          ケーキ入刀

           好きだった人が結婚した。SNS、最悪、なんでも、知らせるサービス。友達と呼べるかあやしいその子が投稿している動画には、純白の服に包まれた好きだった人が馬鹿みたいにでかいスプーンでケーキを食べさせてもらっている。 「わたし、これやる人種とは一生仲良くできないな」 インターネットに数多ある知らないカップルの披露宴の動画を観ながら、スコップでやるケーキ入刀やおもちゃの釣竿で新郎にケーキを食べさせる笑顔の女性を見ながら、先輩はつぶやいた。 「先輩、結婚式なんて人生全肯定イベン

          ケーキ入刀

          書き散らし6

          乾かせないまま滴が落ちる髪 私の黒い髪を綺麗だねと褒めてくれたひと 猫の毛みたいに優しい髪の彼女 髪と肌からだけ感じられるその人の美しさ うねる漆黒に留まった花弁 青いドレスから伸びる白い首、お花畑のようなあなたの髪 世界で1番綺麗な日に理由がないと隣にいられない 朝日がさした時、あなたの髪は1番美しい

          書き散らし6

          めがね

           コンタクトが妙にずれて今日も目が痛い。ツーウィークのコンタクトレンズは開けてまだ5日目なのに、もう使い物にならない。メガネに変えようと目を開く中指に力を入れるが、ずれる癖になかなか取れないレンズに苛立ちが募る。  顔の余白が広いことが強いコンプレックスだったあの頃、少しでも隠すために大きめのフレームのメガネを選んでからはや5年。顔の余白は白いマスクで隠されて、伸ばしっぱなしの前髪とメガネをかけたら顔のほとんどが出てこない。隠しすぎだよなと、メガネのフレームをなぞりながら信

          書き散らし5

          メガネが曇って恥ずかしい時 メガネが曇って救われる時 初めて職場で方言が出た日、にやりとする先輩 手が悴まない夜とフリック入力さえできない夜 ずっと停められたままの車 クリスマスリースがいつの間にかしめ縄に変わって、今はもう何もない 工事の振動と歯医者さんの振動の類似性

          書き散らし5