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通勤路の冒険

最近転職をしたおかげで生活スタイルがガラリと変わり、心も身体も追いつかない毎日を過ごしている。
とにかく時間がなく、毎日最低限の生活をするのに精一杯だ。こんなに余裕がない暮らしはいつぶりだろうかと少し悲しくなる。
とはいえ、何事も慣れるまでが大変なだけだと言い聞かせて毎日慌ただしく一日を終える。

忙しない平穏

中でも大きく変わったのが、通勤の道のりだ。
今までは徒歩5分ほどで着く1番近い駅から電車に乗っていたのだが、今は少し遠い駅から乗っている。
交通費節約のために毎朝20分ほど歩いて別の駅まで向かうことを決めたのだが、これは案外いい変化になった。
最初は、朝が苦手なのに早起きして20分も歩くなんて到底無理だ。と思っていたが、意外と家を出る時間はあまり変わらずに済み、なんとか続けている。

環七通りを歩くので、結構騒がしい空気が流れるが、昼間は開いているお店が全て閉まっているので、同時に静けさも感じる。
ただ、とにかく忙しない朝を駆け抜けている人が多いので、前から自転車の大群が来て鬼の形相で私の横を切って行くことも多々ある。
そんな自転車の風を横目で感じながら、シャッターの降りた店を眺めることで朝の平穏バランスを保とうとしている。

ラスボス「コンビニのおばあちゃん」

朝に20分歩くなら、もちろん帰りも20分歩いて家まで帰る。
空腹と一日の疲れを感じながら、家まで歩く。
朝のように急いでいる人はいないので、夜の方が割と穏やかな空気が流れている。
帰り道はいつもコンビニに寄るが、その時間は大抵お馴染みのおばあちゃん店員がいる。
フレンドリーなのか億劫なのか分からない対応なので、私は少しだけ苦手意識を持っている。ただ、私にとっては避けては通れない日課なので、もはやラスボスに挑む気持ちでコンビニに足を踏み入れる。

いつもはセルフレジを使うのであまり関わらないのだが、久しぶりに現金で払いたかったのでおばあちゃんにレジを打ってもらう。
「ありがとね〜」と同い年の友達かのような口ぶりで手を振ってくれて、それを背に店を出る。
あれ、おばあちゃん優しくない? と、なぜ自分が苦手意識を持っていたのか少しわからなくなった。
この雑なフレンドリーさが苦手だったはずなのだが、今日の私はそれが心に沁みたのだ。これは私の心に余裕ができたからなのか、はたまたその逆で心が弱っているのか。
彼女はどういう意図で接客をしているのか、真実はおばあちゃんのみぞ知る。といったところか。

歩道橋の鏡

そんなことを悶々と考えながら、歩道橋を渡る。
私にとってこの歩道橋はこの街のシンボルで、私の気持ちを映し出す鏡になっている。
元気がないときはこの歩道橋はとても狭くて息苦しいものだが、元気な時は上を向いて歩きその歩道橋からの眺めを楽しめる。

晴れた日の上からの景色。
いつのまにかピンク色が広がっていた。

おばあちゃんが苦手ではなくなった日の帰りの歩道橋からの眺めは、とても綺麗だった。

Written by HINA

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