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新規就農の実際/ 就農準備・農地・機械・お金/鳥取県琴浦町で新規就農

大変長らく更新していませんでしたが、ようやく新規就農者として開業しましたので、報告を兼ねて今までの経緯と、就農のために行った準備を紹介します。noteはなかなか継続できず、僕には労力がかかるので、最近はtwitterをしています。
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1.就農までの経緯

広島県出身
~2017.3鳥取大学農学部卒業
2017.4~2018.3飼料作物を生産する農業法人(鳥取県内)
2018.4~2020.1二社目は九条ネギを専門に扱う農業法人(京都府)
2020.2~2022.1鳥取県琴浦町で二年間の農業研修(スイカ・ミニトマト)
2022.2~営農開始
1-1.飼料作物を生産する農業法人

飼料作物収穫オペレータとしての業務や、飼料作物の生産に関わる業務を行いました。農業機械等の扱いに慣れる上ではとても良い経験となりました。特に、土地利用型の農業法人では農業機械の運用時間が個人の農家の数倍になるため、機械トラブルがつきものですが、機械トラブルに対するトラブルシューティングは後々、個人で農業するのにとても良い経験となっています。新規就農を志したのはこの農業法人にいた頃です。
→参考:https://www.youtube.com/watch?v=xit2ukYahlE

1-2.九条ネギを専門に扱う農業法人
農業での独立を目指し、転職しました。
独立支援研修生制度という雇用形態を設けており、農場勤務の社員より優先して栽培管理や農場運営に関わる業務をできるということでした。
当初から、鳥取県内で就農希望でしたが、産地と品目の関わりを無視し(その重大さを当時気づいていなかった)、この法人に九条ネギ栽培を学び、鳥取で九条ネギ栽培で独立するつもりで転職しました。
結果として九条ネギ農家にはなりませんでしたが、畝立てや肥料散布など、作業精度が求められる農業機械作業をする場面もある一方、収穫や一日で10km以上も歩いて農薬散布したりなどの体力仕事も多くあり、農家として必要な基礎的な能力を得ることができました。

1-3.鳥取県琴浦町で二年間の農業研修(スイカ・ミニトマト)

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九条ネギ栽培ではなく、スイカ・ミニトマトを品目として扱うことに決定。ここまでの経緯や、研修中に行った就農準備過程も含めて、下記に紹介します。

2.就農に至るまでにぶつかった壁と対策

就農準備を本格化する上で、ぶつかった壁を時系列に紹介します。
要約すると、
1.九条ネギを鳥取で作っても流通面やブランドとして不利
2.就農資金が足りない
↑農業研修開始前
↓農業研修開始後
3.農地
4.家
5.農業機械

2-1.農業研修開始前
ここでは、主に九条ネギの農業法人にいた頃の話です。

九条ネギを鳥取で作っても流通面やブランドとして不利

そんなん前から分かってんだろ笑笑と思いながらでも読んでください。
2018年4月に転職してからすぐは、現場作業で足腰疲弊しながら将来の事を考える余裕がなかったですが、体力的に余裕ができた頃、具体的に就農にむけた道筋をつけるため、少しずつ準備を始めました。

最初は、鳥取県の新規就農関係の相談窓口に相談。また、県内の市町村へ就農相談に行きました。こうした相談を重ね、産地の推奨する作目を作るからこそ、適地適作で良いものが作れ、なおかつロットが揃い、市場で有利な販売が出来るということや、単独で人とは違う作目を作ると相当苦労することになることを理解できました。

就農資金が足りない

今思えば相当安直だったのですが、当時はお金はなんとかなると思っていました。農地を借りて、人から必要な時に機械を借りて、あとは種苗費、肥料代があれば農業できるだろうというくらいの感覚でした。

相談に行く先々で開業資金はいくら用意できるかと聞かれ、50万円ですと答えていました。返事は最低でも300~500万は手持ち資金が要るというような回答を多くいただきました。

大学時代の知人で、手持ち資金数十万円やむしろゼロに近い状態から新規就農をしている人も知っていたので、お金がなくてもできると考えていました。

複数の市町村で就農相談を行い、結果として、琴浦町でスイカ・ミニトマト栽培を学び独立する事を決意しました。

結局京都まで行って、九条ネギ栽培で就農するわけでもなくなりました。

鳥取に移住し就農するのに、技術もない、お金もない、土地もないし、何も信頼がないからせめてお金だけは貯めて帰ろうと、その時決意し、京都でアルバイトを多数掛け持ちしながら農業法人で働く生活をその後1年半しました。結果としてこの資金が本当に役に立ったので、そのことについても後述します。

2-3.農業研修開始後

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研修期間は2020.2~2022.1
この期間でスムーズに営農開始を迎えるための準備を行いました。
栽培技術を身につけることは当然のことなので、ここでは深く掘り下げません。ここでは、農地・家・農業機械についての準備を紹介します。

農地
農地探しは今後の営農のあり方を決める要素として最も重要だと思います。
しかしながら、運要素が本当に大きいと感じました。

研修開始から間もない頃から農地探しを町役場の担当の方に協力していただきながら開始しました。

スイカとミニトマト栽培を行うので、選択肢としては主に2つ

1.田畑を借りて新規にビニールハウスを建設する。

2.中古ビニールハウスを購入し、修繕して利用する。

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ビニールハウス新築には半額助成の補助金(地域・時期により異なる)もありますが、それでも一人で営農して十分な利益を得る面積分のハウスを建設すると実質負担額は500万円を余裕で上回ります。(あくまで当地の事例ですが)

そのため、どうにか中古で購入したいという意向を全面に出して、役場の担当の方や研修の師匠の農家さんを頼りました。
それでも、出てくる案件は本当に少なく、田舎は農地やハウスがいっぱい余ってるなんて嘘じゃんって思うレベルでした。

ですが、研修開始から約1年で条件の合う中古ビニールハウスの購入目処が立ちました。 ちょうど離農される農家のハウスと、規模縮小される方のハウスの購入が決まり、それぞれが1km程度の距離で、適切に修繕すれば難なく使用できる条件でした。これだけは本当に運が良かったといえます。


研修期間は、研修用の宿舎があり、そこに住まわせてもらうことが出来ました。しかし、研修期間が終われば基本的に退去しないといけないため、早々から家探しを始めました。

畑との距離や、買い物などの周辺環境を考慮しつつ、家そのものの条件(程度や価格)も踏まえた検討をしました。

実際には、町役場が運営する空き家ナビを中心に探し、数件内見を行い、家を決定しました。

家探しも、許容する条件とその時ある空き家情報と照らし合わせて、許容できる内容かどうか早く判断する必要がありました。空き家ナビ内でも、良い条件の物件は早く売れるので、いつまでも検討し続けていると、いつまでも購入出来ないことになるのである種の思い切りも必要でしたが、現状納得のいく選択が出来たので、これも正直運が良く進めました。

農業機械
農業機械は軽トラ、トラクター、動力噴霧器、その他細々としたものを研修期間中に揃えました。
鳥取県での就農の場合、設備や機械類(それぞれの種類別に条件あり)に対して購入費の半額助成される制度があります。

ただ、制度上適用範囲外のものや、条件の良い中古の出物があれば積極的に購入し、結果的に機械は全て中古で揃えました。
ヤフオク、ジモティーは本当に役立ちました。
状態はピンキリなので購入前の確認は大事です。
↓トラクター購入当時の記事

3.円滑に就農準備するにはやっぱりお金が必要

お金は大事
あまりに生々しい話ですが、避けては通れません。
農業に限らず、開業する上でぶつかる課題はお金だと思います。
もし、新規就農を考えている方が、このノートを読まれていたら、正直ここが一番伝えたい内容です。特に、自己資金をほとんど準備していない方へ。(過去の自分にも伝えたいくらいですが…)

お金はなくても工夫でなんとかなるとか、新規就農は補助金が充実しているから自己資金なくても大丈夫などと言われても、それなら自分でも出来ると思わないでください!!

確かに、工夫や知恵で資金不足を乗り越えられた方もいらっしゃいますし、それはそれで凄いと思います。

けれども、それはあくまでその人の事例の話であって、その多くが、誰かの助けを受けたり、運やタイミングで乗り越えられた一面もあると思います。
資金ゼロから就農して成功した方のエピソードはテレビ、雑誌、ネット記事などにとっても面白く魅力的なので沢山出回りますが、自分も同じ事が出来ると思わないでください。

そうした成功の影には、資金ショートで農業を辞めた方も沢山います。
それに、農業次世代人材投資資金の交付を受けると交付期間よりも短い期間で営農を辞めると、返還義務が発生します。
(5年間交付を受けたら最低でも交付終了後5年間は営農を続ける必要がある)
新規就農するなら、今後どんな状況になっても、農業を続ける覚悟が必要です。

開業資金はあった方が良い
農業には多くの補助金制度や無利子の資金がありますが、その多くは開業後や、営農開始直前の投資が対象になります。
開業に必要な資金を全てそれらに頼ろうとすると、就農準備スケジュールがかなりタイトになったり、補助対象にならない物への思わぬ支出でお金が足りなくなることがあります。
そうした出費に備えてまとまったお金があると、就農準備に対する機動力が増します。

また、前述のとおり、営農開始前にビニールハウスや農機具、家などを購入する際、良い出物があっても手元にお金がなければ購入の決断が出来なかったり、そもそも買えなかったりすることもあります。

ある程度開業資金を貯めていたことが、就農準備段階での支出をかなり支えてくれ、スムーズな開業につながったと実感しています。

4.新規就農に実際にかかった費用

あまり細かい数字までは言えないので、ある程度ぼかしますが、多くの方にとって気になる内容だと思いますので大まかに公開します。

機械類購入経費(軽トラ、トラクター、運搬車、動力噴霧器、その他)
約70万円
ビニールハウス購入・修繕
約210万円(うち自己負担額約150万円)
資材等購入
約150万円(うち自己負担額約50万円)
家購入
総額はここでは控えておきますが、購入時の諸経費で100万円弱出費
合計して開業前段階で、約350万円〜400万円ほどの出費がありました。

あくまで個人の一例で、万人に通ずる内容ではありませんが、このような出費がありますので、ある程度の貯蓄をして新規就農に向かわれる事を強くお勧めします。

5.興味を持ったらこちらまで

琴浦町では随時、新規就農を目指す農業研修生を募集しています。
この産地をこれからも持続させるためには新たな仲間が必要です。
新規就農に少しでも興味を持たれましたら、まずは相談をしてみてください。
マッチングするしないにしても、きっと今後の参考になるはずです。

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