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ささやかな旅

6月から、仕事での外出は少しずつ再開した。自宅でできる仕事の日は外出を控えているので、電車に乗るのは週に2日程。私はその日を心待ちにしている。電車に乗った日は、不思議なことにアイデアがいろいろと思いつくから。仕事の解決策から、なんとなく気になっていた家の片付けについての妙案まで、電車の中で「あ、そっか。やってみよう。」と思う瞬間が幾度となくやってくる。他の場所では、その瞬間が訪れることはほとんどない。

思い返せば、子供の頃から電車に乗るのが好きだった。それが何故かなんて、考えたこともなかったけれど。両親や姉は圧倒的に車派で、家族での外出はいつも車。他人に侵されることのない、心地良い空間は子供を持つ親にとって他には代え難いものであることを、今なら理解できる。でも幼い私は、後部座席からの景色がとても退屈に感じた。それに高速道路を走る車は、なんだか早すぎて大人になった今でもやや緊張してしまう。(飛行機に至っては、言うまでもなく苦手である。)

まさに”個人的な感覚”としか言いようが無いのだけれど、私にとっては電車の揺れや車窓からの風景が、日常と非日常の間をたゆたうスイッチを押すような気がする。日常と非日常を行きつ戻りつしているうちに、心や頭がリフレッシュするのかもしれない。新幹線や寝台列車に乗って、遠くへ旅をする時間が持てるのは、いつになるだろうか。その日が来るまで、週に2日・片道1時間の旅を味わい尽くして過ごそう。どうか、このささやかな旅すら叶わなくなる局面が再び来ませんように。

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