Home and Away -オンライン講義とオンラインヨガ
5月中旬、私が非常勤講師を勤める大学でもオンライン講義が始まった。朝からソワソワ、落ち着かない。学生のプライバシーを守るため、自宅に居る学生の顔を見ることができない半年が始まる。講義開始30前、パソコンと顔色が悪い講師だと思われたくなくて買ってしまったライトをセットし始める。20分前、セッティング完了。気持ちを落ち着かせる為に、好きな音楽を流す。10分前、google clasroomに講義の進め方を投稿し、google meetに学生が集まったら自己紹介から講義を始める。初回の講義を終えた私は、youtuberやラジオパーソナリティの方々を心の底から尊敬した。自分の話を聞いている人たちの表情や佇まいを感じられないことが、こんなにも不安で孤独なものだとは。まして私が受け持つ講義は学生が議論や実践を通して学ぶ「実習」である。失われた環境の大きさに呆然としながら、オンラインならではのコミュニケーション方法を、改めて計画し直すことにした。
ところが、試行錯誤のオンライン講義も2ヶ月程が過ぎた頃から、ふとオンライン講義も悪く無いと思う自分が居た。学生たちがこの状況下でもモチベーション高く取り組んでいるのが伝わってきた安心感と、オンラインシステムを効率よく使うと案外教室よりもうまくいく取り組みもあると実感したできたことは大きい。ただ、心境の変化をもたらした一番大きな要因は、大学という場所が自分にとってはawayであったことかもしれない。アカデミックな世界とは無縁の私が、非常勤講師になって3年目。週に一度、2時間だけ滞在する校舎内で今だに迷ったり、大学ならではの制度に戸惑うことも多い。大学に行く日はいつも緊張感があり、どこかで大学にいる自分を演じているような気もする。一方で、家はやはりhome。ソワソワしながらも自分の好きなマグカップでコーヒーを飲んで、こつこつ育てた植物を眺めながら講義をしていると、去年までよりも自然体に学生に言葉を投げかけているような気がしている。
awayと言えば、独身時代に毎週通ったヨガスタジオを思い出す。先生達の人柄もヨガをした後の爽快感も大好きなのに、そこにいる自分がこそばゆい様な感覚をずっと抱いていた。結婚を機に引越をして、ヨガには通わなくなっていたけれど、外出自粛中の運動不足解消のためにオンラインヨガを始めた。おしゃれな空間にいる先生をパソコン越しに見ながら、家で習うヨガはスタジオで習うヨガよりもずっと気楽で、ヨガではないような気さえした。私にとってヨガは、おしゃれなスタジオでヨガウェアがとても似合う先生や生徒さんがいる空間で行なう非日常の体験だったということだろうか。homeのヨガは長続きしそうで有り難い。でも、画面に映るawayのヨガも懐かしい。
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