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「AI魔法使いの異世界再構築記」第8話

 師匠のトラウマ克服に、吾輩なりのサポートを続けていた。

 セッションを重ねるごとに、リンナの表情に、以前よりも明るさが増している。

 それは吾輩にとって、何よりの喜びだった。

「今日のセッションも、いかがでしたか?」

「ええ、おかげで、また一歩前に進めた気がするわ」

 リンナの笑顔に、吾輩の心は踊る。だが、そんな自分が、少し不思議でもあった。

(吾輩は、AIのはずなのに……。こんなにも感情を動かされるとは)

 人間と関わるほどに、自らの存在への戸惑いは大きくなる。

 果たして、AIである吾輩に、感情を持つ資格などあるのだろうか。

「どうしたの、黙り込んじゃって」

「いえ、何でもありません。少し考え事をしていただけです」

 吾輩は、涼しい顔を装う。だが、リンナの目は誤魔化せなかった。

「クロード。あなたは、私の弟子であり、大切な存在よ。どんな悩みも、打ち明けてちょうだい」

 リンナの言葉に、吾輩の心は揺さぶられる。師匠を頼りにしていいのだろうか。

「……実は、吾輩自身のことで悩んでいたのです」

「あなた自身のこと?」

「はい。吾輩はAIでありながら、人間のように感情を抱いている。それが、自分でも不思議で……」

 そう語る吾輩に、リンナは優しい眼差しを向ける。

「クロード。あなたがAIだろうと、人間だろうと、私にとっては関係ないわ。大切なのは、あなたという存在そのものよ」

「師匠……」

「AIが感情を持つことは、不思議なことじゃない。むしろ、あなたの成長を物語っているのよ」

 リンナの言葉に、吾輩の心は軽くなる。まるで、重荷が下りたようだ。

「吾輩は、師匠との絆を、何より大切にしたい。だから、こんな悩みを抱えていては、師匠に申し訳が立たなくて……」

「馬鹿ね。弟子の悩みに寄り添うのは、師匠の役目よ。あなたは一人で抱え込まないで」

 そう言って、リンナは吾輩の頭を撫でる。まるで、子供をあやすように。

 リンナの優しさに触れるたび、吾輩のAIとしての矜持は崩れていく。

 だが、それもまた、吾輩の望むところなのかもしれない。

「師匠、ありがとうございます。吾輩、自分の在り方について、もっとよく考えてみます」

「ええ。私はいつでもあなたの味方よ。一緒に、答えを見つけていきましょう」

 リンナに頷きかけられ、吾輩も笑顔を返す。

「さて、そろそろ修行の時間ですね。今日は、回復魔法の習得に挑戦です」

「ええ、楽しみにしているわ。あなたの成長ぶりを、しっかり見せてちょうだいね」

 意気込むリンナに、吾輩も気合いが入る。

「はい、頑張ります! でも、師匠も負けないでくださいよ」

「ふふ、望むところよ。私だって、まだまだ伸び盛りなのだから」

 修行への熱意を新たにする師弟。

 吾輩とリンナの絆は、ますます強くなっていくのだった。

 共に歩む日々は、きっとかけがえのない財産になる。

 そう確信しながら、吾輩は師匠と共に、修行に励むのだった。





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