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私と温泉と湯治⑩【鳴子温泉郷へ~中山平に宿泊】

<前回はこちら>

 とうとう肘折で年越しです。三春屋さんは年末年始は予約が一杯で、別の宿に移ります。10時から15時まで、肘折の中で時間を潰すのも無理がありました。私は新庄方面に出て、コインランドリーで洗濯物を回し、今年2度目の年越しそばをいただこうと思いました。これがミスジャッジでした。

 利用したランドリーは商業施設の一角にある「るんるん」という店でした。読書をしながら洗濯乾燥を終え、近くにある「さぶん」というお蕎麦屋さんに入りました。

 日本家屋の様な立派な建物、外には待ちの客がいましたが、一人なので相席ですぐに入れました。注文は勿論名物の「板蕎麦」です。こちらも香りが良く、盛もガツンです。コインランドリーから近いところを探して入っただけでしたが、某グルメサイトで3.5を超える高評価の店だったようです。

 ずるずるやっている内に、外では大変なことが起こっていました。ホワイトアウトです。地元の方がスタックした車を手押しするレベルです。とりあえず見通しの良い通りに出て、スーパーの駐車場に停めました。こんな雪道を運転するのは初めてのことです。

 新庄は街中で、肘折はここから更に山に入って行きます。4mもの積雪を観測するほどの豪雪地帯です。鬼籍に入る覚悟で出てきた旅とは言え、流石にチビ車で雪山に入り、地元警察やJAFに迷惑をかけてまで棺桶に入るのは人道に反します。

 まずは電話と思い、旅館の女性スタッフが出ました。今新庄にいると伝えるや否や「四区でないのであれば今日は来ない方が良い」「こちらでキャンセルしておきます」と仰せ。とても慣れた対応のように感じました。既に何本か連絡が来ていたのかも知れません。

 さあ、困りました。12月31日、宿無し状態です。
じゃらんで空室を探します。寒冷前線から逃れるには東へエスケープした方が良さそうです。宮城との県境にある「瀬見温泉 喜至楼」は素泊りで空きがありました。大変由緒ある御宿で、この日は特別料金でそこそこです。

 寒冷前線は西から東へ、もう少し東に逃げておいた方が安牌です。
宮城県の鳴子温泉郷を探すと中山平の「なかやま山荘」に2食付きで予約が出ていました。迷っている暇もありません。とりあえず確保です。


 中山平には13時30分には着いてしまいました。とりあえず鳴子温泉駅方面へ向かい温泉神社に参拝です。この旅の途中出湯温泉の「華報寺」で参拝するようになってから、この習慣は続けていました。

 参拝を終え、身体はかなり冷え切っていました。隣の共同浴場「滝の湯」にドボンです。こちらも如何にもという硫黄の香りと白濁の湯が身体の芯まで温めます。小ぶりですが威風堂々の風格を備えており、200円という共同浴場らしさもあります。

 15時が近くなり、なかやま山荘へ。少し早かったですが、スタッフが「どうぞ」と入れてくれました。無事にここで年を越せそうです。中山平もこの日の夜から大雪でしたが、新庄のそれはとは比較になりませんでした。

 
 中山平も通算5回目くらいでしょうか。私の中では鳴子は弾丸で湯巡りする街だったので、必ず鳴子温泉駅の受付で「湯巡りチケット」を購入していました。この旅初めて湯巡りをせずに鳴子を過ごします。

 中山平と言えば日本を代表する「うなぎの湯」と呼ばれるほどツルツル、ヌルヌルです。私の入ってきた中ではこちらがナンバーワンかも知れません。
 なかやま山荘の浴室に掛かっていた分析表には「循環・消毒液あり」となっていましたが、現在はかけ流し100%で配湯していると教えて頂いた記憶があります。ちょっと褐色がかかった良い湯でした。

 
 なかやま山荘での大誤算は食事です。
何と大晦日ということで夕食にお蕎麦が出てしまったのです。さっき食いました、蕎麦大国の中でも人気店で「板蕎麦」を。その数日前にも年越しそばになると思い、山形市の「竹ふく」でも食っています。

 どちらも超が付くほどの名店で舌が肥えてしまったのでしょう。旅館が出すお蕎麦を「美味しい」とは思えません。こうしてこの年は3回の年越しそばをいただき、新年を迎えるのでした。

 朝食もお節料理と雑煮が出ました。なかやま山荘さんには何の責任もありませんが、「普通の飯が食いたかった」と思いました。

 記憶に残る年越し。そして元日は私の誕生日なのです。無事に湯治場でひとつ歳を取りました。忘れることのない正月です。

つづく
                          令和4年10月20日

別の時に撮影した瀬見温泉 今回は通過です
鳴子温泉駅近く
鳴子温泉神社へ 参拝は続けていました
本殿
滝の湯に入りました 200円 中は撮影できません
この旅唯一あった中山平の写真です
同僚に「そっちの雪はどう?」と聞かれ撮影したのでした

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