2024/08/03 風死す(かぜしす)

ふわりと通り抜ける風を感じながらうとうとしていると、ピタリと風が止まってしまった。

風が止まるとジワリと暑さが襲ってくる。先ほどまで暑さと涼しさが漂っていた空気は途端に熱気に変わっていく。

「ぬあっつつつつ」
飛び起きてリビングに降りていくと、同居人はすでに一番涼しい位置を陣取っていた。
「眠れない」
「寝てたでしょ」
同居人に突っ込まれるが、うとうとしていただけで寝ていたのかもわからない。

「寝る」
涼しい場所は諦めて、少し涼しい位置に陣取る。ここなら風が来るはずだ。
と思ったけど、風が動いていない。暑さは減ったけど、涼しいわけでもない。

「風がない」
諦めてエアコンを付ける。
「こういう風がない事を風死すって言うんだって……でも、その前に僕たちが死にそうだよね」
同居人の言葉に笑う気力もなかった。

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