きつねと助六
人気のある定番なのに、お寿司屋さんにいくと頼む機会が少ないというか、ほとんどないメニューってありますよね。
🍣太巻きとおいなりさん
たとえば太巻き。あくまでお寿司屋さんの花形は生ものをネタにした握りで、いろんな種類の握りを食べようと思うと、生ものではないうえに、ボリュームのある太巻きの出番ってなかなかなかったりします。
でもお弁当となると様子は一変。生魚をネタにした握りはお弁当にするのはむずかしくて、そこでがぜん輝きを放つのが太巻き。そしておいなりさんも、よく似た存在なのではないかと思います。
このふたつが組み合わさると、思い浮かぶのは木のお弁当箱。お芝居を見ながら食べるお弁当だったり、デパチカのお寿司系のお店でテイクアウトしたりするというあれですね。“助六”という名前のあれ。
助六っていつの間にか、巻き寿司+いなり寿司の組み合わせメニューの名前として自然と受け入れていましたが、よく考えるとなんでこんな名前なのか不思議ですよね。今回調べてみて、ほほうと思いました。たしかにこの組み合わせ、歌舞伎とかお芝居の席で食べるお弁当のイメージです。
🍣お祭りの日のごちそう
そしてこの組み合わせ、子どもの頃の地元のお祭りの日のごちそうでもあります。
お祭りはちょうど、5月のこの時期。巻き寿司とおいなりさんが並ぶと、なんだかノスタルジックな気分になります。
🍣おいなりさん作ります
まずはおいなりさんに必須のお揚げさんを炊いていきます。
🦊お揚げの炊いたんの材料
・油揚げ
・水
・醤油
・砂糖
油揚げは半分に切って、麺棒や5~6本まとめたお箸をその上でころころと転がして、中をはがし袋状にしておきます。
お鍋に水、醤油、砂糖と一緒に入れて火にかけます。
あとは煮るだけ。強火で煮て煮汁の中で冷ましておきます。
そういえば地元のほうでは油揚げのことを“お揚げさん”と、さん付けで呼びます。なのでいなり寿司は“おいなりさん”。ほかにも“おいもさん”とか“お豆さん”とか。三つ子の魂ってやつでしょうか。いまもついついそう呼んだりもします。
おいなりさんのごはんは、もちろん酢めし。ちょっと甘めが好みです。
お揚げさんは破れないように注意して絞ったら、酢めしを詰めていきます。最初にごはんを小さめに丸く握ったものを油揚げの中に入れてから、その周りにごはんを詰めていくようにすると入れやすいです。
🦊おつゆ代わりに
せっかくお揚げさんを炊いたので、助六に添えるのはきつねうどんにすることにしました。
料理をしているとき、こういうふうに作ったものをアレンジして、もうひと品増やしたりするのって、楽しいんですよね。品数が増えて得したような気分にもなるし、とっさにアレンジを思いついた自分のアイディアを褒めてあげたくなります。
うどんは好みで細めのものを使います。
お寿司と組み合わせるので、小ぶりのお椀サイズにします。
おねぎと七味をたっぷり添えたら、きつねの完成です。
🍣助六にほっとします
さあ、あとは巻き寿司。
これで助六準備OK。
いい組み合わせですね。
おいなりさんに巻き寿司、そしてきつねうどん(小)。うどん屋さんのセットみたいでいい感じに仕上がりました。
甘めの醤油味の味付けのお揚げさん、めんつゆの香り、爽やかな酢めし。いなり寿司を食べて、うどんをずずっ。うどんのおつゆを汁物代わりにいただいて、今度は太巻きをぱくり。きつねうどんのお揚げさんをかじったら、おつゆをひと口。
食べ進めるごとに、なんだか気持ちが落ち着くような組み合わせです。こういう、ほっとするような魅力は和食ならではかもしれません。やっぱり日本人ですね。
おとなになり食べるだけではなく、作る側にもなったおかげで、子どもの頃の懐かしい味を再現できるようにもなりました。日々いろんな料理を作っていて思うのは、その楽しさはひとつの種類ではないということ。
初めて作る料理に対するわくわくする感じも楽しければ、懐かしい料理を再現するときは、少しずつ記憶の中のひと品に近付いていく過程が楽しかったりします。楽しく作れて、美味しく食べることができるって、素敵ですよね。
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