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いつまでたっても英語が話せるようにならない?もしかしたら、"英語を話す"ための勉強をしていないからかもしれない。『英語日記BOY 海外で夢を叶える英語勉強法 - 新井リオ』【書評】

英語が話せたらなぁ、とは多くの人が思うもの。いろいろな学習教材に手を出してみても、なかなか身にならない。いつまで経っても上達しない。
もし「英語が話せる」という状態を取り違えていたとしたら?

その答えとなる著者の考えが、こう示されています。

英語が話せるとは、すぐに言えるオリジナル英語フレーズの引き出しが多いことだったのだ。これは発見だった。
『はじめに』より。

いつまでたっても英語が話せない原因は、英語を話すための学習をしていないからでは? という問題提起であり、英語学習の概念を見つめ直すきっかけにもなる著者の言葉。

たとえば、『はじめに』では、こんな例が取り上げられています。

「used to(かつて~していた)」という英語を覚える際、教科書には、She used to play the piano for 3 years.(彼女はかつて3年間ピアノを弾いていました。)と書かれていたとして、それって赤の他人のエピソード

著者自身のことに言い換えると、I used to play the guitar for 7 years.(僕はかつて7年間ギターを弾いていました。)になる。

そう。どれだけ例文を丸暗記したとしても、それは「自分のこと」ではない。そのフレーズを使うときには、「自分のこと」として言い直したうえで使用しなければならない。その時差があるからこそ、言葉につまってしまう。

どうせ入れ替えて使うならば、最初からオリジナル英語フレーズに書き換えてから、覚えてしまえばいいのではないか? と考えた著者が導き出した学習法が、本著のタイトルにもなっている『日記』。

ん? 日記? と思う人もいるかもしれないですが、本著ではなぜ日記を用いれば「英語が話せる状態」になるか、納得の行く解説がされているのです。

デザイナーでありイラストレーターでもある著者の新井リオさん。海外に留学するお金はないが、英語学習は諦めたくない。そう思い、お金をかけずにできる独自の英語学習に取り組み、海外で活躍する夢を叶えています。

お金がかけられない制約があったからこそ生まれたであろう、日記を使う学習方法、LINEを単語帳として活用する方法、iPhoneのSiriを発音矯正として利用する方法、費用を抑えたオンライン英会話を活用する方法などが、本著では実用的に示されています。

著者は海外を訪れた際、親切にしてくれた現地の人に対し、感謝の言葉が思い浮かばず、気持ちを伝えられなかった「言えなくて悲しい」を経験しています。

その時、新井リオさんはこう思うわけです。

そうか、僕は「いつか自分が言うであろう英語フレーズ」を、先回りして知っていなければならないんだ。
『第1章 考え方編』より

そこで辿り着いたのが日記。日記には、日頃、自分の身に起こることや、日頃から考えていることが詰まっている。つまりは、自分が言いたいフレーズばかりで構成されている。

であれば、それを英語に翻訳し、オリジナル英語フレーズを身につけておけば、著者の『「英語が話せる」の定義』である『いま言いたいオリジナル英語フレーズが瞬時に出てくる』状態になる。

本著では、この定義に向かって、身近にあるツール(道具)を利用しながら、できるだけお金をかけず、実用的に英語を学ぶ方法が示されています。

それらのツールを使うことが、なぜ効率的で効果的なのかは、本著で具体的に語られていますが、その中でも「英語日記の書き方」については、なるほどと納得させられます。

英語を学習していると、日本語を介在させないようにする、という心がけが示されることもありますが、新井リオさんは、「自然な日本語」で日記を書くことが重要としています。

なぜなら、

いきなり英語で書きはじめると、既に知っているボキャブラリーでしか文章を作れないため、一向に語彙が増えない。

I went to school. I saw my friend. I ate lunch with him.(私は学校に行った。私は友達に会った。私は彼とランチを食べた。)

極端に言うとこうなりかねない。けれど、僕たちはこんな不自然な文章を話すために英語を勉強しているわけではない。

だからこそ、自然な日本語の日記で「自分がいつか使う英語フレーズ」を先回りして言えるような状態にする。

もちろん、英語力のない自らの作文では誤りが多いため、さまざまなツール(ただし、身近にあるツール)を使ってそのオリジナルフレーズを完璧なものに仕上げていく。そんな著者ならではの方法が、本著では書かれているわけです。

もちろん、英語学習には努力も不可欠。反復学習や反復練習も欠かせません。本著は決して、努力せずに英語を身につける本ではありません。が、「英語を話せる状態ってこういうことでしょ?」と定義したうえで、できるだけお金をかけず、理にかなった学びをするための手引きとなります。

そして、英語を使って何をするのか? どこへ向かうのか? 何者になるのか? 英語はあくまでもコミュニケーションの道具。それを身につけたうえでどう生きるべきなのか、著者の経験をもとにその考え方が語られています。

どれだけ英語を学んでも話せるようにならない。才能がない? 努力が足りない? お金をかけていないから? そう疑ってしまう前に、ぜひ本著を手に取り、「いつまでたっても英語が話せるようにならない」原因を知ってみてはいかがでしょうか。

いつ使うかもわからない単語を学ぶことが、英語を話すための学習ではないはず。伝えたいことが口から出てくる。それこそが望むべき状態。

学習方法には向き不向きもあり、各人に合った方法で取り組むべきですが、「こんな方法もあるんだ?」の気づきを得る意味でも、価値ある一冊であることは間違いありません。

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