Aki Tohara

幼いころから川沿いを歩くことが日課です。いまは歩いているのは、主に野川。歩きながら考え…

Aki Tohara

幼いころから川沿いを歩くことが日課です。いまは歩いているのは、主に野川。歩きながら考えたこと/読んだもの・観たもののことを、マイペースに綴ります。

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  • 記憶に残る人・愉快な人

最近の記事

スーパーの改装工事。あるいは、変わってくれた安心。

半年ほど前のこと。家から徒歩3分のスーパーの灯りが消えた。リニューアルオープンの改装のため、2週間休業するという。 バス停の前にある、ほどよい大きさのそのスーパーは、住宅街の中で最もにぎわいのある場所の一つ。コロナ禍の到来と共に在宅ワークに切り替わった私にとっては、もっとも多くの人と出会う空間になっている。だからなのか、人の気配が消えたスーパーは、せめてもの体力維持のために日課にしている散歩の度に、どことなく寂しいというか、人恋しいというか、大袈裟にいえば俄に孤独を感じる場

    • 踊る英語教師

      今日は全国共通テストの試験日だ、とニュースが伝えている。緊急事態宣言下の受験生とご家族の緊張に満ちた日々が報われることを、ただただ願う。私が大学を受験してから、もう15年以上経つ。受験に臨んだ日のことはもう殆ど思い出せないのに、試験会場で起きたとある出来事だけはあれから度々思い出す。 私は当時はまだ珍しかった単位制の高校に通っていて、そこには生徒の考えや個性を尊重し、自身の個性も溢れ出ている先生たちが多く居た。勉強と同じくらい、先生たちが好きなものについても沢山教わった。そ

      • 目立ちたがりのサンタクロース

        私はイベント事で盛り上がるのが苦手なのに、クリスマスだけは人一倍楽しんでいる自覚がある。アメリカで生活をしていたことのある両親が、クリスマスシーズンを大切にしていた影響だろう。秋冬の海外出張のお土産はツリーに飾るオーナメントが定番だったし、「クリスマスは家族で過ごすもの」という考えで、お正月に次ぐ一大イベントとなっていた。 我が家のサンタクロースは目立ちたがりだった。絵本によればサンタは子どもが寝静まってからに現れるはずなのに、我が家のサンタは子どもが起きている時間に堂々と

        • ガラスの鍋と地下工事

          春に始まった外食を控える日々は、秋になっても終わる気配がない。洋服やアクセサリーを買いたい気持ちは全く湧いて来ず、その代わりにこれまであまりこだわりの無かった食器に変化が欲しくなり、オンライン陶器市を楽しんでいる自分に少し驚いている。そのうえ、食器を調べている時に写真を見たガラスの鍋が異様に素敵に思えてしまい、つい買ってしまった。この鍋はご飯も炊けて、しかも水分の蒸発具合が目視できるため失敗がないという。鍋で炊いたご飯は美味しいと色々な人に言われても、自分でやりたいという気持

        スーパーの改装工事。あるいは、変わってくれた安心。

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        • 記憶に残る人・愉快な人
          2本

        記事

          朝を味わう

          モーニングが好きだ。朝起きてほとんど動いていない頭と、波立つ前の穏やかな心に珈琲の香りや店内に流れる音楽が染み渡る。ランチやディナーは家でも食べるものだけれど、自分でどんなにお洒落な朝食を作っても、それをモーニングと呼ぶ気にはなれない。起き抜けに誰かが作ってくれて、そのあと食器洗いをする必要もなくて、いつもの朝食とは少し違う味がする。それがモーニングだから。一人旅や出張で、喫茶店にモーニングを食べに行くのは至福の時。ごくたまに家族や友人と共にするモーニングは、忘れ難い思い出に

          朝を味わう

          揺れる空気が見たい

          2020年8月、自粛を続けていた舞台の観劇を再開した。これまで足を運んだどの公演も、新型コロナウイルスの感染拡大防止対策を行なっている。定員は50%以下のものがほとんど。入場口での検温や密を防ぐ為の分散退場などに従いながら、いまが非日常であることを再認識せずにはいられない。 まず観たのは、子どもとアーティストが創る舞台「パフォーマンス・キッズ・トーキョー」、振付家・ダンサーの安藤洋子さんが子どもたちと共に創った作品の発表会を観せて頂けることになった。 舞台上に子どもたちが

          揺れる空気が見たい

          ささやかな旅

          6月から、仕事での外出は少しずつ再開した。自宅でできる仕事の日は外出を控えているので、電車に乗るのは週に2日程。私はその日を心待ちにしている。電車に乗った日は、不思議なことにアイデアがいろいろと思いつくから。仕事の解決策から、なんとなく気になっていた家の片付けについての妙案まで、電車の中で「あ、そっか。やってみよう。」と思う瞬間が幾度となくやってくる。他の場所では、その瞬間が訪れることはほとんどない。 思い返せば、子供の頃から電車に乗るのが好きだった。それが何故かなんて、考

          ささやかな旅

          Home and Away -オンライン講義とオンラインヨガ

          5月中旬、私が非常勤講師を勤める大学でもオンライン講義が始まった。朝からソワソワ、落ち着かない。学生のプライバシーを守るため、自宅に居る学生の顔を見ることができない半年が始まる。講義開始30前、パソコンと顔色が悪い講師だと思われたくなくて買ってしまったライトをセットし始める。20分前、セッティング完了。気持ちを落ち着かせる為に、好きな音楽を流す。10分前、google clasroomに講義の進め方を投稿し、google meetに学生が集まったら自己紹介から講義を始める。初

          Home and Away -オンライン講義とオンラインヨガ

          言葉を尽くす時代          『仕事本 わたしたちの緊急事態日記』

          twitterのタイムラインに流れてきた書名をみて、すぐに購入した本がある。『仕事本 わたしたちの緊急事態日記』。本を開くと、執筆者の多様さに圧倒される。スーパーの店員、ごみ清掃員、タクシー運転手、介護士、馬の調教師、ミュージシャン、演出家、旅行会社社員、葬儀社スタッフ、専業主婦、留学生…。77人の執筆者それぞれが、予想もしなかった社会の変化と自分自身の仕事や心に向き合う記録を残すべく、丁寧に言葉を探す息づかいが聞こえてくるかのような本だ。きっと誰しも、自分がこれまでの人生で

          言葉を尽くす時代          『仕事本 わたしたちの緊急事態日記』

          潜って、上がって、微調整

          2020年4月、突然リモートワークで働くことになった。これまでも事務所に戻るよりも効率がよければ外出先や自宅で仕事をしていた。だからすぐに対応できるつもりだったのに、想像以上に戸惑っている自分が居た。家の中でパソコン越しの議論と報道のチェックを繰り返す日々に、どう向き合ったら良いのかわからないまま一日が終わっていく。 どうにかならないものかと、仕事を始める前に家の側を流れる野川を歩くことにした。ちょうど冬眠から目覚めた亀が、甲羅干しを始めるころ。万年も生きると言われる亀を見

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