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なりたい自分が自分 【てるちゃんの記事から二次創作】

ミーンミンミンミンミン

俺は森戸幸もりとゆき

築22年のアパートで一人暮らし

をしている大学3年の男だ。


ある日。バイトから帰宅して

一息ついていると、

ピンポーン

電子音が響いた。

(誰だこんな時間に。。)

「はい、どちら様?」(ガチャ)

ドアを開けた途端、

「アタシアタシ!」と言って

見覚えのない女性が

駆け込んできた。

(どこかで会ったっけな?)

そんなことを考えている暇ではない。

「いやいや、ちょっと待って下さい!」

制止するようなジェスチャーをすると、

「入っちゃダメ?」

瞳を潤ませた彼女を見て、

見事に俺の良心は痛んだ。

それに、彼女は怪我をしていた。

よく見ると膝を擦り剥いていて、

見た目はとても痛々しい。

偶然、俺も転んだばかりで

他人事とは思えなかった。

という訳で、手当のために

一時的に家に上げることにした。


『アタシ』と名乗る女性を

ソファーに案内すると、

救急セットで応急手当を済ませた。

「本当にありがとう!」

彼女は言った。


「いや、いいよ。

それより、君は誰なんだ?」

(アタシって言ってたよな。)

「ん、知りたい?」

そう言うと、彼女は

悪戯っぽく笑みを浮かべた。

「教えてくれたら嬉しい。」

すると、彼女の口から

想像もしえない言葉が飛び出してきた。

「アタシは君。」

。。。


「へ?俺?!!」

突拍子も無い話に一体どうなってるんだと

いう俺などお構い無しに彼女は続ける。

「幸はさ、もし女性になれるなら

アタシみたいになりたいんでしょう?」

「えっ、、、分かんね…。」

正直、図星だった。

俺は時折、もし女の子になれたなら

どんな風になりたいだろうと考える。


「そっかぁ…そしたら、今から証明するね。」

「はい?!!!」

ゆきのこと、何でも答えられるから!」

(そんな馬鹿げた話、信じられるかよ!

答えられるわけないじゃないか!!)

ちょっとムキになって俺は言った。

「じゃあ!俺の初恋は誰?!!」

稲荷田いなりた小学校の3年2組だった

星野えりちゃんでしょ?」

迷う素振りなど少しも見せず、

あっという間に答えてみせた。

「……当たり。」

(誰にも言っていない、何で分かるんだ?)

「ほら、やっぱりアタシは幸なの。

これで分かってくれた?」

「俄に信じ難いけど、俺じゃなきゃ

答えられるなんてあり得ない。」

そんな返事をしながらも、

もし本当に目の前の彼女が自分なら

彼女と話すのが途端に可笑しくなってきた。


そして彼女は、

「実はアタシ、家がなくて…。

幸の家に泊めてくれないかな?」

そう言い出した。

俺に彼女はいないし、

いつまで続くか分からない今

この状況を楽しむことにした。

「帰る家、無いんなら

決まるまでここに住むか?」

「ありがとう!!幸ならそう言って

くれると分かってた!」

言い終わらないうちに彼女は

俺に抱きついてきた。

「んえっ?!!」

彼女はそのままじっと動かずにいる。

(何だこの状況は。)

「あの、さ… 

そう言いかけたものの

それ以上言うのはやめた。


相変わらず微動だにせず

黙り続けている彼女に

「飯、食うか?」

そう話しかけると、

「うん、食べる!」

今までの瞬間が嘘のように

溌剌はつらつと彼女は答えた。

 

幸は数分、台所に立った。

「ほい、今日の飯。」

レトルトカレーを

即席ご飯にかけたものを、

彼女に差し出した。

「嬉しいけど、

なにで食べればいいの?」

この言葉で事態を察し、

慌ててスプーンを渡した。

「ありがとう。幸は

小さい時からこうだよね。」

彼女は笑った。 

「……俺のも取ってくる。」


二人正座をして、

「いただきます。」

そこから、

無言の時間が暫く続いた。


「あのさっ、なんて呼べばいい?」

(彼女が俺だとしても幸と呼ぶのは

なんだか気恥ずかしい。)

「そうだなぁ。えりはどう?」

「えっ、、、」

改めて見ると彼女には、小学生の

えり叶ちゃんの面影があった。


「おおう。え、えり叶…「そんなに緊張しちゃって(笑) 

今でも忘れられないんでしょう?」

(今度もまんまと当てられた。)

「ま、まぁ実はな。

えり、、えり叶には隠し事は出来ないな。」

「そうよ、私はえり叶だからね。」

そんな話をしている間にカレーライスは

二人の胃袋へと消えていった。

「ごちそうさまでした。」

「美味しかったね!」

「だろ?」

「うんっ!」


「よし、じゃあ風呂沸かすから。

着替えは…無いよな。わりぃけど、

今日は俺のスウェット着てくれるか?」

「タオルも今渡すよ。」

「大丈夫、ありがとう。」

「歯ブラシは洗面台の収納に

しまってあるから、新品の。」

「うん、分かった!」



テレビをつけると

『ホワイトハッカーシリーズ』がやっている。

「これ、ちょー好き!!」

「お。おもしれーよな!!」

(って、えり叶が俺なら好きで当然か。)


そのうちに風呂が沸き、

「先に入るか?」

「そうだね。先に入れてもらおうかな。」

スウェットとタオルを

受け取ったえり叶は、

脱衣所へと消えていった。


その間、いつでもえり叶が眠れるように

リビングの隅に来客用の布団を敷いた。

それからは突然の出来事に、ぼーっとしていた。


1時間程経っただろうか。

「おまたせ。幸もいってらっしゃい。」

「お、おう。」


いつもの様にシャワーを済ませ、

浴槽の蓋を開けるとそこには

見覚えのあるものが浮かんでいた。

?!!!

ガーガーアヒルのおもちゃだ!!」

「小さい時よく遊んでたんだよなぁ。」

俺の中からどんどんワクワクが溢れてきた。

(そうか、俺はガーガーとまた遊びたかったんだ。

この年になって子供みたいなことだって抑えてた。)


俺が部屋に戻ってくるのを確認したえり叶は

まるで見ていたかのように、にっこりと笑っていた。

「えり叶!湯船にガーガーが…!!」

「遊びたい気持ち、無意識に閉じ込めてたでしょ?」

「うん。俺、いつからこうだったんだろう…。」

「これから1つ1つ、一緒に思い出していこう。」

「お布団敷いてくれてありがとう。

今日はもう、おやすみ。」

「ん、おやすみ。」

えり叶が眠りに落ちるのを見届け

豆電球にし、俺も隣の部屋のベッドに

横たわるとすぐに眠ってしまった。



ザクッザクッ

トントントン

ジュ~〜

小気味良いリズムといい香りが

俺を目覚めさせた。

ガラガラガラ

「おはよう。。」

「あ、おはよ。キッチン借りてたよ!」

(何か作ってくれてるのか?)

「ろくに道具も無いけど、平気?」

「へーきへーき。任せて!!」


しばらくすると、

どんぶりが運ばれてきた。

「おおお?!!」

「ご飯と魚肉ソーセージと

じゃがいものミックス丼してみた!!」

「美味そうだな!」

(そういえば小学生の時は、

色んな組み合わせで

丼もの作りを楽しんでたんだっけ?)

「いただきま〜す!」



その日から時間を

出来るだけ共有し、

色々な記憶や感情を

えり叶の言動によって思い出した。

こんな日が続くことを

信じていたかったある日。

ピンポーン

「はい、どちら様?」(ガチャ)

「お忙しいところ失礼致します。

私、株式会社トンネルの吉井と申します。」

(誰だ…??)

俺の訝しげな表情から察したのか、

「以前、『あなたの分身送ります』という弊社の

サービスに森戸様よりご応募いただきまして…。」



「…………あぁ、思い出しました!」


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1ヶ月程前、商業施設に行った時に

変なトンネルを潜ったのだった。

トンネルを抜けると、男性が話し掛けてきた。

「ただいま弊社の『あなたの分身送ります』という

サービスのコマーシャルを行っておりまして。

お時間いただけないでしょうか?」  

「ええ、まあいいですけど…。」

変な勧誘か?とは思ったが

時間があり機嫌が良くもあった為、

話を聞いてみることにしたのだ。

「ありがとうございます!

それではあちらのお席へどうぞ。」

案内されるがまま座り、

話を聞いたその結果。 

怪しく思えるこのサービスに

俺は応募をしてしまったのだった。

俺がもう一人いたら……

その思考から離れられなくなった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「森戸様の元に、森戸様を名乗る人が

訪ねて来られましたでしょう。

弊社のサービスはいかがでしたでしょうか?」

(もしや、えり叶の事か!)

「ええ。そうですね…。

とても楽しい生活を送ってます。」

吉井から笑みが溢れた。

「左様でございますか!ありがとうございます。

先日のご案内の中でお伝え済みですが弊社の

サービスであるその人との生活は期限付きでして、

※引き取っていただくと引き続き森戸様の

元で共生出来ます。いかがでしょうか?」


忘れていた決断を迫られた。

が、俺の心は揺らがなかった。

「えり叶を引き取ります。」

※引き取る=えり叶になる。

「かしこまりました。

それではこちらの契約書に

ご記入をお願い致します!」

「はい。」

家の中からはえり叶が

こっそりと様子を窺っている。


「確かにご記入いただきましたので頂戴いたします。

それでは、心身を楽になさってくださいね。」

「はい、お願いします。」

すると、えり叶が吸い寄せられるように

俺に近づいてきた。このままではぶつかる…!!

そう思った次の瞬間、何故か痛みを感じなかった。




俺は、森戸えり叶になった。


俺は俺なりたい自分と生きていく。


こちらの素敵な記事から想像が膨らみました。

ありがとうございます💐

また、このような初めての試み・不思議なお話に

ここまでお付き合いありがとうございましたm(_ _)m

気の赴くままに、楽しい~~🎶 投稿をご覧下さり、誠にありがとうございます🦐✨ 今までいただきましたサポートは、 ワクワクすること・妹との時間などに 有難く使わせていただいておりますm(_ _)m💞