【コラム】第三回 夢での怪異について
就寝中に夢に現れる怪異について、それを「夢落ち」とするのか立派な怪奇現象とするのか議論が二分されることがある。本稿の執筆をしている最中、You Tubeチャンネル「オカルトエンタメ大学」さんで響洋平氏が講師として「夢と怪談について」考察された動画がアップロードされた(【警告】興味本位でやると本当に危険。夢を日記に書くな!その怖さを響洋平先生が教えます。 - YouTube)。まさにタイムリーなテーマであり御縁を感じる。そこで、温めていた記事を投稿する。
なお、響氏は、「Channel恐怖」で自身がホストを務める番組『DJ響の怪談に酔いしれる夜 第21回』内でも、ゲストの高田公太氏と夢での怪談について語り合っている。全編の視聴は有料ではあるが、ニコニコ動画やYou Tubeなどで視聴可能なので、ご興味のある方は是非、ご覧になっては如何だろうか。
まず私の結論としては、「夢の中で起きた出来事が、就寝前後の現実の生活に密接に関わることがあれば怪異と見なす」である。
例えとして、よくありがちな怪異を挙げて考えてみよう。
①Aさんには入院中の祖父がいる。ある日、夜中に夢で祖父が自分の部屋に現れ、別れの挨拶をした。
さっぱり意味がわからなかったが、目を覚まして昨夜の夢を思い返してみると、どうも胸騒ぎがする。すると、部屋の電話が鳴り、母親から祖父が夜中に亡くなったとの知らせを受けた。
このような類の話は怖いという印象は薄いが、予知夢とは違い現実と夢の怪異が同時間帯に起きており、怪異や怪談に含めてよいと言える。
では、もう少し「怖さ」を取り入れてみた例の話はどうだろうか。考えてみたい。
②Bさんは近頃、夢に現れるワンピースを着た見知らぬ少女に悩まされている。彼女は何を仕掛けるわけでもないが、ただ夢の中のあらゆるシチュエーションで出現してはこちらを鋭い目つきで見つめてくる。
心当たりはないだろうかと、この一週間に起きた出来事を振り返ってみたBさんは、通勤中にとある交差点で交通事故現場に花束が手向けられている光景を目にした。そこで一言、
(そんなことしたって意味ないのにな)
ふと、バスの車窓から見つめてそう思ってしまった。
それ以来である。少女が夢に入り込んできたのは・・・。
Bさんはそれから仕事での失敗が続き、やりきれない日々を過ごしていた。そこで、神社にお参りに行き、自身の不意の一言を詫びてみた。すると夢に少女は現れなくなった。
こちらは夢での怪異に現実の世界が時間軸の前後で影響しているパターンである。この種の怪異の悩ましいところは、実生活にも霊障が発生していること、そして何らかのケジメや区切りとなる行為を取らなければ夢での怪異から解放されないという点である。
このような展開になると、現実でもいよいよ少女の怪異が表出するのではないかと日々、怯えて不安を抱き始めることも想定されるので、まさに「ただの夢落ち」と侮れない立派な怪談、怪異である。
夢について掘り下げると、次に考えなくてはならないのが、夢か現か曖昧なパターンである。
③ 就寝中にふと目が覚めると、暗闇に包まれた部屋の片隅に人影が見えた。身体は金縛りで動かない。誰かはわからないが黒い輪郭がベッドに近付いてくる。そして奴は首を絞めてきたが本人はそこで気を失ったが、次に目が覚めると朝になっていた。
このような怪異は、まず体験者が夢という自覚を持っているのか、「いや、あれは現実だった」と自信をもって言えるのか、個人の判断に一任される。そこで、例えば首に手で絞められた痕が残っていたなどの証拠が確認できれば、現実の可能性は高くなる。
しかし、何の痕跡もなく、その怪異が起きた前後に現実での生活への影響が見られない場合は、「ただの夢でした」で片付けて良い。そうでなければ、全ての夢を怪談と見做さなければならなくなる。それこそ現実的でない。
怪談を蒐集していると、気が付くことはいくつもある。短い話を含めても、私のレパートリーはまだまだ僅かではあるが、それでも自分の許に集まってくる話の傾向があることに気付く。これは人によって違うのだろう。だがそれがまた引き寄せる何かがあるようで面白い。蒐集家の皆さんはどうだろうか。何故か私の許には、今回のテーマである夢が絡む怪異が集まってくる。またいずれ、お話しする機会があるだろう。そのときまで、お楽しみに。
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