P295. 作品紹介『山田と田中‐後編‐』
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・・・さて、順位の中間発表。
俺達のペアは今のところ、参加者50組中49位という好位置(?)に着けている。ちなみに50位は御年80歳の最年長ペアである山田爺ちゃんと田中婆ちゃんで、1位は依然として山田武蔵のペア。
ぺこ「二郎君、借り物競争楽しかったねー、次も頑張ろ!」
ダメだこいつ、俺がなんとかしなきゃ…
下手したら優勝どころか最年長ペアにも負けて最下位になってしまう。
焦る気持ちとは裏腹に、どんどんトップとの差が開いていく。
…と言うかなんでこんなことに一生懸命にならなきゃいけないんだろう??
そう思ったら一気にどうでもよくなってきた。
今年もやっぱりダメな年だったなぁ。
まぁ来年こそは良いことあるだろ。
適当に終わらせて早く帰って、コタツで年末特番でも見て過ごそう。
司会「ではいよいよ最後の競技、マラソンです!それぞれ山田さんと田中さんの順位に応じたポイントが与えられますので頑張ってくださいね」
最後の最後にこれかよ、しんどいことさせやがって・・・
まぁ個人競技だから、ぺこを気にせずにマイペースで走ればいいか。
武蔵「おい山・・じゃなかった、ただの二郎。悪かったよ。まさかお前らが下から数えてトップを目指してたとは知らなくてな。はっはっは」
ウルセーウルセー!さっさと終わらせて帰るんだ。
「位置について、よーい、スタート!」
ああ、疲れたなー・・・沿道で俺らを応援する、田中でも山田でもない人たちの顔。白い息、冬のツンとした空気と、高い空。
みんな何でそんな楽しそうにしてられるんだろう。
こんなことに何の意味があるんだか・・・あれ?
俺達の少し前を走っていた山田のお爺ちゃんが突然うずくまってしまった。
どうやら、足をくじいたらしい。
ぺこ「お爺ちゃん、大丈夫ー?大変、私に任せて!絶対助けるからね」
おいおい、俺たちそれどころじゃ・・・
そう言う間もなく、ぺこはお爺ちゃんをおんぶして凄い勢いで走り始めた。アイツ・・・どこにそんな力残してたんだよ全く、仕方ねえな!
俺は呆気に取られている田中のお婆ちゃんを背負って全力でぺこを追いかけた。
何人追い抜いたのかわからないけど、一人で走ってたらこんな順位にはなれなかっただろう。
司会「皆さん大変お疲れ様でした。今年の優勝コンビは・・・
山田武蔵さんと田中秀雄さんです!おめでとうございます!!
そしてマラソン競技では最年長コンビを背負って走り切ると言う素晴らしいコンビも生まれましたね。その温かく優しい心と2人の名コンビを称えて、審査員から特別賞として山田と田中改めサンタとトナカイ賞が与えられます!おめでとうございます」
山田を音読みで、サンタ。
タナカは…タナカイ……トナカイ??
ちょっと強引過ぎる気もするけど、ただの二郎よりは格好がついたかな。
ぺこ「二郎君やったねー。サンタとトナカイ賞!イェーイ!!」
マイペースで掴めないヤツだと思ってたけど、人の為に本気になれるって案外凄い奴だな。田中から教わるなんて、やっぱりダメな山田だけど。
…おぉ、寒いと思ったら雪まで降ってきやがった。
メリークリスマス。今年もあと少し…頑張ってみよっかな。
おしまい
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