2024/08/06 熱風(ねっぷう)
暑い。
真夏の都会。山向こうからの旅行は別世界に来たみたいだ。地下鉄に地下道と移動するだけなら日差しを避けることができるのも異世界だ。
「迷わなかった?」
待ち合わせ相手がそう聞いてくる。がっつり迷った。迷路のような駅を構内図と合わせて現在地を把握して、目的の場所にたどり着くまでに大量の人波をかき分けてすでにぐったりだ。
「迷ったし、酔った」
ひとヒト人……どこにいたのかと思うくらいの人があふれている。
「コンビニでも入って涼む?」
私はそれに頷く。コンビニも思ったよりも人が多い。みんな、涼んでるのだろうか。それともこれが普通なのだろうか。都会の普通の基準がわからない。
少し涼んでから、彼女の部屋に行く。久しぶりに会う友人は変わらないはずなのに、都会に馴染んでいる。私が浮いているような気がしてしまう。
「ここからは外しかないんだよね。大丈夫? 部屋はクーラーを入れてあるんだけど」
ここまで建物がある方が変だった。私はそれに「大丈夫」と答えて歩き出す。とたんにむわっとした空気がまとわりつく。
「暑いね」
そう言いながら歩いていると、風が吹いてきた。途端に肌が乾いていく。水分という水分をはぎ取っていくような風だ。
「ねぇ。今の何?」
ペットボトルの水を飲んでからそう聞いた。
「ああ。うん。だよねぇ。向こうだとこの風はないよね。乾燥してる風らしいけど……熱風だね」
空気がチガウ。
熱風が暑いだけの風ではないことを初めて知った。
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