将来の夢【小説家】
私が【小説家】という将来の夢を抱いたのは小学校5年生の時でした。
国語の時間、理科の担任教師から出されたお題は『成人式の必要性の有無について』。
ざっくりとした概要を作り、下書きを書き、清書をする…という内容でした。今思えば、内容はさほど重要ではなかったのだと思います。物事の計画性とか、順番とか、そんなものを教えたかったのかもしれません。
私は当時、国語は好きでも嫌いでもありませんでした。他の科目に比べれば好き、くらいだったと思います。算数は苦手・社会は分からない・理科は面白くない…消去法で、国語が好きな子供でした。
それでも、一応好きなものだからと頑張って授業に臨みました。子供は授業を受け、勉強をするものだから、という思い込みもあったと思います。
私が先生に出したプロットは『成人式は必要ない』という旨でした。
私は女の子らしくない女の子でした。振袖に憧れはなく、ただ皆で集まってワイワイして、税金の無駄とか書いたのでしょう。意味がない・意味が分からないとでも書いたのでしょう。担任教師は私が書いたプロットをあからさまに嫌悪していました。とても、嫌な顔をしていました。
「もう時間ないから、内容変えて清書して」
そう、言われたのを三十過ぎても覚えています。
屈辱でした。腹立たしかったです。頭にきたのをよくよく覚えています。
当時の授業は45分、その大半を一つのプロットに費やしました。それが一瞬で、台無しにされました。本当にムカついた。その担任教師をキライになりました。時間がない?嗚呼、そうか。そうですか。
「(見てろよ、このヤロウ)」
私は残りの時間で、もしくは少しオーバーしたかもしれません。
プロットとは真反対の、『成人式とは絶対的に必要である』という旨の内容で清書しました。腹が立ちすぎて、目にもの見せてやりたくて。鼻を明かしたくて、数枚の原稿用紙に自分の全てを費やしました。書き上がり、担任教師に見せてやれば
「すごいじゃないか!」
と、大絶賛でした。あの、私を扱き下ろした男が手放しで私を褒めるのです。
「(ざまぁみろ!)」
充足感に満ちた私は、家に帰って母親にその作文を見せました。母もよく褒めてくれて、経緯を説明すれば苦く笑いながらも
「きっと文章を書く才能がある」
と、言ってくれました。
その日から私の将来の夢は【小説家】となりました。
子供というのは単純で、褒められればその気になります。私はその日から国語が好きになったし、小説も、漫画も、ゲームも
"物語"が好きになりました。
【小説家】として、文章を書いて生きていく。その為の才能もある。
だから、私の将来の夢は【小説家】でした。
卒業アルバムにもそう書かれています
将来の夢【小説家】
と。
・・・
夢が頓挫したのは18歳の時です。
奨学金という名の借金を背負いました。総額は約130万円。期間は約13年間。
大人からみれば大した金額と期間ではないでしょう。一年で10万です。
毎月、1万円ずつ貯めれば良いだけです。何てことない話です。
18歳の私には、死ぬほど辛かった
同年代の子は、無条件で大学・短大・専門学校に行く権利があります。
両親がいて、もしくは私と同じように奨学金を借りてでも叶えたい夢があるから。
私には、そんな選択肢は最初からなかった
両親が離婚し、母は兄の学費を返済中。生活費もある。
そんな兄は働いても家に給料を入れるのを早々に飽き、自分勝手に遊んでいた。
「(私の分は私が何とかしなきゃ)」
脅迫概念にも近かった。私が私の借金を返済しないと母は死んでしまうかもしれない。
働こう、毎日。お金を稼がなきゃ。
学歴はないけど、働き口はある。
資格はないけど、それなりに仕事はある。
もし、本当にどうにもならなかったら
もし…本当に、どうしようもなくなったら
「(死んじゃえば、一人分の生活費が浮く)」
嗚呼、でも。
私が死んじゃったら私の借金はお母さんが返すのかな?
私が死んだらお兄ちゃんは家にお金を入れてくれるかな?
別れたお父さんは葬儀代くらいは用意してくれるかな?一応、実の娘だし
私が、私は、私に
「将来って、あるのかなぁ…?」
途方も無い、現実でした。
・・・
そして、今日。どうにか生きています。
そして、今日。【小説家】として生きたいと発起しました。
筆名は【クロモジ屋/黒文字屋】。
何が出来るかはまだ分かりません。
何をしたいかもまだ分かりません。
ただ、文章を書きたい。文章を書いて生活したい。
今は昔と違って、【小説家】以外にも文章を書く仕事があるのを知っています。
なんでも良いんです。何かを書いて、生きてみたい。
支援希望金額は130万円。
私のかつての借金と同じ額…なんですが。上限は100万で、しかも何の見通しも立ってない人間にそんな大金は難しいと思います。なので、お気持ちで構いません。この文章群で私の才能が見出されたら嬉しい。
活動期間は筆が止まるその時まで。書けなくなるその時まで、書き続けたいです。
やっと人心地つけた三十代をエンジョイしたい。
借金返済に追われた二十代を取り戻したい。
嗚呼、でも。やっぱり
小学5年生だった私の夢を叶えたいな。