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自主研修の1週間

昨年の12月末に降り立ったフランスにて、1月半ば無事にひとまずの仕事が決まりました。服の販売です。日韓英で接客できる人を探してたとのことで、幸運でした。

「じゃあ、月曜日から2週間トレーニングね!」と言われ、早速3日後に配属された研修先はパリにある百貨店のメンズ館。

初日にフロアマネージャーに挨拶したら

「フランス語できないの?!無理よ!何かの間違いだわ!」

おう……。私もそう思いたい。

「はあぁぁ……でもしょうがないから、ひとまず1週間ね」

しょうがないのか!


初日以外は終日一人で店番とのことでした。「こんなのちっとも研修じゃないぜ……!」と心で100回くらい唱えたけど、挑戦し甲斐もあり、同じフロアの他ブランドの人たちも優しくて

なんとか1週間終えました。

結果、楽しかったです。


フランス語の壁の向き合い方

お客さんは60%くらいフランス人、他はアジア圏(韓国、日本、台湾、インドネシア……)、ヨーロッパの国々の人という感じでした。地元の人は、みんな当然ですがフランス語で話しかけます。

最初は「すみません、フランス語があまり話せないんです」と断り、謝っていたのだけど

・これはホスピタリティか?(自分の防御のためだよね?)
・話せないけど百貨店で働くことになったのは、私のせいではない。人事のミスだ。←ちょっと日本人マインド破れた

そう思ってから、話せないと伝えるのは最小限にしようと途中から切り替えました。できないものはしょうがないので、自分なりの最善を尽くす。

ー"petit(小さい)" "grand(大きい)"とか"blanc(白)" "noir(黒)"など色やサイズを相手から聞き取り、予測して品物を出す(賭ける)
ー「C'est combien ?(いくら?)」と言われたらプライスを見せて伝える
ー「Où est lacoste?(ラコステはどこ?)」と聞かれたらマップを見ながら一緒に探す
ー相手がフランス語で話し続けたら、他の店から人を引っ張って聞いてもらう

フランス語を聞き取る努力をすると、大方の人は理解してくれて「問題ないよ、英語でいいよ」と気持ちよく切り替えてくれて、これは私のフランスのイメージと違い(英語がわかってもフランス語を貫くイメージがありました)本当に感謝しました。

今回はパリだったから、というのは大きいと思いますが。そういう温かさに触れるたびに、やっぱり言葉は頑張らなきゃともあらためて思いました。


助けを求める練習

百貨店のシステム上、勤務1ヶ月未満だとレジを操作できないらしく、物理的に「常に」誰かに会計を手伝ってもらう必要がありました。

日本人のサガなのか、たんに私の性格なのか、昔から人に助けを求めることが苦手な私は、語学以外のこんな面で少し苦痛だった。

でもこれも途中からふっきれて

「逆の立場だったら助けたいと思うよな」
「慣れた仕事場で時には人を手伝うのも悪くないよね」

と、誰目線かわからない考え方で説得して、とことん助けてもらいました。


"Merci pour votre support." 
(サポートしていただいて、ありがとうございます)

これしか言えないけど、これを一日の終わりに、フロアの人たちに伝えて回って家の帰っていました。


異国で働くこと

結局2週目からは本勤務の実店舗で働くことになったので、わずか1週間でしたが、百貨店で働くいろんな人たちに出会えました。観光客相手の商売でもあるから、フランス語+1〜2ヶ国語話せる移民系の人も多かった。

勤務初日に「あなた、フランス語できないのぉ!」と明るく声かけてくれたのはペルー人のお姉さんっぽい男性は、フランスに来て9年くらいとのことでした。

「最初は語学が必要ないレストランの裏方で働いていたけど、だいっキライだったの!大変だし。だから、働きながら夜間の市営の語学学校に通って、フランス語を学んでいたわ」

と通っていた夜間のフランス語学校をポストイットに書いて教えてくれた。

「デパートでの仕事も、最初はあなたみたいに(ちょっと一瞬考える)…いや、もう少し話せたけど、それでもまったくだったの。それが今では!」

今では、私がトイレや休憩室に行く道すがら、彼(彼女)は至るフロアで友達と立ち話をしていました。

暇そう(でも、言葉はすごい努力したんだなあ)

と、賑やかな人柄の後ろに隠れた、必死に生きた時間が垣間見れて勇気をもらいました。


もう一人はシンガポールから来たという女性。在仏15年、三人の娘ありのシングルマザー。16年前にアジア旅行中に知り合ったフランス人と恋に落ちて、フランスに来たのが始まりだという。

とっても気さくでフランス語も堪能で、すっごい変なメタル製のシャツをお客さんに頑張って売り込んでいた。

「あなたどう思う?素敵でしょ?!」

と試着したお客さんへの意見を突然求められた時は、あまりにも変な服だったので「魅力的です」とよくわからない言葉を添えてしまった。


ある日一緒に昼食を食べて、彼女のことをもう少し聞くことができた。

「フランスで私は外国人でしょ。その生きづらさで子供が三人もいて、まさか離婚したいって私から言い出すとは(夫は)思わなかったんじゃないかしら」

彼女のいう通り、勇気のいる決断だと思った。それでもみんなが不幸せにならない選択をしたかったと彼女は話していた。

「朝は5時に起きて子供を送り出して、夜は9時に帰ってから子供の夕食を作っているのよ。目が回っちゃう!」

それに比べたら私は守るものも失うものもない!未来は誰にもわからないから、望んでないけど、いつか人ごとじゃないかもしれない。覚えていたいなと思う彼女のエピソードは凛々しくて心強く、励みになった。


……とまあ、こんな感じで濃密な研修1週間目でした。出会いあり、別れありで、今週からはここで働きはじめました。

MAISON KITSUNÉ PARIS
Maison Kitsuné – Tuileries店
住所 rue du 29 Juillet 75001 Paris

いいチームメイトで、良いスタートでした。当分フランス語が上達するまでは働くと思うので、パリに訪れることがあればぜひお越しください!

最後までお読み頂き、ありがとうございました。 書くことを気長に続けていくことで自分なりに世の中への理解を深め、共有していきたいです。