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鬼滅の刃はなぜ共感を呼ぶのか?

前回に引き続き、鬼滅の刃について考察していこう。

前回、鬼滅の刃のヒットの要因は共感だと考察した。

若年層からお年寄り。揺り籠から墓場まで。

どこもかしこも、鬼滅ブームに世の中が燃えている。

では、今回は前回のインタビュー。お年寄りの意見と中年の意見を深掘りしてさらに深く、鬼滅の刃のヒットついて考えていきたいと思う。

お年寄りの意見①

主人公の動機が分かりやすい。

これに関しては前回述べたように、主人公こと炭次朗君の動機に納得できるからだと思う。妹が鬼になる病気になりました。長男の主人公は妹を治すために鬼退治をする。大正時代の死生観等からして、お年寄から見れば、この考えは当たり前のことで、「そりゃそうだろう」と納得できるものなのではないか?

例えば、これがワンピースなど、「海賊王に俺はなる!!」と言われても、高齢の方から見れば、「は、はぁ?」という感じになるに違いない。

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「はぁ……頑張ってくださいね…」という感じなのではないだろか……?


正義

分かりやすいということは、お年寄りにとって正義なのだ。

お年寄りの意見②

なんか懐かしい。

鬼滅の刃はヒット作に珍しく、大正時代を舞台にした話しだ。

大正は明治の後、昭和の前の時代だ。

昭和、平成、令和を生きる我々にはあまりピンとこないが15年しかなかった時代。そんな刹那的な時代だが、お年寄りの方々にとっては自分の祖父母、父母が生きていた身近な時代なのだ。時代背景や登場人物の生活に自分達の過去を思い出すのかもしれない。

大正

大正2

もしかしたら主人公や鬼になった妹に自分を投影しているのかもしれない。そう、子供や若者がゲームや漫画の主人公のコスプレをするようにだ。

お年寄りの意見③

孫と話しができる。

正直、鬼滅を年寄が読む理由として、個人的に、これが一番強いと思っている。

私は福祉関係の人間なので、年寄りと孫との間には、はっきり言って共感できるものが、ほとんどない。と個人的には思っている。

理想

生きてきた時代もそうだし、知識や経験の質や量、寿命や健康状態は正逆を位置している関係だとも思っている。

だからこそ、真逆に存在するからこそ、お互い憧れや羨望に近い感情を抱くのだろう。

そんな中でお互いに共有できる話題が、鬼滅の刃なのではないだろうか?

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孫達はその内容の格好良さやストーリングに目を輝かせ、孫が夢中になってる作品を祖父母達は分かりやすさと懐かしさで物語りを読む。

そして、なにより、この鬼滅の刃は、

お年寄りの方が若年層より知識や経験で物語りの内容理解に優位に立てる設定なのだ。

上でも述べたが、この物語り、お爺ちゃん、お祖母ちゃんが関わった世界設定なのだ。背景や衣類、生活様式や鬼の伝承。生きた時代ゆえ馴染み深いものだと言える。

実際、鬼の幹部達の名前も全て過去に大流行した病気だという考察もある

医学が発達し病気の致死率が下がった近年では黒死病、天然痘など子供達は実感しにくいことだろう。そんな中で鬼の幹部達の元ネタ。ひいては病気の脅威について実体験した知識や経験を雑学まじりで孫に伝えて聞かせる。

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上弦の鬼達は世界的な感染症がモデル?

これ、理想の会話ではないだろうか?

要は経験を生かせる数少ない希少な奇跡のような娯楽作品なのだ。

以上がお年寄りの鬼滅の刃に対する意見の考察だ。

分かりやすさ、懐かしさ、孫と会話できる。という意見を総括するとお年寄りにとっては、

鬼滅の刃は馴染み深い世界観で、読みやすく孫と会話ができ、かつ自分達の方が優位に立って話せる作品ということだ。


では次は我々、中年層にも受けた理由を考察してみたいと思う。

中年層(30代~50代)の鬼滅の刃の感想

中年層の意見① 

無惨様に殺される鬼に自分の社畜時代を思い出した。

この物語りのラスボス、鬼の棟梁こと無惨様。非常に冷徹で強く、しかも気まぐれに制裁を施してくる。パワハラ上司だ。

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特に有名なのはこの場面。

自分のお気に入りの鬼(部下)が主人公に倒されたので、お前ら弱すぎると一方的に弱い幹部を惨殺する場面。

むざんさま

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ワタミの社長かよ……

「これ……パワハラ会議じゃん」

初見、これを見たときは既視感のある、この光景に絶句してしまった。

今では働き方改革等がすすめられて、無理なサービス残業を強いたり、暴力を振るったりを公にできなくなったが、30代~50代の方々はバブル終焉からリストラ時代、就職氷河期を生きた世代。

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やったことない営業をやらされたり、無理なノルマを課せられたり、会議中に皆の前で恥をかかされたり、そんな屈辱的な時代に生きた人達。

時は流れ、ブラック企業などが弾圧されてきた現代。ふと、流行りなので、鬼滅の刃という漫画を読んでみる。

そして、読み進めると、そこには、昔の(思い出したくもないかもしれないが)社畜時代のパワハラ会議が漫画化されているではないか?

同僚のAは殺される無惨様に殺される鬼達を見て、思ったらしい。

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これ、俺じゃん……

そして。

パワハラ会議の内容から興味をもち、物語りを冒頭から再度読む。

内容は面白いのですんなりと読み進められる。

なにより、ボスがあのパワハラ理不尽上司を討伐するというストーリーなのだから、尚良い!

中年層は昔の自分を思い出しつつ、登場人物に感情移入しているのではないか?そんなことを考えさせられる意見でありました。

中年層の意見②

妹を助ける姿に泣ける。

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これは、お年寄りの意見でも語ったが、鬼滅の刃は、とにかく内容が分かりやすい。社会人の皆さんならお分かり頂けるだろうが、社会に出ると、

時間は金よりも重いッ!

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そんな貴重な時間を使って漫画を読むのだから、社会人にとって漫画を見る目は学生よりシビアだ。共感できなければ読むのを止めてしまうだろう。

その上、人格というものを社会に出ることでヤスリにかけられ、子供の時にあった素直さを喪失していく。

――つまり、ひねくれもの、になるのだ。

漫画というのは、基本的に妄想を描く物で、大なり小なり、理想の為に、わがままを通すキャラクターが多いのではないだろうか?そうしないと物語りは成立しにくいし、無理を通すキャラクター達の姿は、こと少年漫画においては魅力的だ。

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友達になりたいか?というと…うん。まぁ、そうだね…

だが、社会人からすれば……

「結局才能なんでしょ?」

「自分だけよければ良いと思うの人間は、現実だけで十分だ。」

「夢や希望を語る姿が眩しすぎて…痛い」

これが、本音なのではないだろうか?

その点、鬼滅の刃のストーリーは。

家族惨殺されて妹も鬼になる病気になったんで、治す為にがんばります。

この動機に対して、思うこと。

「うん。じゃ、仕方ないね」というものだ。

中年層というのは、今後、親の介護や子育てをしなければならない。

家族のために頑張る主人公(子供)に共感とちょっとした尊敬を感じるのではないだろうか?

中年層の意見③

絵が綺麗。

これに関しては、言わずもがな気がしないでもないが、少し考えてみると、このアニメ、テンポが滅茶苦茶、早いのだ。無駄がないというか?観てて良い意味で、展開が異常に早い気がする。これは原作者の漫画を描く力なのか、アニメ制作者の構成力なのか?は分からないが、飽きさせない作画をしている気がする。まぁ、アニメの絵柄については、人それぞれなので、ここでは多くは語らないこととしよう。

以上が、鬼滅の刃がなぜ、共感を呼ぶのか?の考察だ。

インタビューをした人間が中年層から老人だったので、かなり穿った考察になってしまったかもしれないが、それでも、このアニメが学生以外にも受ける理由を考えるヒントになったと思う。


では、次回は最終層――

鬼滅の刃の最も愛読する。学生達。そして空前のヒットの理由について考察していこうと思う。

またね。

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