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立冬の信越、源泉と美食を味わう⑦【完璧な旅程 野沢温泉へ】

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 本旅3泊目の投宿は、もはや説明不要か「野沢温泉」。
日本で唯一、市区町村名に「温泉」が付く町(野沢温泉村)。至る所に木小屋の共同浴場があり、全てかけ流し。そして無料(宿泊者以外は善意の募金スタイル)という圧巻の温泉天国。

 街中を這う側溝には源泉か湧水か、激流が音を立てて川下へと流れていく。スキー場と温泉街がほど近く、観光客やインバウンドでも賑う長野が誇る一大観光地のひとつ。


 飛び石連休の日曜泊。ここまで宿の手配には難儀したが、野沢に関しては心配ご無用。何とこの一帯には200を超える宿泊施設があるのだ(閉館しているものも多いが、、)。
 
 共同浴場が点在するため、宿選びにも全く困らない。私はオールインワンのメンズビオレを常備しており、洗体も地元民に交じり共同浴場で済ませる。

 宿に源泉が引湯されていなくても、極端に不衛生でなければ寝床があればどこでも良い。飲食店や商店も点々とあり、顎の心配もない。


 じゃらんで検索条件を絞ると、「一人」「素泊り」でも多数の宿がヒットした。いつものように上位から安い順に並び変え。


 上から目通しすると、様々な旅館が羅列される中、砂漠のオアシスの如くキラリと光る一軒の民宿を発見。豪華絢爛な内装、好条件の立地、自慢の女将・・・そのどれでもない。

 私の心を完全に打ち抜いたのは、「チェックイン時刻」。
多くの旅館ホテルのそれは、示し合わせたように15時から。だが「くつろぎの宿 池元」は13時からとなっていた。


 この2時間の差、小事が大事。
湯巡り族にとって、いや観光客にとっても旅の成否を左右するほどの重要なファクターになりうるのだ。


 例えば週末旅行。東京駅に集合し、特急に乗り温泉地の到着は昼前。
目当ての店で昼食を摂り、近くの観光地を逍遥し15時にチェックイン。その間、諸手はキャリーケースやボストンバッグで塞がる。

 「重い、、、」

 駅のロッカーに預けるなどの手段もあるが、無駄な出費が嵩む。
そして人気観光地になるほど、ロッカーに空きがないことも。結局疲労困憊で宿に着き、一度湯に入ったかと思えばすぐに夕食となる。


 これが13時チェックインであれば、一度荷物を部屋に置き身軽に逍遥が出来る。又は、単純に宿でゆっくり出来る時間が2時間伸びる。かなりのアドバンテージだ。

 因みに私が度々湯治で利用する「栃尾又温泉 自在館」、鳴子温泉郷「川渡温泉 高東旅館」もチェックイン13時という共通点がある。



 松之山温泉「民宿みよしや」を10時にチェックアウト。
その後温泉街をプラプラと歩き、「十一屋商店」というお土産屋に寄った。名物である「志んこ餅」を購入。

 コシヒカリで練られた少々硬めの皮に包まれた餡子。和菓子はあまり食べない質だが、これは本当に旨い。湯巡りの合間の栄養補給としても完璧な一品だ。10個入り(850円)を購入し、本旅の道中に全て消化する。


 松之山温泉を出てからは、復路にまたしても「道の駅さかえ」に寄った。こちらでキノコ汁と焼きおにぎりの軽めの昼食を摂り、野沢温泉へと車を走らせる。

 12時45分、少し早いが「くつろぎの宿 池元」に到着。女将さんが駐車場に出ていて、ご近所さんと四方山話をしていた。


私  「あの、、本日予約のヨシタカです」
女将 「お待ちしておりました。中へどうぞ」


 少々フライングだが、ロビーで入館手続きを済ませ二階の部屋へ案内された。野沢温泉中央ターミナルという巨大有料駐車場の真横、そして観光案内所の真向かいのベストポジション。

 
 民宿という扱いだが割と大型で、ホテルや旅館の様相だ。
部屋も非常に綺麗な和室で、浴室には硫黄臭漂う白濁の「十王堂源泉」がかけ流しで引湯されていた。

 館内を一通りチェックし、部屋に戻り「しんこ餅」と松之山で採水した天然水を補給。この時の時刻、『13時』。


 恐ろしい・・・


 自分でプランニングしていたとは言え、ここまで完璧にアジャストされた行程は、今まであっただろうか。そして、これを上回る旅程を組める人間は、他にいるだろうか、、、(笑)


 完璧な湯に入り、安価で地産地消の満足度の高い昼食を喰らい、13時には両手が空いた。

 ルームキーと小銭入れをポケットに入れ、タオルを肩に掛け、湯巡りスタイルで野沢の共同浴場街へと消えていく。


 あとは好きなだけ無料かけ流しの湯に浸かり、食べたいものを食べる。じゃらんで溜まったポイント利用で、宿に落とすのは入湯税の150円だけだーーー

事実を事実のまま完全に再現することは、いかに面白おかしい架空の物語を生みだすよりも、はるかに困難である
                     アーネスト・ヘミングウェイ

 
 ここまでの旅程、一切脚色のない事実である。

 かつて週末の旅行と言えば、出来合いの料理を喰らい、消毒液が撹拌された湯に入り「温泉に入った」と満足していた。
 
 忙しない行程で、交通費込で3万近くを投金する。家に戻るころには出発前より疲労困憊。今となっては目を覆いたくなる愚行(※あくまで私見です)。

 
 さあ、野沢のファーストダイブは「麻釜湯」。勿論、無料である。


                          令和3年11月25日                            

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