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源泉回顧録【夏の福島② いわき湯本~岳温泉】

 ※こちらの記事は2020年夏の日記を元に加筆修正したものです。

 兵庫の有馬温泉、愛媛の道後温泉と並び日本三古湯に数えられるいわき湯本温泉。(※文献により異なる、和歌山の白浜とする物が多い)。
スパリゾートハワイアンズの印象が上回ってしまったが、湯の歴史も開湯1,300年を誇る本格派。

 宿は中心地から少し離れたところで安価な素泊まり宿が押えられた。チェックイン時間までの間、いわき湯本駅近くで時間を潰す。およそ20年振りに訪れたいわき本地、過去の記憶と大きく異なるその街並に、地球の自転が止まったかのような衝撃を受けた。
 メイン通りが完全にシャッター街になっている。

 出立の数日前にハワイアンズが営業再開し、フラガール達の奮闘に密着したドキュメントを夕方のニュースで見たばかり。多少は歓迎ムードに包まれているのかと思案していた。だが震災復興への現実と疫病拡大の影響を目の当たりにし、感傷的になり駅前で呆然としてしまった。


 暗澹たる気を持ち直し、近くの温泉神社で良泉との出会いと持病の平癒を祈願。その後向かったのは定石通り300円共同浴場、いわき湯元のシンボル「さはこの湯」。

 中には大中小の浴槽があり、それぞれ温度が異なるが基本的には全て激熱。加水しているようだが58度の源泉は芯まで効く。浸かった瞬間小さく「アツッ!!」と漏らしてしまうほどだ。
 ほんのり腐卵臭漂う硫黄泉はパンチ力十分、真夏日とありサッといただいた。だが余りの熱さにしばらく汗が止まらず、持病のためか熱を持ちやすい体質の私にとっては厳しいダイブとなってしまった。


 いわき湯元を後にし、向かった先は本日の寝床「神白温泉 国元屋」。
じゃらんで探してきた安価な素泊まり宿。掲載写真を見る限り高級旅館のように綺麗でありながら、ph8.8の自家源泉を保有しているという。一泊料金は4千円台だった。
 純和風の宿は清潔で、女将さんの対応も良い。2階にはリラクゼーションサロンが併設されているなど、安宿ではなかなか経験できない厚遇。これまでの貧乏宿巡りの経験から、どこかに地雷があるのでは??と邪推してしまうほど。

 肝心の風呂は内湯が一つ、リニューアルしたのか浴場も綺麗だった。泉温13度の冷鉱泉は流石に加温循環しているものの、浴槽横にある蛇口を捻ると飲泉可能な100%かけ流しの源泉が落ちる。石膏臭が漂うトロトロ源泉を桶に溜めて何度も顔を洗い流した。

 そうなると期待してしまうのが源泉浴槽。もし13度鉱泉浴槽があったら、、私は交互浴で2時間ほど出てこれなかっただろう。流石に欲張り過ぎか。
 だが、この時期必ず訪れる「増富温泉(18度)」、「毒沢鉱泉(2度)」、「渋・辰野館(18度)」などは多くの湯治客や冷鉱泉ファンが全国から集まる。何れも源泉浴槽を設け、 ”ぬるい・冷たい” を売りにしている。リニューアルの際にご一考いただきたいところだ。

 
 翌朝は土砂降りの雨音で目を覚ました。この日はあぶくま高原を超え内陸方面を目指す。2日目初湯は日本百名山、安達太良山の麓「岳温泉 岳の湯」へ。
 ここは以前に南会津を訪れた際、「古町温泉赤岩荘」にて同浴したおじさんに教示いただいた湯。お勧めの入り方があるのだと言う。
この浴場の交差点斜向かいに「成駒」というソースカツ丼の名店がある。登山客が多く訪れ、味も量も評判も良く週末は大行列になるらしい。先ずは開店直後に店に行き記帳を済ませ、順番が来るまで「岳の湯」で時間を潰す。   
 おおよそ45分から1時間程すればちょうど食事にありつけるのだとか。いざ実践。

 予定通り11時前に店に到着すると駐車場は既に満車、最も停めにくい電柱横の駐車スペースに1,200㏄のチビ車を押し込んだ。店前の帳簿を除くと順番は18番目。確かに一人で時間を潰すにはなかなか刻苦。教えに倣い「岳の湯」に入館。なかなか年季の入った湯治場の雰囲気を残す350円の共同浴場だった。

 実に半年振りの強酸性泉。ph2.4、源泉温度56度の激湯に渾身のダイブ。

 「ガツンッ」
 「ビリビリビリビリッ」

 見事に一撃で効かせることに成功。自粛期間を挟み久々の白濁硫黄泉に、予想外にグッタリ来てしまった。脱衣所に掲示されている入浴の心得「浴場でおならをしないでください」という初見の注意書きと共に、印象に残る湯だった。

 
 12時過ぎに成駒に戻るとすぐに名前を呼ばれ店内へ。
「アルコール消毒をお願いします」と店員に促される。

 「いやいや、私がさっきまで入っていたのは除菌どころか五寸釘をも溶かす強酸性泉ですよ」、、とは言えるはずもなく、消毒液を吹き掛けた。 

 運ばれてきたソースカツ丼は、蓋が被せてあるもの他店の倍程ある肉の厚みで浮いてしまっている。噂には聞いていたがかなりのデカ盛りだ。
肉厚だが脂身の少ないカツは食べ応え十分。確かに旨いが後半は満腹中枢とのバトルとなった。
 そんな折ふと隣のテーブルに目をやると、持ち帰り用の容器を受け取り残飯をテイクアウトしている。どうやら食べきれない客が多いようだ。今日の宿も素泊まり湯治宿。結局半分ほどを残し持ち帰ることに。思わぬ形で夕食をゲット。

 旅はまだ中盤。安達太良山を越え、更なる秘湯へと向かう。


                            令和2年7月

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