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世界のニュースを日本人は何も知らない①

挑戦的なタイトルの本ですよね・・・。

AMAZONのレビューを見ると、著者の左翼的な偏向思考に批判的な意見がたくさん寄せられています。確かに私の目から見てもオピニオンが多く、論拠(ファクト)が少ないと感じましたので、その辺は差し引いて考えなければいけません。しかし、日本人全般に欠けている観点がこの本には書かれているのも事実であり、そういう意味では大変有意義な内容でした。

ちなみに著者(谷本真由美さん)の略歴はこんな感じです。(AMAZONより引用)Twitterをのぞいてみたら、かなりアグレッシブな方だとわかりました・・・。だからアンチも多いのか、と納得。

Twitterでは@May_Roma (めいろま)として知られる論客。
ITベンチャー、コンサルティングファーム、国連専門機関情報専門官、外資系金融機関などを経て、ITコンサルタント。
専門はITガバナンス、プロセス改善、内部統制、IT政策調査等。
シラキュース大学大学院国際関係論修士、情報管理学修士。
神奈川県央出身。ロンドンと日本を往復しながら生活。
趣味はハードロック/ヘビーメタル、ミリタリー、温泉。
ツイッター→ http://twitter.com/May_Roma

以前にもnoteで書きましたが、日本のニュース番組の質の低下は顕著だと思っています。ほとんどのニュース番組はワイドショーと区別がつかないような内容ばかりを垂れ流しています。では、NHKはどうかというと、民放よりはましといえど、9時台のニュースでアイドルグループの総選挙の結果を取り上げるなど、質の劣化を感じるときがままあります。

そして、個人的に一番気になるのは、報道の内容が国内のニュースに偏っていることです。世界的には重大なことが起きていたとしても、日本では延々と「○○が△△と不倫した」「どこどこで煽り運転があった」などのどーでもいい”ニュース”が流され、『お花畑症候群』とでも呼びたくなるような平和っぷりです。(もちろん平和なことは良きことです)

このような報道の偏向(国内のニュースに偏っていること)は、日本人がグローバル化に遅れた遠因でもあると思います。「メディアが閉鎖的なので、国民は海外のニュースに興味を持たない➡外で起きていることを知らないから、国民総お花畑状態になっていく」という悪循環に陥り、グローバル化から取り残されているというのが現状だと思います。

Think globally. Act locally. (グローバルに考え、ローカルに行動する)

生徒には常に物事をグローバル規模で考え、自分の身の回りでできることをしなさい、と伝えていますが、そもそもグローバルな情報を手に入れる機会がこの国では圧倒的に限られているのです。

日本がグローバル化に踏み切れない理由は明白です。

経済的側面としては、国内市場がある程度大きいこと。世界が急速にグローバル化したとはいえ、まだまだ日本の内需は大きく、ほとんどん人は国内市場だけで食べていけるので、海外のことを知らなくても生きていけます。

また、地理的側面を見ると、日本は世界と「隔離」された島国であるということも挙げられます。外国人在留率は未だに3%程度で、他の先進国(大体10%程度、オーストラリアは30%程度)と比べると、均質性、同一性が際立っています。

そして、歴史的側面を見ても、日本は古来より農耕民族として歴史を紡ぎ、村社会が形成されてきました。今でもその潮流は脈々と社会に流れていることに加えて、「鎖国」を行った歴史からもわかるように、海外の文化を受け入れる受容性が高い国民性を持っていてながらも、本質的には非常に閉鎖的という、なんとも複雑なカルチャーが存在します。

こう見ると、確かに世界に目を向けるのが難しい条件がそろっていることがわかります。ただし、グローバル化は待ったなしで今も進行しています。日本も世界で最も少子高齢化が進む国として、国を開き、移民を受け入れることが今後必要になってきます。日本人も「国と国」(international)という概念ではなく、地球規模(global)で物事を捉えなくてはいけない時期に差し掛かっているのです。

海外からの日本の評価・日本人が知らないこと

本書では、海外からは日本は以下のように評価されていることを、多くの日本人は知らないと書かれています。

①世界で最も早く高齢化と少子化という問題に直面する大変厳しい状況にある先進国

「人は自分の見たいようにしか物事を見ない」という普遍の真理があります。ゆえに、我々は過去の栄光にしがみつき、「日本はスゴイ」という幻想をいだき、海外でもそう思われていると思いがちです。実際メディアでは、日本の良いところばかりを強調した報道が多く、これも勘違いを生む要因になっています。

②日本人は「欧米」という単語を使いたがり、アメリカとヨーロッパをいっしょくたにして物事を考えがち

これは私も気を付けていますが、「欧米」という言葉をよく使ってしまいます。使うたびに自分の中では違和感が残りますが、多くの人は違和感など感じずに欧米を同じくくりでとらえていると思います。

私は世界に出て初めて、アメリカが世界の中でいい意味でも悪い意味でも特別扱いされていることや、多くのイギリス人が自分たちを「ヨーロッパ」の国々とは違うという選民意識を持っていること、逆にヨーロッパ諸国の人たちはイギリスを「あいつら俺たちとはだいぶ違うよな」という風に思っていることなどに気づきました。

上述の通り世界と明らかな隔たりがあるこの国の状況においては、そのような感覚を知ることは難しいのが現状です。

③欧州や北米では一般大衆の権利を守るポピュリズムが台頭しているが、その理由の一つが階級社会を背景にした格差社会であること

例えば、2018年にはフランスで「黄色いベスト運動」が起こりましたが、多くの日本人はフランスと言えば、文化も街並みも豊かで華やかなイメージを持っていると思いますが、実際は大変な階級社会であり、若年失業率の高さや移民問題などで苦しんでいることはほとんど知られていません。(あまりニュースにもならないのですから仕方のないことです)

イギリスの欧州離脱(Brexit)も日本ではあまり認識されていない階層社会・格差社会が背景にあることも論を待たないところです。(Brexitについては、今ブレイディみかこさんのエッセイを読んでいるので、また後程書きたいと思います)

本当はものすごく豊かなアフリカ

これもぜひ押さえておきたいところです。

多くの日本人のアフリカのイメージとはまだこんな感じかもしれません。

もちろんこのイメージは間違っていないのですが、「アフリカ=サバンナ・砂漠・貧困」などとステレオタイプ化すると本質を見誤ります。

『欧米』と一緒で、そもそもアフリカは広大な大陸の中にいくつもの国があり、国や地域によって言語も文化も気候も宗教も異なります。私はモロッコに行ったことがありますが、地中海に面した北アフリカの国々は日本人が考えるアフリカのイメージとはだいぶ異なります。

そして、アフリカは鉱物や農作物など自然資源の宝庫でもあります。(我々のスマホで使用される鉱物もアフリカ産のことが多いです)

しかしながら、アフリカのほとんどの国々では国民が貧困に喘いでいます。

これは、過去の欧州諸国による植民地化によって、生産や販売のルートが海外の企業や国内のごく少数の既得権益者に独占される仕組みが確立してしまったからです。

私は15年くらい前に↓の映画を見て、その社会システムを理解しました。(生徒に見せるためにDVDも買いました)

一方で、豊富な資源と爆発的に増え続ける人口をターゲットにしたアフリカでの覇権争いも続いています。上記の映画にもあるように、一昔前でしたらアフリカの市場はヨーロッパに独占されていましたが、今は中国とアメリカがソフトパワー(軍事力や経済力などで強制的に従わせるのではなく、文化や価値の提供といった魅力で他社に影響を与え、望ましい結果を得る概念)を使って、アフリカ各国に影響力を及ぼしています。

そのような大国の影響もあり、先進的な取り組みをしている国も増えてきました。中でも私の授業でよく扱うのがルワンダとケニアです。

ルワンダは↓の映画でも有名ですが、1994年に激しい内戦が勃発し、100日間で約80万人が虐殺された国です。

しかし、この国は今「Gender Equality(男女平等)」という点において世界から注目を集めています。

世界経済フォーラムが毎年公表している「世界ジェンダー・ギャップ指数」(男女格差指数)の2020年版ランキングでは、世界で男女格差が少ない国上位9位に入りました。ランキング対象の151カ国中121位の日本から見ると、ルワンダはかなり女性の社会進出が進んでいるように映ります。

(ただし、この数字と庶民の生活では現実的な乖離があるようです↓)

一方、ケニアでは「M - PESA(エムペサ)」というモバイル送金サービスが多くの国民に普及しており、世界から注目されています。現金主義で、なかなかキャッシュレス決済が進まない日本よりも、Fintech(フィンテック)において進んでいるとも言えます。

さて、このあたりで3500字を超してしまったのですが、まだアメリカのトランプ大統領誕生の背景やBrexitを決断したイギリスの現状、またはドイツをはじめとしたヨーロッパ諸国の移民問題など書きたいことがたくさんあるので、次回に持ち越したいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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