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花嫁友人

 親友が結婚した。

 友人に対する独占欲が小学生の時から強かった。隣にいるのは私、その子の親友と呼ばれる立ち位置がいつも欲しかった。奇数グループは大嫌いで、よく見る仲良し3人組って私には怖くて仕方ない。どうしても私は誰かの特別になりたくて、3人仲良しって私とあの子が親友同士で、もう1人「も」仲良しってことだと信じてて、あの子と仲良しの女の子が2人で話している日には腹の底が黒くてドロドロしたもので満たされてしまう。
 
 あの日も、朝から嫌なものを見た。教室の扉をガラリと開けると、窓際で2人が外を見ながら何か話している。こっちに気づいた2人が、にっこり笑っておはようと言うから、急いで荷物を机にしまって、ランドセルをフックにかけたあと、2人の元に駆け寄った。ねえ、私がいない間に何を話していたの、そんなことは聞けなくて、新しく始まった会話の話題は昨日の夜のドラマの話で、朝礼のチャイムが鳴った。
 あの子は私がくるまでの間、本当は私といるよりずっと楽しい時間を過ごしていて、私はあの子の1番じゃなくなっているのかもしれない。そんな不安がずっとこびりついていて、黒板に等間隔で行儀良く並べられた先生の綺麗な字も昨日の放課後隣のクラスの男の子たちが喧嘩した話も、全部頭に入ってこなかった。2時間目の算数の時間が始まって、計算式を解いていても、数字の羅列は頭にちっとも入ってこずに、文字を追う私の目は滑り、彼女は3時間目の体育の時間にあの子と私、どっちとペアになってくれるのか不安で涙が溢れそうになった。

結婚式、あの子の披露宴には私がしらない人で溢れていて、でもあの子のために手紙を読み上げるのは私で。昔の私が聞いたら、ほくそ笑んでいたでしょう。選ばれたのは私だと。
 だけどそんなトクベツは呆れるくらい小さいものだった。あの子が世界で1番綺麗な日、今、あの子の隣にいるのは私じゃないから。

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