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私に生き方を教えてくれた本

クリスマスが近づくたびに読みたくなる本がある。
エーリヒ・ケストナーの「飛ぶ教室」
寄宿学校の少年たちを主人公にした心温まるクリスマスの物語。
何度読んでも同じところで感動して、涙が出てしまう。

この本に出会ったのは、高校の図書室だった。
友達をつくるのが苦手だった私は、教室にいても息苦しさを感じるばかりだったけど、古い校舎の薄暗い図書室は一番の落ち着ける場所だった。

キラキラした青春とはほど遠い、暗い学生時代を過ごした私が人生に絶望しなくて済んだのは、ケストナーをはじめとするたくさんの温かい本に出会えたからだと思っている。
そこには、私もこんな人になりたい、こんな風に人として正しい生き方をしたい、と思うような素晴らしい登場人物がたくさんいた。
そう思えたから、将来に対して希望を持つことができたのだと思う。

「飛ぶ教室」の中で一番好きな場面は、子どもの頃親友同士だった2人が数年ぶりに再会して、小さな居酒屋で人生について語り合う場面。

ぼくは十分満足している。金なんていらない。
きみはむだな歳月と思うかもしれないが、これほど考えごとをしたり本を読んだことはなかった。
あのころの不幸は意味があったのだ。
つねに上をめざして生きなくては、なんて言い草はごめんだよ。
ぼくのような生き方をする人が少なすぎるんだ。
ぼくはただ、何が大切なことだか、考える時間をもつ人間がもっといてほしいだけなんだ。

どんな学校に通うのか。
どんな仕事をするのか。
そういうことは自分の意思では決められない場合もあるし、重要な違いではないのだと思う。

自分の居場所がどこであれ、何を大切にして、どんな生き方をするのか。
何に喜び、何に怒りを感じるのか。
必ずしも他人や組織の考えとは一致しないかもしれない。
そうだとしても、それが自分にとって大切で、心から信じていることなのだとしたら、その思いを貫いていいのだ。

人に合わせるのが苦手で、周囲の話題にも興味が持てず、孤独を感じていたあの頃の私。
でも、無理に人に合わせる必要はないんだ。
自分に正直に生きたらいいんだ。
ケストナーは、ありのままの私を受け止めて、そんな風に言ってくれている気がした。

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