繰り返しの毎日の中に輝くもの
仕事が終わり帰路につくと、1日そのものが終わったと思ってしまう。仕事しかしない1日が出来上がってしまうのだ。
1日12時間も拘束されているのだから、そうなってしまうのは当然だとも思うが、それで自分の人生がつまらなくなり、自分自身を見失うことを私は経験済みだ。
その沼に陥らないようにするために、最近は必死に自分のための時間にしがみついている。
とはいえ、悲しいことに翌日も働かないといけないので、そのための体力も心の余裕も残しておかないといけないし、何よりも1日3時間で出来ることは限られている。
どこか遠出をすることは難しいし、買い物や遊びに出かけるのも現実的ではない。
そこで、完全に自宅の玄関を開けて帰宅してしまう前に、家から15分圏内の寄り道を楽しむことにしてみた。家から15分歩くだけでも、公園、ブックオフ、回転寿司やうどん屋といったチェーン店がいくつかある。毎日贅沢は出来ないが、少しでも違う景色を見るだけで変わってくる。
逆さまの世界
ただの見慣れた帰り道、いつもの景色だとしても携帯を見て俯くのではなく、顔をあげてちゃんと眺めてみる。
そうすると、見えなかったものが見えてくるようになる。
例えば、家の近くを流れている綾瀬川。
都会の川はお世辞でも綺麗とは言えなくて、水は濁っていて川の底が見えることは全くない。
そんな川でも、夜に見ると表情を変えて綺麗な景色に見えてくる。
太陽の光が入らない夜の川は、黒くなり街明かりが水面に反射している。昼の不快感は完全に消え、それが正しい姿であるかのように堂々と美しく佇んでいる。
1日を続けてみる
お馴染みの歩道橋からは、たくさんの車が行き交う環七通りや、高速道路がみえる。
私は1日をもう終えようとしていたが、まだまだ1日を続けている人たちがそこには見える。それを見ていると、私の1日も自分次第でまだ続くと気づいた。家に帰ったらゲームをしよう、漫画を読もう、と何故か活力が湧いてきた。忘れていた趣味へのワクワクを思い出す。こんな風に、都会の賑やかさは時に癒しにもなる。
こうして、いつもは何よりも早く帰宅することを優先していたが、ほんの少しだけ足を伸ばして寄り道をすることで、自分の時間と思える瞬間を増やせるようになった。
見慣れた景色でも丁寧に見ていれば、新しい視点や感覚をもらえる。
特別なことなんかしなくても、同じ毎日の繰り返しでも、もっと楽しめるはずだ。
Written by HINA