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珠玉のSFジュブナイル『バオー来訪者』を知っているか!?【昭和のヒーロー・ヒロインを描こう。vol.009】

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『魔少年ビーティー』で独自のセンスと世界観を披露し、一部マニアから注目を集めた荒木飛呂彦先生が連載第2作として満を持して発表した『バオー来訪者』。スティーブン・キングなどの海外SFを感じさせるスタイリッシュかつインパクトの強い漫画でした。

『魔少年ビーティー』同様に一部からは熱狂的に支持されましたが、ジャンプの中心読者のハートを掴めず単行本全2巻で終わっていしまいます。短いながらストーリーはとても良くまとまっており、SFジュブナイル漫画の「伝説的作品」として今なお多くのファンがいます。

闇の政府系秘密組織「ドレス」の生み出した「寄生虫バオー」により強靭な肉体と特殊能力を持つモンスター・通称「バオー」に変えられてしまった主人公・橋沢育朗が、「ドレス」に戦いを挑む様は「昭和ライダー」のような悲壮感とダーク・ヒーローの魅力が満載! 育朗同様に「ドレス」の実験台にされていた予知能力者・スミレとの逃避行のなかでロードムービーの趣を持って物語は進みます。
時とともにどんどん「バオー化」が進んでいく中で、やがて育朗がその力を「ドレス」打倒に使おうと決意するという、熱く、そして悲しい物語となっていきます。

物語として、SFとして『バオー来訪者』はとてもよくできた作品ですが、魅力はそれだけではありません。『ジョジョの奇妙な冒険』でブレイクする手前の、若さに満ち溢れた荒木飛呂彦先生の漫画力が紙面の端々まで行き渡り、この難解な題材を王道少年漫画として成立させています。

のちのヒット作『ジョジョの奇妙な冒険』で発揮された荒木先生独特のストーリーテリングや台詞まわしなどはこの作品でも随所に見られます。また、国家秘密組織「ドレス」という存在や「バオー」の特殊能力「武装現象(バオー・アームド・フェノメノン)」など、数々の設定は圧倒的なケレン味を帯びており、まさに漫画の王道です!

バオーは宿主の危険を察知すると、宿主の意識・肉体を一時的に支配し、危険から身を守るため宿主に武装現象(バオー・アームド・フェノメノン)を発現させる。武装現象の表記は劇中で一定していない。これらは「高い格調・強烈な描写・長くて覚えにくい名前」ということで、連載当時よく他のマンガなどのネタに使われた。
Wikipediaより)

溶解液を分泌し物を溶かす「バオー・メルテッディン・パルム・フェノメノン」、前腕側部の皮膚組織を突出・硬質・鋭利化して刃物状にする「バオー・リスキニハーデン・セイバー・フェノメノン」など、ネーミングからして厨二心をくすぐりまくります。

カリッとした空想科学感と、キング的なストーリーテリング、それらを内包しつつダークヒーロー物の少年漫画として成立させた『バオー来訪者』。個人的には傑作だと思います。全2巻と巻数も少ないので、未読の方はぜひ。

『バオー来訪者』(バオーらいほうしゃ)は、荒木飛呂彦による日本の少年向け漫画、およびそれを原作とするOVA作品。集英社の少年向け漫画雑誌『週刊少年ジャンプ』に1984年45号から1985年11号まで17話が連載された。単行本は全2巻。
主人公は、生物兵器「バオー」へと改造された青年「橋沢育朗」と予知能力を持つ少女「スミレ」の2人。バオーの超人的能力を狙う、政府系の秘密組織「ドレス」からの逃避行を中心に、2人の成長と相思を綴った物語。
Wikipediaより)

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