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恐るべき公安👮‍♂️⑦-02公安調査庁と内調「スパイ獲得マニュアル」

恐るべき公安⑦-02公安調査庁と内調「スパイ獲得マニュアル」

悪名高い公安の
組織や手口に迫っていきます。

青木理「日本の公安警察」

青木理「日本の公安警察」

青木理(あおき おさむ)
1966年長野県生まれ。ジャーナリスト、ノンフィクション作家。
90年に慶応義塾大学卒業後、共同通信社入社。
社会部、外信部、ソウル特派員などを経て、
2006年よりフリーとして活動



公安調査庁の活動と実態

協力者獲得マニュアル

●協力者獲得マニュアル

表紙に「取扱注意」の朱印が押され、「工作・基礎調査事項」と題された
公安調査庁の協力者獲得作業のマニュアル文書
が手元にある。
一読すれば明らかなとおり、その手法は公安警察のそれと完全な相似形をなしている。

文書によれば「作業過程」として掲げられた事項は次の4点に大別される。

▲第1
めぼしい人間の選定[予備対象者の選定]=日常的に役に立つ人間、指導的な人
間、工作条件のある人間等を仕分ける。

▲第2
調査の開始[基礎調査の開始]=基礎調査は工作の成否を決定する重要な仕事。
無用な摩擦や紛争を避けるため、特に綿密、周到に行うこと。

▲第3
最終選定=紛争に発展する可能性が大きいか、獲得した場合、
情報収集面で効果があるか、担当官を誰にするか等を検討する。

▲第4
獲得工作の開始[説得焦点の決定]=つまり具体的な動機づけ
には、
感情的・思想的・物質的の3要素がある。

3要素
▲感情的
組織内の不平不満、組織内派閥・対立のため安全感の欠如、組織内の非人間性に根ざす組織活動への幻滅
▲思想的
心境に変化をもたらした原因・動機を深く究明することが必要
▲物質的
経済的な面での必要性及び金銭的な誘惑による

青木理「日本の公安警察」

「身辺調査の項目」

「身辺調査」の内容は、多岐に渡り個人を丸裸にする。
一方で、統一教会が勧誘の際に、財産を持つ金持ちだけを狙い
徹底調査して、集団で勧誘していたことが明らかになっているが
その情報は、公安から何らかの協力の見返りに得ていたのでは
ないか?とも疑われる。

文書に記された「調査事項」も公安警察と同様、きわめて広範囲に及んでいる。
例えば
「身辺調査」としては以下の項目を挙げる。

「身元(本籍、出生地、現住所、氏名、ペンネーム、生年月日)、人相、特徵、風体、生い立ち、
経歴(学歴、職歴、団体活動歴、前科)、
思想傾向(組織内の地位、環境、組織活動に関する心境)、
家族状況(家族構成、健康状態、就職、入学、進学の有無、病気等)、
経済状況(職業、収入、資産、住居、家族の生活実態等)、
社交面(親戚、友人、知人との交際状況)、
性格(個性、趣味、嗜好、素行等)、
本人の問題点(困惑、塩問の有無と事情、組織に対する不平・不満、家庭内での札様、その他、生活上、思想上の困惑、苦悶)、
健康状態と特殊技能、
他の治安機関との関係の有無、
工作推進上妨害となる事項」

青木理「日本の公安警察」

「工作に都合の良い人物像」

「工作に都合の良い人物像」は、組織を裏切りやすい嘘つきの人物像である。
統一協会で信者に勧誘しやすい人物像と一致するのでは?と思わなくもない。

これらの調査によって、公安調査庁が描く
「工作に都合の良い人物像」
との照らし合わせが実施される。再び文書の例示を引く。

「工作に都合の良い人物像」
・有能な活動家であるが、比較的意志の弱い人物
・組織活動に対し、不平不満を抱いている人物
・経済的に困窮している人物
・自分の力で救済することの出来ない事案に直面している人物
・担当調査官と特別の間柄にある人物
・強力な影響のある第3者の紹介の得られる可能性のある人物

青木理「日本の公安警察」

対象者を選ぶポイント

公安調査庁の最高幹部が現場の新人調査官を前した挨拶では
「初めて取り組む人は相当な不安がある。
それを解消するためには、こちらが強い決意を持つことだ。
我が国の治安維持という重要な役割を持っているんだという気持ちを持って、
皆さんのような若い人にの頑張ってもらいたい」
これは、統一協会が信者の「善悪の判断力を失わせる」過程に似ている気がする。
初めは抵抗感があるが、徐々に人を騙していくことに抵抗がなくなる過程。

●対象者を選ぶポイント

身辺調査=基礎調査が終わると最終的な対象者選定に入るのも公安警察の手法と同じだ
参考までに文書が記す「対象者選定の着眼点」とその根拠も一部を列挙しておこう。

(1)既存資料の活用――個人カードの利用
(2)公然資料の活用――「赤旗」、選挙用ビラ、官公庁発行の機関紙・誌
(3)他機関の利用——入国管理局、海上保安庁、福祉事務所、職業安定所、市町村役場の外国人登録係、官公庁の勤労係等

(4)既存協力者の利用——協力者が直接所属する組織以外の他の組織のことを聞く
(5)第3者の利用――担当官の知人、恩人、親友、同窓生等。

しかし、調査の事実を対象者に知られる危険性は聞き込みの方法よりはるかに多い。
したがって、第3者を利用する場合には、対象者の基調に準じて慎重に調査しておく必要がある
(6)聞き込み――必ず「聞き込み先」についても十分注意を払う必要がある
(7)尾行・張り込み――尾行・張り込みは調査官自身の直接調査であって、
「無から有を生ずる」最も価値ある手段である。

しかし、察知されたらしいと感じたら早急に中止し、別の機会に行うことが必要である。
また、監視調査は、一定の期間、粘り強く集中的に取り組まないと成果が期待できない。

最近、公安調査庁の最高幹部が現場の新人調査官を前に、こんな訓辞をしている。
これも同庁が協力者獲得工作をどのようにとらえているかを推し量る意味で興味深い発言だ。

「工作手法はいろいろ考えなければならない。
相手に合わせた工夫をする必要がある。
そこで皆さんにお願いしたいのは、我々が我が国の治安を担っているんだという
気概を持って工作に当たることだ。
工作には時代にあったやり方がある。初めて取り組む人は相当な不安がある。
それを解消するためには、こちらが強い決意を持つことだ。
我が国の治安維持という重要な役割を持っているんだという気持ちを持って、
皆さんのような若い人に頑張ってもらいたい

青木理「日本の公安警察」

公安警察との不仲

●公安警察との不仲

ところで、公安調査庁の存立基盤をなす破防法は警察との関係を次のように定めている。
「公安調査庁と警察庁及び都道府県警察とは、相互に、この法律の実施に関し、
情報又は資料を交換しなければならない」
(29条)

だが現場調査官と公安警察官との関係は、ほとんどの場合において最悪である。
視察や協力者工作という中心的な作業上で競争関係に置かれているせいか、
同じベクトルを指向する公安情報収集組織としてのライバル意識によるものか、
双方が協力して情報収集にあたることは全くといってよいほどない


逆に1人の協力者を奪い合うことも稀ではなく、
公安調査庁が運営している協力者を強権にまかせて公安警察が寝返らせたり、
公安警察の運営する協力者をカネにあかせて公安調査庁が奪い取ることすらあるという


だが両者の不仲を決定づけているのは、公安警察側の高いプライド、
そして公安調査庁側の抜き難い劣等感であろう

情報収集網において強大な装置を有し、刑事警察とは趣を異にするとはいえ
事件が発生すれば捜査に乗り出して容疑者の検挙を目指すことで
「治安を守っている」との強烈な自負がある公安警察にとって、
公安調査庁の調査官は目的もなく漫然と情報を集めている怪しげな組織に映るだろうし、
公安調査庁側の目には公安警察が強大な権限の上にあぐらをかいている鼻持ちならない集団に映る。
このあたりが双方の対立の原因と考えるのが妥当なところだろう。

青木理「日本の公安警察」

伊丹万作「騙されることの責任」

もちろん、「騙す方が100%悪い」のは紛れもない事実である。
その上で更に「騙されることの責任」を考えよう。

伊丹万作「騙されることの責任」

もう一つ別の見方から考えると、いくら騙す者がいても誰1人騙される者がなかったとしたら今度のような戦争は成り立たなかったに違いないのである。
つまり、騙す者だけでは戦争は起らない。騙す者と騙される者とがそろわなければ戦争は起らない一度騙されたら、二度と騙されまいとする真剣な自己反省と努力がなければ人間が進歩するわけはない騙されたとさえいえば、一切の責任から解放され、無条件で正義派になれるように勘違いしている人は、もう一度よく顔を洗い直さなければならぬ。
伊丹万作「戦争責任者の問題」より


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