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TOKECOMとデータサイエンス: コロナ禍のオンライン分析教育

TOKECOM=東京経済大学コミュニケーション学部の柴内です。

2022年度からのTOKECOM新体制で、私は主にメディア社会学科科目を担当する予定ですが、国際コミュニケーション学科を含めた学部全体に対しては、自ら手足を動かしスキルを身につける「ワークショップ科目」の一つ、「社会調査ワークショップ」を教えます。


現在、社会にあふれる情報・データを分析し、そこから知見を生み出し予測や意思決定に役立てる「データサイエンス」の重要性が指摘されるようになりました。文系理系を問わず全国多くの大学で、このような教科の設置や必修化が進んでいます。では私たちTOKECOMはこの流れにどう関わっているでしょうか。

実は、コミュニケーションとデータサイエンスには密接な関係があるのです。例えば、ネットで何かを検索したり閲覧したあとになって、自分が関心を持つジャンルの商品広告が画面に自然と表示されていたり、あるいはソーシャルメディア上で知り合いや関係のありそうな人、あるいは関心を持ちそうなニュースが推薦されているという経験があると思います。私たちが日々生み出す膨大なコミュニケーション行動履歴=ビッグデータが分析されてそのような表示に使われ、そして次の行動を引き起こします。現代のメディアとコミュニケーションについて考察するには、背景にあるビッグデータとその分析技術の理解が欠かせません。

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また私自身、大規模データの分析を通じたメディア研究にも携わっています。以前、東日本大震災に関する総合的な学術研究プロジェクトに参加しました。そこでは震災とメディアをテーマに、発災の2011年3月から半年間のブログ投稿の内容も分析対象としましたが、その投稿数は約281万件ありました。このように大きなデータの取り扱いはなかなか単純にはいきません。TOKECOMには、現代のコミュニケーション問題にデータ分析を通じて迫る教員が何人も在籍していて、互いに情報交換しながら研究と教育に当たっています。


そしてTOKECOMでは学生にもこういった分析技法の基礎を身につけてもらうため、アンケート・社会調査の計画実施と、そこで取られたデータの分析のための科目を設置しています。人間や社会について、主観的な思い込みではなくデータに基づいて考えられることは、職業や社会生活でずっと役に立つ大事なスキルです。私たちはこの考えから、学部の一年生全員に「社会調査入門」を履修必修とし、またさらに発展的な調査分析科目を設置しています。これが冒頭で記した「社会調査ワークショップ」です。これらは社会調査協会の「社会調査士」の科目認定を受けており、定められた科目を履修すれば申請により資格が与えられるようになっています。

ここで私が現在担当しているのは、データ分析の入門編となる科目です。比較的規模の小さなアンケートデータを与え、それをコンピュータを用い基本的な手法で分析すること通じ、各手法について理解し自身で実行できるようになることを目標としています。大学入学以前も触れてきた統計・情報に関する学習内容も振り返りながら、文系の学生でも十分わかるよう、本格的な分析の世界の手ほどきをしています。

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通常は大学のコンピュータ室で、統計分析のための専門ソフトウェアを操作しながら学生たちが実習をし、その画面を見たりこちらから見せたりしながら基礎知識と技術を半年かけて習得していきます。しかし去年に続き今年もコロナのせいで、大学内の部屋に皆が集まる形のワークショップが5月以降難しくなってしまいました。

そこで例年と変わらない質をできるだけ維持するような実習を、オンライン上で工夫して行っています。研究室のこんな環境からです。

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20名ほどの学生たちは自室から、WindowsやMacで統計分析できる環境を各自整えてオンラインのワークショップに参加しています。私のコンピュータで実際の分析手順をその場で実行して見せ、それぞれの手元でも実際に操作してもらって結果がどのように解釈できるのかを学生の方からも説明します。

各画面やプリント配布資料はこちらでワンタッチで切り替えながら見てもらいますが、例えばレジュメやグラフもiPad(写真左)にリアルタイムで書き込んだり、実際の指さしもして配信し(中央ディスプレイの配信画面では、私自身がグラフ脇に座っています)、手元の結果のどこに着目すべきなのか理解してもらうよう努めます。学生と対話し、理解度を確かめながら進めるのは対面授業と変わりませんが、オンラインで活用できるテクノロジーは可能な限り取り込んでいるため、対面よりすぐれた部分もあるかもしれません。

教室になかなか集まれなくても、目指すものは同じです。人間や社会、コミュニケーションをデータを通じて見通せるスキルを身につけること。いまは教師も学生もそれぞれの部屋に分かれていますが、これまでと変わらぬ目標でワークショップに取り組んでいます。

(柴内康文)


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