先生にトイレに連れ込まれた話
卒業シーズンですね。みなさん。おめでとう。
今回はNOTEの課題に『忘れられない先生』というタグがあったので、僕も学生時代を思い出して、記事を書いていきたいと思います。
※この記事は3100文字程度で構成されています。
これは。中学生時代。
陰キャラの僕と熱血指導が好きなA先生のお話。
ある日。
各クラスで催しモノをすることになった。
何のためにするのか。文化祭だか体育祭だかは覚えていないが、とにかく出し物を出すこととなり、話し合いの時間が設けられた。
話し合いは、各クラスを大教室に集めて、生徒を班に分けて行う。クラスでまとまったアイディアをみんなの前で発表する。そんな流れだった。
イベントの出し物はすぐに決まった。
内容は覚えてないが、無難な出し物をすることになったようだった。中学生だし、穿ったモノをする必要はない。
やることに意味があるのだろう。
問題はなかった。そう、ここまでは。
イベントの話し合いというのは、授業の一環だが。グループディスカッションで好きなだけクラスメイトで話しあっていいというのは、学生にとって、ある種の解放感がある。
閉塞的な授業と違う環境だからなのか。
イベントの出し物が決まった後も、生徒達のお喋りは止まらず、場の進行をしなければならない教師達は弛緩した大教室の空気に、少しイラつきはじめていた。
そこで、大声を発したのが熱血先生のA先生。
今回の主役だ。
規律を守るという大義名分の元に、大教室の壇上に立ち、大声を張り上げて生徒を一喝する。
お喋りを止める生徒達。
静まる大教室。
威厳に満ちたA先生。
次のスケジュール開始の為に、教師の一人が、教室を見渡し教室に戻る号令を口にしようとする。
ーーすると。
小さな声で。
僕の真後ろの席で、ぼそぼそと話し声がする。
どうやら後ろの席で男子生徒が熱血教師A先生の陰口をつぶやいているようだ。
木を隠すなら森。
人数が多いからばれないと思っての陰口だろう。
僕は。
(おいおい。気持ちは分かるが、今は自重してくれよ。話し長くて帰る時間がいつも遅くなってるのに、目ををつけられたら、ますます、こじれて帰れなくなるよ。僕は帰ってポケ○モンがしたいんだよ。あと少しで図鑑コンプリートなんだよ)
そんなことを思っていた。
「おい!貴様!!!」
教室中。怒声が響きわたる。
顔を真っ赤にして、僕の席に迫って来る先生。
A先生だ。
バレたか。
ほらみたことか。やれやれだぜ。
真後ろの生徒に同情と哀れみ。沈黙は金を実践した自分に少しばかりの、愉悦を感じながら、余裕をもって迫りくる先生の方角に目をやる。
先生は親の仇を前にした怒り顔で、なぜか僕の席の前で立ち止まった。
そして、僕の胸倉を勢いよく掴む。
「え!?」
瞬間。平手打ち!
僕の体が座っていた椅子から、吹っ飛ぶ!
※一応念の為に書いておきますが、僕の学生時代。それなりに体罰は黙認されていました。
「先生が大事な話をしているのに、私語をするとはなにごとか!?」
どうやら、先生は勘違いしているらしい。
A先生の影口を言っていたのは、後ろの生徒だ。
大教室の広さ。生徒の多さゆえに誤認してしまったのだろう。痛みと衝撃で頭がパニックになったが、これは誤解だということを先生に言わなければならない。
「ち、違います。僕は、なにも言っていません……」
「嘘を吐くか!貴様!!」
火に油を注いでしまった。
A先生の頭の中では、影口を言ったのは僕で、叱られたので、言い訳をしている往生際の悪い生徒ということになっているのであろう。
陰キャラであるということもマイナスに働いていた。
誤解とはいえ、僕みたいな奴に舐めた口を叩かれ、黙っていたら教師としての面子を失ってしまう。
床に倒れて、半べそをかいてる僕の胸倉を再度、掴みあげ引っ張り、勢いよく大教室の外に出る。
廊下を歩きながら。
何処に連れて行かれるのか?
罪を犯し。
警察に連行される気持ちで、A先生に胸ぐらをひっぱられ続ける僕。
そして、向かう先は、
なんと、トイレ。
今のご時世なら、同人のいい男を想像するが、時代的にはトイレという個室空間はヤンキーのカツアゲや教師の指導のに打ってつけの場所だったのだ。
トイレに連れて行かれ、戸を閉められ個室の壁に叩きつけられる。
「自分がやりました」と白状しろというA先生。
だが、僕の頭は真っ白だ。
なにを言っていいかわからない。
「あっ。とか、うっ」
とか、陰キャ独特のつぶやきを発していると。
また怒声。
あまりにも声がでかく。他の階まで響く音量だったので、どうしたことか?と、野次馬が集まり始める。
(周囲の、ざわつく音で察知しました)
トイレに連れ込まれ、数分。
泣きながら、地獄のような尋問を受けていると、突然ノック音がした。A先生の返事も待たずに生徒が入ってくる。
それは、なんと、僕の後ろでA先生の陰口を言っていた男子生徒だったのだ。
自責の念に囚われたのだろう。
トイレの戸を開けた瞬間に頭を下げ
「僕がやりました!!!」と罪を認めたではないか?!
※今、考えると男子生徒の心境は、この漫画のような気分だったのだろうか?
僕は、閉鎖的な空間。緊迫した状況。辛さや苦しさ。怒りや悲しみなどの感情が入り交じり。混乱していた。
本当は僕が被害者なのだが。 なんとなくこの時、思ったものだ。
こいつ…!僕が女だったら、惚れてたかもしれん…!!っと。
まぁ、現実、この場にいる全員、男だが。
これで開放されると思った。
が、実際、現実は甘くなかった。
男子生徒の渾身の謝罪を前にして、A先生はあろうことか。
「そんなことで許しては、こいつ(僕のこと)の為にならん!」と言って僕の目を見据え、真剣に問う。
「お前が、罪を認めない責で、こいつは冤罪を、かぶりに来たんだぞ。お前は人に罪を被せていいのか!?」
なんで、そういう思考回路になるんだよ!
「え。でも、僕、言ってないし…」
それが、再びA先生の逆鱗に触れた。
「ッツ…!!お前のような卑怯者が今の日本を駄目にしたんだ!」
もう、わけがわからない!!
――殺される。
そう、思っていたら、今度は別の生徒がやってきて、僕の冤罪を証明してくれた。
「いや、そいつ。本当になにも喋ってないですよ」
※今、考えると、仲裁してくれた生徒は生徒会長のお偉い方だったんだと思う。
その声に同調するように、野次馬から他の生徒もトイレに入って来て、僕の冤罪を証明してくれる発言をしてくれる。
多くの生徒達の発言により。A先生は立場が劣勢になり、仕方なくトイレから僕を解放。陰口を言っていた男子生徒には、良く白状したと何故か褒めている。A先生。
もう、なにが、なにやら、わからなかった。
トイレから解放され。ヘトヘトになり、ベソをかきながら大教室に力なく歩いて戻る。僕。
すると。後ろから肩を叩かれる。
振り向くと。
出すモン出してすっきりしたような顔で爽やかに微笑む。A先生がいた。
冤罪の謝罪とかしてくれんのかな?
そんなことを、少し考えていたと記憶している。
だが、A先生は、やはり思考回路の違う。斜め上の発言をかましてくれた。
「良い勉強したね!」
なんのだ!?
何事もなかったかのように、A先生は大教室に戻り、他の教師達が帰りのホームルームの指示を各クラスに通達。
今回の冤罪事件は、なかったかのように過ぎて行ったのであった。
大人になった今だからこそ、先生に言いたいことがあります。
A先生。
先生が怒ってた場所。女子トイレです。
では、またね。
引用画像。
卒業のフリー写真。イラスト屋。学校トイレのフリー素材。漫画ぼくたちがやりました。レッサーパンダのフリー写真。
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