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津久井在来の普及、地域とつながる体験農園〜ねごやファームインタビュー1/3〜

神奈川県相模原市の養鶏場ねごやファーム代表の石井好一さんのもとへ訪問し、お話を聞かせていただきました。

石井さんは3代続く養鶏場を経営する傍ら、津久井在来大豆の普及に努める「大豆の会」の代表を務めています。

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ねごやファーム3代目代表の石井好一さん。
飾らない雰囲気で、終始楽しく取材させていただきました。

「大豆の会」の体験農園についてや津久井在来についてはもちろん、大豆の現状や課題、今後の展望について興味深いお話を伺うことができました。

地域とつながる体験農園とは

冒頭でもご紹介したように、石井さんは養鶏場を経営する傍ら津久井在来大豆の普及に努める「大豆の会」の代表を務め、地域の小学校でも体験農園の活動をされています。
どのようなきっかけで地域の在来種に携わり、どのように地域の方と活動して普及に努めているのでしょうか。

津久井在来に携わったきっかけ

――ねごやファームは元々卵の農家さんと伺いましたが、津久井在来大豆を作り始めたきっかけはなんでしょうか。

◆20年前、この地域の農業が中山間地域ということもあって元気がなくなってきていた。これからどんなふうにしたらいいのかっていう方向がほんとにわかんなかったわけ。

そんなとこで、なんとかこれからの方向は見つからないか検討していたら、ある先輩から「津久井には大豆があるじゃないか」という風に言われて、「石井、大豆やってみろよ」というようなことを言われたんですよ。それがきっかけです。
そこに至るまで2年ぐらいちょっとかかりました。

――体験型の取り組みを始めたきっかけは。

◆当時大豆サミットなんてのが全国的にあちこちで始まって、イベント的に体験型の栽培、色んな農業体験を含めたものをやっていくような動きがあった時代だった。

きっとこれをやれば成功するなと思って。体験型の栽培を取り組んでいこうということをみんなに提案して始まったんです。

「大豆の会」を通しての普及活動

――では作り始めた時からずっと、お客さんと一緒に味噌作ってみたりという感じでしょうか。

◆そうそう、前の畑、今は道路が通っちゃったんだけど、そこで最初は4人で始めたんだけども、県の情報誌に載せたら応募は50人ぐらいあったのかな。1年目はそれで始めたんです。

で、もう2年目からは4人で1か所でやるとおそらく誰かめんどくさくなったりやめたりするから(笑)、4会場に分けて、参加者も4等分にして始めた。それが成功の1番の秘訣かもしれない。

――今も体験型で続けて、中心になって普及していこうと。

◆そうだね。うん。その4人のメンバーが体験型で、この津久井在来の普及の中核を担って。

――中心になっていると仰っていましたが、地域に普及しているという実感はどれくらいあるんですか。

◆地域の中では数量的には全然統計が出てないんだけど、当時に比べれば全く雲泥の差だよね。みんなの認知度が上がってるし…やっぱり大きいのは認知度だね。

地域小学校での取り組み

石井さんが「大豆の会」を始めたのは2000年。当初は小学校での活動はありませんでしたが、とある教員の声から地域小学校での取り組みが始まりました。

◆私のところにそこの根小屋小学校があって、そこから一緒にやらせてくださいっていう先生が来て、学校がその時取り組み始めた。それが良かったなと思っています。

その頃、ちょっといろんな人に聞いていて、新聞に載せてもらうのに子供の顔があるとよく取り上げてくれるっていうことを聞いたんで、これはしめたもんだと思って(笑)

もうその次の年ぐらいから新聞記事になったのかな。ちっちゃい記事だったけど、まあそんなふうにしてついこの前も出たりしてね。

石井さんが取り上げられた新聞記事。
小学生と種蒔きに励む石井さんの姿があります。

――小学校に委託するような形でしょうか。

◆今はね、種まきをやって、あとは栽培の方は学校に任せて。最後に味噌作りをするっていうやり方をしてます。

――小学校での活動も同じ頃から始めた。

◆小学校は2年目からもう始まってる。その当時、合併があって。こっちが旧津久井郡で、旧市と合併になって翌年ぐらいだよね。向こうの学校から、大豆やりたいからって先生が来てですぐに始めて。で、根小屋でもやってたから、同時に2つやっていた。

――根小屋以外の場所でもやっているんですね。

◆そうです。今だから、相模原の大体全域だよね。今年、種まきに行ったのが10校です。

――1人で全部回ったんですか。

◆そうだね。種まきは人手いらないから。みんなそんな大規模にやらなくてちょっとした畑とか花壇を広くしたところだから、まあ1人で行ける。

子供たちとの関わりを通して

――農業体験だけではなく、大豆について教えたりもするのですか。

◆それはそう、大体種を蒔く前に1時間話をして、あと1時間を種まきに。

――何年生ぐらいの子達に体験を。

◆3年中心。教科書でね、姿を変える大豆って単元があるのよ。

それと一緒に総合(科目)でやればいいなっていう、そういう狙い。始めた頃は、5年だとか、4年だとか、上が多かったのよ。それをだんだんその単元があるもんだから、3年生に揃ってきて。

――しっかりと通ってますね。大豆を学んで体験する。

◆そう。学校ではじめてすぐに、もう総合が始まったね。総合の取り組みの中に入ってるから、調べ学習が入っちゃう。子供たちに調べてもらって、作ってっていう。そういうことになるから、子供たちの認知度かな、関心てのがすごく高くなるじゃん。

姿を変える大豆、私の小学生の時国語で習いました。地域の小学生の間で石井さんの人気はとても高く、サインを求められることもあるそうです。教科書にサインを求められ、ノートか紙じゃないとダメだろうと返したというエピソードも。

体験型のまとめ

――ここで大豆を育てている方はどれくらいいらっしゃるんですか。

◆大豆は体験で参加してんのがうちで40人ぐらいかな。あと他のメンバー入れると年間で120とか130とか言ってたな、その4人で。

――仕組みはどのようなかたちですか。参加者さんがお金払って一緒に場所を買うみたいな。

◆違う違う、作業すんの。種まきから収穫まで全部携わってもらうやり方して。私だけで作業するってことはしないっていう流儀でやってきてるから。

――すごい。それって大変じゃないですか。

◆大変っていうか、皆さん来てくれるからな。大勢いれば仕事が楽じゃん。

うちの場合にはこの時期、土曜日が作業日になってる。で、最初の日は大体メンバー出てくるんだけど、その後はね。半分とか3分の1ぐらいなんだよ。それでも、人数多いからいいわけ。

他の会場の場合はみんな日にちを決めて、何の作業日っていうふうにしちゃうからちょっと大変らしいんだけど、うちの場合はそれぞれの人の都合で出てきてくださいっていうやり方してる。だから今面積が大体120aだけど、それを全部メンバーと一緒にできてる。

――そこで収穫したものは味噌にして返す。

◆そう最後に。だから会費が8000円で、体験をして最後に仕込み味噌10キロをお返して、それだけです。収穫物は私の方で販売しています。

――小学校でやっていることと、こちらでやっていることが全く違う流れということですね。小学校では種を蒔いて学校に任せて、こちらでは全て一緒にやって。

◆そう、あとちょっと広いところは機械持ってって、収穫の手伝いをすることもある。味噌はどちらもうちの大豆を持っていってやります。

支えてくれる参加者さんの存在

――今、野菜と卵と大豆を育ててということですよね。すごく大変で忙しそうだなと。

◆忙しいよめちゃくちゃ(笑)

人は沢山はいなくて、畑の方は息子と2人で。お店は女房とあとパートさん入れて、養鶏所の方は回してます。息子は2,3日かな、パートを使うようになったけど、大豆は体験の人たちでやるっていうことだから。

ねごやファームの卵。食の安産を考えた安心・安全な卵が提供されている。

だから、大豆については私は土曜日だけしか時間かけないっていうふうにその当時から考えていて。そうしないと他の仕事が動かなくなっちゃうから。

大豆の参加者の中から手伝ってくれる人が出てくるんですよ。初めの頃野菜を一緒にやりたいっていう人たちがでてきて、その人達に手伝ってもらってたんです。息子はまだいなかったから、私1人で動かしてる時にそういう人たちが出てきて結構手助けになってきた。

――お客様とも一緒に作っていくみたいな。他のお客様との関係も近いのですか。大豆とかに来てくれる方も、親近感があるというか。

◆まあそうだね。いいことに今みんな1つのことを一緒に作業してるから、そこでいろんな話をして親しくなって繋がっていく。ただ、よそ行って何かをしようとか、そういうことをする人たちじゃないんだよね。

やっぱり意識が違う。体験に参加するには8000円っていう高い値段を払わないといけない。ってことは、それだけの価値を認めてないと、意味を自分の中で作っていかないと続かないじゃん。

今9割方はもうリピーターだから、ほとんど私はそんなに言わなくても自然と動いてっちゃう

取材に伺ったのは土曜日で、その日も作業日だったようです。参加者の方は自主的に動いてくれるので、「今日はお互い来て幸せだから、石井さんは現場にいればいいから」という考えなのだそう。
こうして関心の高い方が増え、地域の在来種が普及していくのですね。

ねごやファームHP:http://www.negoyafarm.com/index.html


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