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揺れる空気が見たい

2020年8月、自粛を続けていた舞台の観劇を再開した。これまで足を運んだどの公演も、新型コロナウイルスの感染拡大防止対策を行なっている。定員は50%以下のものがほとんど。入場口での検温や密を防ぐ為の分散退場などに従いながら、いまが非日常であることを再認識せずにはいられない。

まず観たのは、子どもとアーティストが創る舞台「パフォーマンス・キッズ・トーキョー」、振付家・ダンサーの安藤洋子さんが子どもたちと共に創った作品の発表会を観せて頂けることになった。

舞台上に子どもたちが登場し、踊り出す。リズムに乗ってカウントを刻むようなダンスではなく、音や空間をと向き合い、自分自身の身体から生み出される表現を探すようなダンス。彼らの集中した表情や身体の動きを見つめるだけで、はっとしたり、うっとりしたり。誰もがこんなにしなやかで美しくて、力強い瞬間があるのだとしたら、私自身が未だ知らない自分の一面というのもあるのだろうか。

終盤、安藤洋子さんがひとり、客席に背を向けて舞台奥へと歩いて行く。蝉の声がかすかに聞こえるだけで、舞台上には何もない。それなのに、彼女の歩く空間には夏の夕方の風が吹いた様に見えた。観客席でひとり、私は妙に納得してしまった。そうか、私がパフォーマンスを生で観たい理由は、揺れる空気が見たいからなんだ、と。もしくは空気を揺らす人を見たいんだ。

コロナ禍に、舞台やライブが沢山映像で配信されている。私もそれらを観て、楽しんでいる。それでも、空気の揺れだけは映像では見えにくい。揺れる空気が、人の心を動かすのかも。やっぱり私は、揺れる空気を見たい。

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