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365日のてのひら話

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200文字を基本に500文字までの物語。
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2024年8月の記事一覧

2024/08/03 「はちみつの日」

それは不思議な香りの付いた煙だった。焚いているのは香木の一種だというが、木の匂いとは思え…

名野凪咲
53分前

2024/08/09 絵空事(えそらごと)

「画伯、寝てるよ」 同居人の声に目が覚めた。気が付くとペンが手から落ちている。よだれをた…

名野凪咲
12時間前

2024/08/02 「ビーズの日」

キラキラとした小さなボールが廊下に転がっていた。摘まみ上げると穴が開いているビーズだった…

名野凪咲
1日前

2024/08/08 鮎の宿(あゆのやど)

山間部の渓流に来たのは、同居人がアユを食べたいと言い出したからだ。 この暑さの中でも山は…

名野凪咲
1日前

2024/08/01 「配置薬の日」

「こんにちは。薬の箱、あるけ(どこにある)?」 大きな箱を持ったおじいさんが家にやってく…

名野凪咲
2日前

2024/08/07 帰省子(きせいし)

「お盆ってそっちもあるの? お家に帰る?」 友人がそう聞いてくるので、『お盆はない』『秋…

名野凪咲
2日前

2024/07/31 「蓄音機の日」

クラッシックな音楽がリビングに流れている。有名な曲だけれど曲名は知らない。 不思議に思いながらリビングを覗くと見慣れない機械が置いてある。蓄音機だ。傍に同居人がうっとりとソファーでくつろいでいる。 「珍しいね。レコード、どこにあったの?」 「送ってもらった。蓄音機と一緒に」 昨日、大きな箱が届いたのはこれだったのかと思いながら、私もコーヒーを手にソファーに座る。 レコードが終わると、同居人が思い出話をしてくれた。この蓄音機は祖父が気に入っていたもので、小さい頃は毎日のよ

2024/08/06 熱風(ねっぷう)

暑い。 真夏の都会。山向こうからの旅行は別世界に来たみたいだ。地下鉄に地下道と移動するだ…

名野凪咲
3日前

2024/07/30 「人身取引反対世界デー」

「今日、行くところがないの? だったら、ウチくる?」 私に手を差し出してくれたのは、綺麗…

名野凪咲
4日前
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2024/08/05 暈(かさ)

ひょこんひょこ。 遊ぶように茅の輪をくぐったり抜けたりしている子供がいる。 あれは……一…

名野凪咲
4日前

2024/07/29 「七福神の日」

神様たちはいつも争っていた。 『七福神』の座をかけて。 「私がその椅子に座るべきだと思う…

名野凪咲
4日前

2024/08/04 消滅飛行機雲(しょうめつひこうきぐも)

うっすらと伸びる雲の中に一筋、雲の消えている線が伸びている。 飛行機雲の逆だ……そう思い…

名野凪咲
5日前

2024/07/28 「菜っ葉の日」

シャリシャリ 変な音がリビングから響いてきた。見てみると友人がお皿にレタスを載せて、それ…

名野凪咲
6日前

2024/08/03 風死す(かぜしす)

ふわりと通り抜ける風を感じながらうとうとしていると、ピタリと風が止まってしまった。 風が止まるとジワリと暑さが襲ってくる。先ほどまで暑さと涼しさが漂っていた空気は途端に熱気に変わっていく。 「ぬあっつつつつ」 飛び起きてリビングに降りていくと、同居人はすでに一番涼しい位置を陣取っていた。 「眠れない」 「寝てたでしょ」 同居人に突っ込まれるが、うとうとしていただけで寝ていたのかもわからない。 「寝る」 涼しい場所は諦めて、少し涼しい位置に陣取る。ここなら風が来るはずだ。