見出し画像

余計なものがある人生は邪魔くさい。だけどそれがあってこそのPERFECT DAYS 2024/02/02

PERFECT DAYSを観てきました。

なんだか胸いっぱいの、映画でした。

でてくるトイレのすべてが、
あ、あそこだ!あ、わかるわかる。
好きな公園!あ~あるね!なつかしい。
って感じで、その時点でも、もう……ね。

役所さんの口調や声が、
実の父にとても近くて、
ファザコンな私は、ちょっと切なくなったりもしました。
思い出の土地と、父を想わせる声……
手放してきたものを、今も愛している自分に、
さみしいんだね。って、
ずっと、さみしかったんだねって、
そっと毛布を掛けてあげたくなりました。

きっと「どうして今のまま、同じでいられないんだろう」っていうのが、テーマなんだなと感じたのだけれど、(私はね)
自分の感情にタイムリー過ぎて
ストーリーが進むとともに、
こころに墨を垂らしたような、
黒い影が広がっていきました。

当たり前の毎日を、一生懸命生きているのにね。
当たり前のありがたさを、もう十分わかっているのにね。
守ろうとしても、同じ毎日は続かない。
上がったり下がったり、それたり曲がったり折れたりして、
私の事を苦しめる。
だけどそれが、人生なんだなと受け止める。
美しい人生って、そういう全部の事なんだなと受け入れる。

いらない、苦しすぎる、全部捨ててしまいたいって
思うときもあるけれど、
決して降りてはいけない舞台に立っているのなら、
もがき苦しむことも丸ごと、
楽しむしかないんだなと、
最後の一滴まで、味わい尽くすしかないんだなと、
そんな風に、
今の自分の人生を見つめながら観ていました。


まるで無声映画なのかなと思うくらい、
静かな時間が多くて、
繰り返しも多くて、
余白がたくさんあって、
自分の考えの入る余地が、たくさんたくさんあった。
あったというよりも、ありすぎて、
きっとこれは、見る人それぞれに、
それぞれのストーリーが見えているんだろうなと思う映画でした。
ひとことでいうなら
なんかすごく乱暴な言い方なんだけど、
「いろいろあるよね」って感じの映画で、
ほんと、多分見るタイミングによっても見え方が変わるんだろうな、
って思うので、
いつかまた、別の時に、時間をおいて何度も観たい……
そんな気がしています。

とりあえず引っ越し出来たら、
物は最小限にしてくらそう!
ゆくゆく一人ぼっちになったらこんな暮らしありだよね!
とか、暮らしのヒント的な視点でもみてしまったな。
おもしろかったです。

直接的な学びやメッセージの享受ではなく
思考を巡らせる時間をいただいたなという感覚でした。

なんにせよ、役所さんの演技力たるや……です。
顔のアップ、多いな~と思いながら
おじさんの顔のアップであんだけもつってすごくない?
とも思うし、それだけ魅せるものがそこにあるんですよね。
実際、その表情から、何を言わんとしているのかを見つけたくて、すごくじっと見入ってしまうんだもの。
圧巻ですね。

少ない言葉の中にある、深くて重たいメッセージ、というのにも、
ヒントを得るものがありました。
観に行けてよかったな。
今観にいけて、よかったな、と思います。


この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?