【2021年追想】もう一度湯治したい宿10選
今年もあと僅かとなりました。
昨年秋、10年以上苦しめられてきた全身痛がとうとう限界に達します。
11月に病臥し、入転院の末に原因不明の難病が断定されます。薬理療法など、明確な治療法も確立されていない病でした。
医師の薦めもあり、入院と湯治、ワーケーションに終始した2021年。多くの湯治場で治療と向き合いました。
一時は寝たきり状態になり、社会復帰を諦めた時期もありました。ですが湯治場での暮らしで次第に容態は快復。病と闘う多くの方と出会えたのは勿怪の幸いでした。
今年を振り返り、もう一度行きたい湯治場10選をご紹介致します。
昨今の情勢を斟酌し東日本には偏っています。全て私が実際に3泊以上しており、価格も1泊素泊り5千円程度(数件除く)と連泊向きです。
ちょっとハードな宿もあります。
①後生掛温泉(秋田)
秋田県八幡平の南端に位置する湯治場。オンドル浴(地熱)を3泊で体験しました。火山帯にある湯治部、部屋を開けた瞬間とんでもない熱気が襲いました。この頃、激痛地獄から自律神経が乱れ、夜は寝汗が酷かった時期です。
安眠出来るか不安でしたが、天然の床暖房の上に横になると何故か不快感はなく、不眠で苦しんでいた私もぐっすりと眠れました。
温泉の方はデパートの如く多様です。箱蒸し風呂に泥湯。打たせ湯など7つの浴槽があります。
座布団の様な簡易寝具で眠るのですが、背中が痛くなりません。おそらく地熱による温熱効果のものです。
素泊り:4,140円~
②鶯宿温泉 石塚旅館(岩手)
岩手と秋田の県境に位置する鶯宿温泉。大小さまざまな宿がありますが、この宿の異郷感は際立っています。何と1泊2,000円、1週間滞在しました。廃校のようでストーブを点けるとカメムシが大量発生します。
トイレの個室が異常に狭かったり、お世辞にも綺麗な宿とは言えません。ですが源泉は間違いなく100%かけ流しです。昼夜関わらず多くの地元民が集まります。
予約を取るのが大変です。女将さんが「うちなんか泊まらない方がいいよ」、「他の宿と勘違いしてない?」と言って引かないのです。粘りの交渉で予約を取り付けました。
こちらに長期滞在していた女性。いつも親切にしていただき、お裾分けをしてもらいました。後光差す釈迦如来に見えました。
綺麗な旅館、スタッフの厚遇を望むのであればこちらはお勧めしません。
私はまたこちらに数週間湯治したいです。
素泊り:2,000円~
③大沢温泉 湯治屋(岩手)
言わずと知れた宮沢賢治氏愛湯の宿です。浴衣やアメニティ類、寝具まで武装すれば1泊2千円台~湯治が可能です。築200年の母屋はギシギシ、外鍵なし。湯治場の雰囲気を堪能できます。
名物の大露天風呂「大沢の湯」は開放感抜群。豊沢川を眺めながら、四季織々の絶景を眺めることができます。湯治場のウィークポイントになりがちな水回り、炊事場も綺麗に清掃されています。
フル装備をすれば2千円台ですが、敷布団に掛け布団、枕にシーツまで細々と料金が加算されます。鉄道旅であれば4千円を見ておけば良いでしょう。
素泊り:2,593円〜
④鳴子温泉郷 川渡温泉 高東旅館(宮城)
今年最も宿泊したのがこちらの宿です。
春には2週間こちらに滞在し湯治しました。自前のポケットWi-Fiも圏内なのですが、ちょうど滞在中にルーターの設置工事が行われていました。ワーケーションにも最適な宿になりました。
宿の庭にある升の下から湧き出す高温の源泉。翡翠色に卵スープのような湯花が浮かび、温熱効果は別格です。期間限定ですが、Le‘s Go 湯治プランは、1泊4,500円以下で夕朝食(米と味噌汁のみ)が付きます。
こちらも裏庭の田んぼでご主人自ら田植えをした一等米です。美味しいです。
生きている内にこの宿に出会えたこと自体が幸せです。
1泊4,393円〜
⑤磐梯熱海温泉 湯Kori(福島)
夏に2度、1週間程度の湯治を行いました。
老舗旅館をリノベーションし、セルフスタイルのゲストハウスへと生まれ変わった宿。磐梯熱海駅から徒歩1分、鉄道でも便が良いです。食事は近くの食堂、コンビニもすぐ近くにあります。源泉は宿にもありますが、共同浴場「湯元元湯」で湯治をします。
源泉は30度台前半。一度の入浴で1時間浸かります、それを朝昼晩。軽く見積もっても今年だけで30時間以上はここに浸かりました。
2度目はアトピーの同僚を連れて行きました。2名だったので平日の1泊単価は3,500円以下でした。
素泊り:3,900円〜
⑥大塚温泉 金井旅館(群馬)
中之条にある1軒宿。何度も日帰りで訪れていた宿です。
公式ホームページもなく、予約サイトにも掲載がないので宿泊は二の足を踏んでいました。思い切って電話をすると、少々愛想の悪いご主人に予約対応をしていただきます。
到着してから料金が発覚。何と連泊だと3食付きで5,750円です。家庭的で普通においしい食事です。源泉は33度台、一瞬ひやっとしますが徐々に内側から温まっていきます。こちらも4泊し、毎日3時間は湯に浸かっていました。多くの地元客と次第に顔見知りになり、会話も弾みます。
飲泉が可能で、ペットボトルに汲み水をし滞在中は常用とします。体内が浄化されるようです。
1泊3食付:5,750円〜
⑦沓掛温泉 叶屋旅館(長野)
廃業した旅館を難病を克服したオーナーがリニューアルオープン。いつもリピーターで賑わいます。初夏に訪問した際、既に今年6度目の訪館というご夫婦にもお会いしました。
Wi-Fiの通電状態も良く、私は連泊で仕事をこなしながらの滞在となりました。座っての作業はすぐに持病の全身痛に現れます。痛みが出ると宿の湯またはすぐ横の共同浴場「小倉の湯」へ飛び込みます。
天然の蛍が出る美しい青木村の景観と、館主ご夫妻を始め隣の食堂「千楽」の女将さんの歓待に心癒されます。
建物自体は古いですが、素晴らしき湯と人。価格帯も含め、この宿で満足できないという方はいないのではないでしょうか。
素泊り:4,700円〜
⑧下部温泉 橋本屋(山梨)
下部温泉といえば「源泉館」が筆頭ですが、素泊り不可の完全な湯治場です。私は復職を目指し業務を抱えていたため、Wi-Fiの通信状況を加味してこちらで3泊しました。
家族経営の小さい宿で、子育て奮闘中の若女将とご主人に好感が持てます。温湯源泉と加温浴槽の交互浴が快然で止まりません。難病をお抱えの方と意気投合してしまい、こちらも1日4時間程浸かっていました。
Wi-Fi等通電状況や清潔さを求めないのであれば、足元湧出泉を体感できる源泉館も必湯。
素泊り:5,000円〜
⑨増富ラジウム温泉 三英荘(山梨)
源泉エグいです。赤褐色の湯に鉄錆のような湯花が浮いています。味はこの世のものとは思えない不味さ。21度の冷鉱泉です。上がり湯との交互浴で1日3時間ほどの入浴で効かせます。
80歳を超える女将さん、客をあまり取らないようにしています。1週間の滞在中、ほぼ2人で生活しているような感覚です。信頼関係が出来てくると、ペットのシーズー犬の散歩を任されるなど貴重な経験ができます。
湯治の前後で大学病院の血液検査をしており、持病の低白血球や免疫系の数値が大幅に改善しました。
素泊り:5,000円〜
⑩五十沢温泉 ゆもとかん旧館(新潟)
特に大きな看板なども出ておらず、一見ただの民家にしか見えません。鉄板の四隅に置かれた赤いカラーコーンが目印です。この下から超美肌源泉が渾々と湧き出します。
日本一うまい米、南魚沼ブランド石打塩沢米はこのあたりで収穫されます。100円ほどの塩むすびが感涙するほどの美味しさで、近くのおにぎり屋で購入できます。八海山の湧水も車で汲みに行ける距離です。
旨い水と米、良い湯が揃っている地。素泊り1泊4千円に満たないのは有難いものです。
一人泊で24畳の部屋に案内されたのは驚愕でした。柔道場のようでした。
素泊り:3,970円~
まとめ
以上、また湯治をしたい宿10選でした。好みの問題でしょうが、安くて少々ボロい方が居心地が良いものです。年末年始も右顧左眄せず、鳴子温泉にて湯治をする予定です。
令和3年12月15日
<後生掛温泉の記事>
<鶯宿温泉 石塚旅館>
<大沢温泉 湯治屋>
<鳴子温泉郷 川渡温泉 高東旅館>
<磐梯熱海温泉 湯Kori>
<大塚温泉 金井旅館>
<沓掛温泉 叶屋旅館>
<増富温泉 三英荘>
<五十沢温泉 ゆもとかん旧館>
<2021年初訪の名湯10選はこちら>
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