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再発を繰り返さない医療を目指して   千村晃医師(千村クリニック)インタビュー 

Q.千村クリニックを訪れる患者さんはどんな経緯で受診するのでしょうか?

 心療内科を初めて受診するという方が3割、その他は別のクリニックから移ってくる方ですね。転院してくる方は、それまでのクリニックで服薬してきたが薬だけでは治らない、薬を飲んでいるがすっきりしない方、それから症状自体は治っているけれど、主治医から一生飲めと言われている。できたら薬をやめたい、減らしたいというような方です。あとはやはり再発で苦しみ困って受診する患者さんも多いですね。

Q.再発して以前の病院にいくのではなく新たに千村クリニックを受診するのですか?

そうですね。治ったつもりだけども、実は再発を繰り返す方々が多いですね。また初診ではあるけれど、友達から聞いたとか、会社の産業医からここを勧められたとかですね。知り合いが、薬で治らないのを見て「薬を使わない」というところを探してここにきたりもします。
また周りの方から、薬をずっと飲んでいることについて「よくないのでは?」と言われたり、あとは副作用の問題ですね。たまに飲まなかったときに生じるリバウンドも問題です。そういうことをきっかけにして、長期の服薬に対する疑問が生じてくる方々が多いですね。

Q.なぜ現在の精神科ではそんなに薬中心の治療だけになるのでしょう?

現在の保険診療の体制では、経営的にも話を聞く時間を取ることが難しくどうしても薬物中心になりがちですね。例えば私はこのクリニックで、一人で診察をしています。しかし薬物療法中心の医院で患者さんの数が多いところはどうしてもパートの医者に頼むことになります。そうすると行くたびに担当医が変わるので、それまでの経過も担当医は把握できないですね。その結果として薬の治療に終始せざるをえない。患者さんがどんな状況やどんなストレスで発症したかとか、どんな経過の中で、症状が改善したり悪化したりしているのかなどがつかめないんですね。経過自体を知らない場合、担当の医者ができることは、薬の調整ぐらいに限られてくるんですね。患者さんその人の全体像に沿う治療が難しいのです。

心理療法と薬物療法をきちんと併用する


Q.現在の精神科治療は薬物療法しかないみたいな感じがあるのですが・・・

 薬には利点もありますが薬の限界もあります。当時も今も一貫して言われていることは、精神科の治療にはカウンセリングと薬の併用が一番いいということです。昔から、薬オンリーでいいということは一切ないです。やはり精神科の基本は、カウンセリングと薬物療法を合体するのが、結果がいいと言われています。今は薬偏重になってきていますが、それは間違いです。いつの時代であってもカウンセリングの重要性は変わらないのです。

Q. 患者さんも話を聞いてほしいと望んでいますし、やはり両方必要なんですね。

そうです。患者さんがいつも言うのは「医者が話を聞いてくれない」ということです。医者に話を聞いて欲しいのです。もし医者に時間がなければ、カウンセラーでもいいのですが、人が人の話を聞くことの効果は必ずあるのです。カウンセリングの有効性を否定する意見も多くあると思うんですが、それは決定的に間違っています。私は救急医療の現場で働いていた経験がありますが、救急医療の現場でもカウンセリングは必要です。例えば救急の現場で患者さんが危篤になっている場面でも、不安でいっぱいのご家族に説明する時、カウンセリング的な手法は必要です。事実を正確に説明しながらも、過剰な不安に陥らないように説明しなければいけない。カウンセリングは医療現場における必須の技術です。

まず身体疾患の見落としをなくすこと


Q.先生の診察を受ける際に患者が用意するといいものは何ですか?
 そうですね、まず客観的なデータが必要です。健康診断や人間ドックの結果。最新のものだけでなくさかのぼって数年分あればあったほうがいいです。定期検診の結果はすごく重要です。体重、血圧、体温、特に女性の場合、基礎体温は重要ですね。あとは前のお医者さんからどのような診断をされたかという情報も大切です。うつ病の場合は他にも適応障害、双極性障害とか、発達障害とか色々な病名がついていると思いますが、過去にどういう病名がついているのかも非常に重要です。紹介状はあったほうがいいですが、絶対なくてはいけないとは考えていません。これまで医師に紹介状を書いて欲しいというお願いをしていないのであれば、試しに依頼してみてください。

Q. 減薬を希望する患者さんの可能性について先生はどんな風に診立てますか?

 医学的にはどういう契機で発症し、どのような経過をたどってきたか、症状の変動がどうだったかなどで、減薬が可能かどうかを判断します。しかし、実は最も重要なのは、ご本人が薬を減らすことにどれだけモチベーションがあるかです。減・断薬は実は受験勉強と少し似ていると思います。ある大学を受験したいと思っても教師任せではダメなのと同じように医者任せだと難しいのです。やはり自分で勉強して努力しないとなりません。私は医師としてアドバイスをして差し上げて、「減薬はこういう風にしたらどうですか」ということを説明します。しかし、実際にそれを日々実行していただいて、例えば食生活を変えたり、睡眠のリズムを作ったり、普段の生活を切り替えたり、場合によってはアルコールを減らしたりということが必要になるのです。
私がお教えしたことを患者さんが家で復習し、実行しなくてはなりません。そのモチベーションを維持することが重要です。例えば体を温めるために工夫する、体調を整えるための食材を取り入れて食生活を切り替えるなど、ご本人の努力は必要です。そう言ったご自身の努力に関するモチベーションが低い方は、いろいろお勧めしても2回目くらいから来なくなります。

患者さん自身が自ら色々なことを学ぶことを薦めています。

Q.減薬をする場合はどんな風に治療を進めるのでしょうか?
 
まず初回に必要に応じて血液検査をします。2回目にいらして血液検査の結果を説明します。そしてあなたの症状にはこういうことも関係しているのですよと私の見解をお話しします。そこで栄養のことや生活習慣も切り替えてみてはと提案をしたり、社会や家庭内の対人関係についても提案してみます。「今までと少し違うやり方をしていくことで症状が安定すると、減・断薬が可能ですよ」とアドバイスをして、ご本人も私の提案にピンとくる場合、「この医者が言うならやってみよう」という気持ちになってくださる。
受験にも基礎の勉強が必要ですし、野球でバッターとして活躍したければ素振りの練習は欠かせませんと説明し、「もしここで減薬・断薬をおやりになりたければ私は付き合いますよ」と話します。そうするとここにいらっしゃる患者さんの多くは、再発して苦労している方が多く、モチベーションが高いですからこの段階で6、7割の方は減薬に取り組む決意を固めますね。

表面の下に断層になっている様々なレベルの課題


Q.先生はうつ病の原因を、ご本人が考えている表面的なものの下にある根本部分の問題と考えて、減薬にプラスしてアドバイスをするわけですね。
 そうですね。ここに受診される多くの患者さんがこれまでうつ病やパニック障害など、いろんな症状を体験していて、その症状に応じて薬を変えるという治療を受けてきている。そしてここに来る時点ではそれらの治療に関して疑問を持っている方が多い。「そういう方々にあなたはなぜ病気になりましたか?どういうきっかけで悪くなりましたか?」と尋ねますと、パワハラとか、仕事のストレスとかとおっしゃいます。
「それでどうなりましたか?」と質問しますと「治療してある程度回復しました。でも再発しました」と。
「なぜ再発したと思いますか?」と尋ね、いろいろお話を聞いているうちに、必ずご本人の口から根本にある問題が出てきます。

Q.そうですか。しかしご本人の奥底にあるものは、なかなか認めがたくはないのでしょうか?

 例えば仕事が忙しくて調子が悪くなりましたと患者さんが言います。「なぜそんな無理したんですか?」
「忙しくて他にやる人がいないんです」「なぜ他にやる人がいないのにあなただけ引き受けたのですか?」
「いやーでも周りの人が困っていてみんなそれぞれ忙しく、私が頑張るより他にないんです」
「いつもそういう思考回路ですか?そういう風に思うようになったのはいつからですか?」
このようにいろいろ聞いていると、ご本人の会話の中に出てきます。気がつかない会話の中に、大体は親との関係、家族関係に行くことが多いですね。
家族の関係や生育歴に何もない人が成人後になって社会の中の過剰な責任をつい引き受けてしまうようになることは珍しいと思います。どんな人でも社会に出るまではなんとかやり繰りしている。自分に対しても周囲に対しても。
しかしそのやり繰りの仕方というのは、永遠に通用するとは限らないんです。トランプの札で言えば手札です。学生は社会人になったら、社会に通用するように手札を変えないといけない。野球でもプロ野球に入ったらそれまで直球だけで勝負してきた人も、変化球や駆け引きを覚えないといけない時期がくるのです。

Q.患者さんの根っこの本質に触れるわけですね。薬というのがある意味患者さんを保護する膜になっているような部分があると思いますが、減薬して大丈夫なのでしょうか?

 その本質の部分を永遠に見ようとしない人もいます。見ると辛くなりますし、辛さに耐えられる自分と、一緒に耐えてくれる人がいるという安心感が持てて初めて向き合えるわけです。このため夫婦や実家の両親などから減薬への理解と協力を得られることが大切です。
しかしここにくる患者さんの多くは早い時期に気づきます。例えば生育歴で父親が高圧的でいつも小さくなっていた。このため会社の上司にも同じ状態だったとか。薬を抜く前に気づくわけです。気づきに半年、1年かかる人はいないです。最初からカウンセリングを希望という方で、診察はなしの方もいます。カウンセラーとの会話で気付く方もいます。
またカウンセリングの必要性が少なく、単に減薬・断薬をしたい人の場合には私が診察してお話をします。
私との会話の中で1~3回位で気がつく人もいます。その場合は根っこの部分に何かあることを認識しつつ、薬は少しずつ減らしていきます。根本のことに触れ、気持ちが不安定になったりしたときには、薬で臨時で抑えることが必要な場合もあります。そういう意味で薬を抜いてからカウンセリングするより、できるだけ早い時期にいろいろご本人に気がついていただいて、カウンセリングをしながら薬を減らしていく感じの方が多いですね。

Q.検査というのはどんなことをするのですか。保険診療でできますか?

まず心理検査が必要な場合がありますね。今お話ししたようなことを、ご本人に客観的に示した方が良いケースもあります。こういうことはあなたの小さい時からの性格形成が影響していますよとか、それを客観化して家族に説明した方が良い場合もあります。
家族が、「そんなことはどこの家でもあることだし、自分たち親はそういうつもりで接したことはない」という場合もあります。このため、そういう事情が今の状況にどう影響しているかを客観化して知って頂きたい時には心理検査の結果で示した方が良い場合もあります。心理検査は保険診療でできますが、自費の検査もあります。
健康保険は、病気の治療に「最低限」必要なものを保険で提供しましょうねという意味合いのものです。
身体の検査のほうでは、血液検査や、甲状腺ホルモンの検査などが有効です。甲状腺の検査も健康保険の検査だけだと不十分ですね。自費の検査を組み合わせないと情報が不足するため治療ができないということはよくあります。

Q.身体疾患が無視されたままうつ病と誤診されてしまうこともあるようですね。
 昔はうつ状態をきたしやすい身体疾患が基礎にあって、そのためにうつになる症例の診断が十分になされていました。その時はうつ自体を治そうとするのではなく、身体疾患をきちんと治療しましょうという考え方があった。しかし今は「身体疾患にうつ病を合併したので、身体疾患の治療をしながら抗うつ薬を使いましょう」という考え方に変わった。
私は基礎に身体疾患があり抑うつ状態となっている場合、それは純粋のうつ病ではないと見ています。例えば甲状腺機能低下によるうつというのはうつ病ではなくて、甲状腺機能低下症の症状の1つとしての抑うつ状態です。それをうつ病と一緒にしてはいけないんです。別の病気としていわゆる鑑別診断の対象にしなければいけないんです。そういう意味ではいろんな検査が必要です。もし鉄欠乏性貧血があれば、症状は一見してうつ病のようだが鉄欠乏性貧血による抑うつ状態と診断し、鉄欠乏性貧血の治療をすればいいんです。

Q.長年、別の身体疾患であることに気づかずに抗うつ剤だけを飲んでも治らず副作用だけに苦しんでいる方がいるわけですね。
 そういう方が「減薬したい」といらしたときに、初めて検査を行い橋本病とか甲状腺機能低下などに気づく場合があるのです。特に女性の方ですね。すでに抗うつ薬を使って治療しているわけですが、それを減薬していく時に身体疾患が発見されれば、それをまずちゃんと治療した方が減・断薬は当然しやすいです。きちんと身体を調べることがとても重要です。初診でまず血液検査を行う場合が多い。血液検査を行うことで精神科以外の別の疾患が隠れている場合もある。また栄養状態などを把握し、体調を整えることで減薬がしやすくなることもある

Q.血液検査ではどんな項目を調べればいいのでしょう?
 そうですね。フェリチン、亜鉛、マグネシウム、ホルモン、 女性ホルモン、などですね。女性のうつの場合にはホルモンが関係している場合があります。女性は婦人科的な症状がなくてもホルモンは検査した方がいいです。ただ心療内科では婦人科系の保険診療はできないです。どうしてもとなれば自費でやるか婦人科に行って検査してもらうかになります。女性のうつの場合には貧血の検査は必須ですし、ホルモンを調べた方がいいとか、甲状腺の橋本病の検査などが必要だと思いますが、医師の知識不足でそれをスルーしても咎められはしないのです。精神科の場合は、抑うつ状態なら原因は調べなくともうつ病と診断して薬を出しておけば保険制度上は何の問題もないのです。この点は患者さん側が知識を持つことが大切です。

Q.患者さんが知識を持って自費でも構わないから検査してくださいといえばいいのですか?
そうですね。ただ知識を持ってもそういうことに理解のある先生でないと難しいかもしれませんね。啓蒙したいですけど。なかなか難しい現状があります

Q.先生もカウンセリングをするのですか?
 私はカウンセリングはやらないです。それは医者が患者さんをある程度の人数診察しないととクリニックの経営が成り立たないという現実があるからです。ここでのカウンセリングは、カウンセラーが行うもので一回5000円になっています。
保険点数は13年前と比べると10%下がっているんです。このため10%多い患者さんを見ないといけないことになります。私は1日30人くらいの患者さんを診て、診断と採血も自分で行い、血液検査の判読もします。このためカウンセリングまではできないのです。患者さんに何回かお会いして診察し、この方の治療のポイントはここだなという全体の診立てをします。血液検査をしたりお話を聞いたりして、例えば血液検査で貧血があれば、治療で鉄分の処方、マグネシウムや亜鉛が足りなれば処方します。
生育歴に課題があるかなという時は、カウンセラーにバトンタッチして、ここを重点的にカウンセリングしてくださいと全体像を指示します。カウンセラーから情報をフィードバックしてもらい、患者さんの状態を総合的に把握します。

ゆったりと落ち着ける待合室


問題が根深ければ治療時間は余計に必要になる


Q 先生はディレクターなのですね。減薬に関して計画は作るのでしょうか?
その方の状況によりますが、例えば先述したピラミッドの下の方にまでいくほど問題が根深くはなさそうだという場合には、食事や栄養、運動など生活習慣の部分の改善をアドバイスするだけで大丈夫という場合もあります。
そのときには比較的短時間で、数ヶ月単位で減薬できる方がいます。一方ピラミッドの一番下の方の環境や生育歴、トラウマなどに問題のある方の場合には、一つの基準で申し上げると3年かかります。3年というと皆さんびっくりしますが、「それではこれまで何年間薬を飲んできましたか?お金をいくら使いましたか?」と聞きます。そしてもし30歳の方が、具合が悪くなった場合を考えると、生育歴のことはすでに30年間ひきずっているんです。30歳までは何とか現実に蓋をしてやりくりしていますが、それでも30年間かかって形成されたものを3年で治療できれば、それは短いと考えてもよいでしょう。このように考えてみると、私の医院では、減・薬断薬を通じて最後の仕上げをするということになります。他の医療機関できちんと治療ができていないこと、根本の問題の処理、そして生活習慣、食生活の改善も含めて回復していない患者さんが、すべてに問題を抱えて私のクリニックにいらっしゃる感じです。

書斎にいるような落ち着いた家具のある診察室


Q. 減薬のために患者さんがたどり着いた病院というのはそういう役割を期待されるということなのですね。では減薬をする際には何か減らし方の順番などテクニックのようなものはあるのですか?
 一番効果を感じて臨機応変に使いやすいのは抗不安薬と睡眠薬です。それで抗うつ薬は私の感じでは巷で言われているほど効果はないと思うのです。特に最近の抗うつ薬SSRIと言われているものですね。昔の抗うつ薬は効果がはっきりしていた。このため一般論としては抗うつ薬から私は調整します。量を調整したり回数を減らしたりします。睡眠薬というのは減らすと確実に眠れなくなる方が多いのです。よほど大量処方で昼間も眠いという場合には睡眠薬を減らしますが、不眠が主訴の方の場合には、睡眠薬を減らすと睡眠が取れなくなって患者さんが辛くなりますから、そういうものは、一番最後ですね。週末に減らすというのは1つの方法ですね。それから品質の良いものに限りますが、メラトニン、ギャバ、グリシン、こういうものは睡眠の補助にはなることは確かですね。健康に害のないサプリメントをプラスして減らしていくのも1つの方法ですね。実際に使っている患者さんもいます。でも私はあまり積極的にはやっていません。ある程度の補助にはなると考えています。

Q.減薬にマニュアルというのは作れないのですか?

こういう抗うつ薬を使えばいいとか、これがダメならこれに変えるとか、そういうマニュアル治療が主になっていますが、それはよくない。同じように減・断薬もマニュアルでは難しいと思います。患者さんのそれぞれの症状や経過や減薬したときの経過や、どのような反応が起きるか、その方の性格までを見て、どういう風にお薬を減らしていくのかというのを考えるべきで、すべての人に共通な減薬の仕方とか、手順とか順番はないと思います。インターネットに出ているのはマニュアル断薬ですから、それは失敗する確率が高いですね。治療も断薬もその方にあったオーダーメイドが必要です。

減・断薬というのは精神科医本来の根本的な治療です


Q.多剤処方で散々苦しみ、薬を減らすと本来の問題が顕在化するということですね。
そうですね。結論から言うと減薬・断薬というのは、結局それまでスルーされてきたうつ病の本来の治療をするということなのです。つまり減・断薬で初めて本来の治療になるのです。本当に回復するにはどうしたらいいのかということを、薬に頼らない治療をしながら考えることになります。医者が初めて患者さんと向き合って、きちんと話を聴き、身体を検査し、そこで初めての治療をすることになるわけです。

Q.それは患者さんの人生全体を考える時、患者さんにとってあまりにも遠回りな過程のような気がしました。
 本来は初診で診た医師がきちんと検査し、正しい診断をつけて、薬を最初に出す先生が薬をうまく使いながら治療をして、最後にきちんと減・断薬してくれればそれでいいという話なのです。しかし患者数をこなし、薬を出すだけの現在のような治療を、ただ機械的にこなしていると根本的な治療はなされないですね。患者さんが長引いた治療の末に、疑問を感じて減・断薬しなくてはというところに来たときに初めて、根本の問題が関係していると気がつくわけです。最初から、根本的なところから丁寧に治療に取り組めば、多剤大量処方にならずに早い時期に減薬・断薬できるはずなのです。
(2017年6月取材)

https://www.chimura-clinic.jp/ 
千村晃 Akira chimura プロフィール
千村クリニック院長。1952年東京都出身。千葉大学医学部卒業後、千葉大学病院脳神経外科、東京厚生年金病院ICU麻酔科などでER救急・脳外科の診療にあたる。29歳で東京医科歯科大学精神科に入局し、メンタル医療に取り組む。2004年クリニック開設。著書に『医師の9割はうつを治せない』(祥伝社)、『これからはメンタル美人』(カナリア書房)がある。

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