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プリン化する豆腐と在来種のこれから〜ねごやファームインタビュー3/3〜

津久井在来の今後

加工品の話

――厚木でも津久井在来を作っているのですね。

◆そう、県内にある在来はもう津久井しかないから、神奈川県ではいつの間にか奨励品種みたいになっちゃったんだ。やっぱり当時から地大豆ってのが脚光を浴びてきてた。だから、全員それに乗っかかっちゃった。生産性上がんないよね。だからね、他の大豆作ろうなんていう人は誰もいねえよ。他の地域でもな。

――津久井在来が使われてる豆腐だったり味噌だったりってそこまで多くないのですか。

◆多くない。味噌もそんなに出回ってない。だからそういうのはないんだよ、大豆がないから。一通りはあるよ、豆腐、納豆も。川崎の業者がやってる納豆があって、豆腐はだから逗子と厚木の三橋さんな。この2人が混ぜ物なしでできるんで、他の人たちは混ぜないとできないんだよ。固まんないんだよ。だから、この2人は100パーのができるんだ。

――食べてみたい、美味しそう。じゃあ、大豆自体も多くないし、加工品もそんなに多く出回ってない。

◆そう、うん。

――お味噌とか豆乳だとか、ちょっと変わった方向に寄せていかなくちゃいけない。全体の方向性としては。

◆商品とかね、商売っていうことになっていくと、そっちの方向に行くんだろうなとは思う。

――あと、豆乳とか豆腐の方が豆の味がそのまま出ますね。甘みが強い。

◆そうらしいじゃん。それで今人気あるらしいじゃん。

これからの津久井在来

――今後津久井在来がはどういう位置になってほしいですか。

◆うーん…もっと加工品ができて。豆乳だとか、そういうのが出てきて。豆乳、豆腐だろうなあ、その辺じゃないのかな。

これからやってくのに、今は味噌っていうと、ちょっと地味だよね。やっぱり味噌汁になるじゃん。一手間かけなきゃならないから。それも普及しなきゃいけないんだけど、味噌汁を毎朝のめるような食生活ってのもやってかなきゃいけないじゃん。

それを進めるために小学校でやってるのが、学校で子供自身が味噌仕込みして、それを家庭に持たせる。2キロの味噌を子供自身が仕込んでいくわけ。それをもう家庭に持ってって、熟成させるのは家庭の仕事ってして。そうすると、家庭の中にも味噌に対する愛着が生まれてくんじゃん。子供は作ったもんな。

そこは狙いでやってるんで、そうやって普及していければなっていう風には思って。

今後について、まとめ

畑の拡大、最後の仕事

――今後は畑を拡大して、沢山大豆などを作っていきたいという方向性ですか。

◆今後ね。今この地域、農業の基盤整備の事業を市がやろうとしてる。その動きで、どういう風にうちの取り組み方をしていくかってことが1番の課題になると思います。で、おそらく大豆である。面積を持ってかないといけないと思うんで、当初大豆に狙いをつけて。どういうふうに展開していくかっていうことを考えていきたい。

10年かかる事業なので、出来上がった時にはもうできるような状態に持っていかなきゃなんない。で、その推移と同時並行的にどういうふうに形を作っていくかっていうことを考えなきゃいけないと思うんで。まあおそらく私の最後の仕事になると思うんで、私、生きてるうちにできりゃいいなとか言ってんだけど。

――それが最終的な目標。

◆そうだね。それがうまくできたら、私のやったことが残っていくんだろうな。

自分で言うのもおかしいけど、ここまで大豆を中心でやってきて、いろんな人から褒められるわけ。そういうこともあるし、やってきたこの経験とか人の繋がりっていうのは、農業基盤整備に生かしていかなきゃならないことだろうと思うんだ。

ここまでいろんなことができるとは思わなかったので、自分も、いい歳に巡って、いい人に巡ったっていうことがやっぱり1番大きかったのかもしれない。始めたのが53歳ぐらいだよ。

――その頃に大豆を始めて。

◆それまで鳥専門でやってて、それから野菜と大豆始めて。で、その頃はこの地域は全然違ったからね。人から何やってんだみたいな目で見られたし、年寄りがまた上にいてうるせえこと言われたし、ええ。

――みんなやっていなかったけれど、でも在来種としてはあった。

◆あったんだ。ある人がずっと作ってくれたのよ。その人が余ったものを100キロとか200キロ農協に出して、それをみんなが買って、味噌を作ってたらしいんだ。で、それも最後、私が手に入れた頃は農協にこれしかないなんて言われるくらいだったのよ。種がやっと10キロ、20キロ手に入るくらいで。だからいいとき始めたんだわ。

値段を握る

◆私、こういう形態にするまでは生協納品だったのよ。生協にやってたの納品して持ってった。それである業者から「生協も限界だから」って言われて。で、「直売やった方がいいよ」と言われて。

――限界。

◆値段が頭打ち。小さいうちは値段とれんのよ。高い値段だったのよ。それがね。やっぱり生協が拡大していくとその価格じゃ買えない人が多くなってくるから、値を下げるわけ。そうすると、その分だけ裾野が広がるんだよ。それがね。グングングングン。早いんだ。この下がっていくペースが。こりゃやべえやと思ってさ。

初めの頃はちっちゃな業者がひっそりはやってたんだけど、それが大手が入ってくるようになって、大手と一緒に家業をしなきゃならなくなってきて、もうこれは終わりだなと思って身を引いたわけ。

――直売所に切り替えた。

◆そう。その頃は自動販売機でやってて結構売れるようになったんで、女房はそれで「店やってもいいよ」って言ってたから。じゃあ直売やってみようって。そしたらこれが、当時8000羽いたのよな、うん。満杯だった。だから直売で売れるだけの数に減らしていって、絞って、今の状態になってきて。

――では今は直売場と豆腐屋さんにおろしたりだけなのですか。

◆大豆はそうだね。さっき言ったように、ちょっと問屋が入ってきたりはしてるけど、体験して味噌にする。それだけで300キロ近く使っちゃうからね。それで他の人のがあるから300キロ使っちゃうんだよね。学校で1番多かった時が600キロ使ってるから、今年もおそらく600キロを超えると思うんだ。あとだから、とちぎやはもう400キロ、500キロ持ってくからね。なくなっちゃうんだよ。

まあまあ、私ね。そういう意味で色んな人に繋がってるから、営業は楽なんだよね。で、やっぱり考え方として、値段はこっちが決めるもの。そのためにはどういう風にするかっていうと、要するに川下までこっちが握ってくっていう。そういうことだろうと思う。

「はやまたのくろ」の話

栃木屋が始めたよ、高いけど

◆とちぎやがまた面白いこと始めたんだよ、私がそれもひっかけたんだけど。はやまたのくろってあんのよ。たのくろ大豆。それをね、やりたいっていう。一昨年から言ってきて、去年も作って、今年もうちで作ってんだよ。それをブランドにしたいって。

――それは地元にあった大豆ですか。

◆そう、葉山のね。だからはやまたのくろ。

葉山でね、枝豆で売ってるんだ。みんなそんな大した量じゃないけど、大豆にしてやるには、機械とかいろんなことがいろんなものがないとできないんだけど、枝豆だと今の時期、枝で売れちゃうじゃん。だから楽なんだよ。で、金になるしだ。

それはだから、とちぎやが見て、豆腐にしたいって。500円の豆腐だよ。500円で売ってるって。

――売れるんですか。

◆うん、1日20丁。限定して。そう言ってた。

1回豆乳を作って、3日に分けて作るんだって。大体1日20丁できるんだ。20丁にして3日でやっていくとうまく今んとこ売れるんだって。

――じゃあそのはやまたのくろがこれからくるかもしれない。津久井在来のように。

◆だから私は県内に2つ在来種を持ったら面白いなと思ってはじめて、たの黒もやってる。ほら、今までの津久井在来をやって色んなノウハウを持ってんじゃん。その後追いしていきゃいい。だから楽なんだよ。

――黒豆だとまた違ったアピールもできる。

◆そうそう、そうなんだよ。500円になったら、450円にあげれんじゃん。そうやって揃えていって、この辺でも450円、500円の豆腐ができれば。そうすると東京から来てもらえんじゃん。お客に高速使ってきてもらえんじゃん。そするとこの地域にそういう人が入り込んでくるわけじゃん。そういうものを買う人たちが。

――青梅でも実際に600円の豆腐で売れてますもんね。

◆そうよゆうさんな、このやろうと思ってさ(笑)

美味しい豆腐のあり方

――価値認める人は買うし、あんまり高いと思わない人たちは、美味しければ買う。

◆そう。だからそれに追っかけて味が乗ってけば、なおさらそれでもよくなってくるじゃん。

――200円以下のお豆腐とかとまた違った楽しみ方というか、評価を分けたら良いんですよね。

◆そうそうそう、だから、ほんとそういうふうに住み分けができてるわけじゃん。だから、頭を変えりゃいいだけのことで。それがみんなできないから噂をしてるだけなんだ。でも、商売ってそういうもんじゃん。

――成功例もたくさんあるわけだから、しっかりとやれば。

◆そうな、だから勇気だよ、そこに乗り出す。500円の豆腐を150円ぐらいの豆腐の脇に置けるかっていう。売れなかったらどうしようじゃなくて、売れなくて当たり前でおけるかってこと。

そういうふうになってくると、安い豆腐買った人もたまには高いのに手を出すこともあるじゃん。

今みんな安いの50円のを豆腐だと思って、味のないもんだと思ってるわけじゃん。で、それに味を乗せていった時に味に驚くわけじゃん。要するにプリンになってくるわけじゃん。豆腐でないわけだよ。プリンを食べるっていう感覚になってくるから、そこんとこの切り替えさし方っていうのがポイントだろうと思うんだ。

最後に

インタビューを通して、石井さんが何よりも「人との繋がり」を大切にしていることが分かりました。

津久井在来を盛り上げるだけではなく、体験型農業や小学校での講座を通して、石井さん自身が食べる人たちと繋がっていました。

簡単にできることではないですが、それも石井さんの津久井在来や地域への想いが原点にあるからこそできるのだと感じます。

石井さん、取材へのご協力ありがとうございました!

ねごやファームHP:http://www.negoyafarm.com/index.html

おまけ

石井さんがおっしゃっていた、とちぎやさんに先日行ってきました!

津久井在来とたのくろ豆の豆腐、しっかりいただいてきました!
どちらも甘くて、ほんのりしょっぱいお豆腐で、何もつけなくてもペロリと食べてしまうほどの美味しさ👏

取材した大豆で作られたお豆腐を食べることができて幸せでした!


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