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任短がネガティブなことだと思ってた時期がぼくにもありました

もう1週間前のことになるけれど、セントビンセントの隊員が1人任期短縮で帰国した。

ぼくの1つ前の隊次で派遣された隊員で9カ月ほど活動したことになる。

理由は、肉体的と精神的なストレスからくる健康問題だ。

日本をはじめとする先進国や途上国でもハイクラスなところで生活してると想像できないけれど、途上国での生活というのは、現地の人よりちょっと良い生活水準だとしても結構しんどい。基本が現地の人レベルだからほんとにしんどい。当たり前のレベルが低いから。(水シャワーは良しとして、その水は雨水を貯めてるものを使うから、雑菌が多くて眼病を引き起こす可能性があります…なんて想像できないでしょ。)

ぼくも協力隊に参加する前や、訓練中ですら任期短縮なんて情けないと思っていたけれど、現地に来るとそんな考えはすぐに変わった。

これは体験しないとわからないことだと思う。日々、道端から差別用語のヤジが飛んできて、賞味期限を気にしていては生きていけない。かといって職場は職場で、自分のがんばりを認めてもらえない、理解されないなんてことがままある。ほんとなんのためにがんばっているのか、何をモチベーションに耐える闘いをしないといけないのかわからなくなる。

これは想像以上にしんどい。

一般に、よく大卒20代の年間の機会費用は500万円から600万円だと経済学上の概念で想定される。機会費用とは、他のことをすれば得られたであろう最大の利益のことだ。ここは各々自分の値段を当てはめてほしい。

なにか新しい挑戦をするとき、あるいはリスキーなことをしようとするとき、人はその機会費用と自分が取る選択肢を天秤にかける。

新卒で就職すれば年収500万円なのに、大学院へ行ってもよいのか。2年間で授業料+生活費で500万円として、就職していれば得ていたであろう2年間の収入1,000万円。

計1,500万円を賭すほどの価値が大学院にあるのか。

院卒であれば、年収は1,000万円だから失った2年間の機会費用はすぐ回収できるし余裕でおつりがくる類いのものなのか。

取ったリスクに見合うリターンが見込めるのか。それはどの程度の確率なのか。

明るいニュースのない日本で生まれ育ったぼくらは常にそうやって考える。

ぼくらはそういうリスクを取って、馴染みのない不便なところに派遣されている。

組織として考えた場合、もちろん派遣された隊員には2年間任期を全うしてほしい。少なくないお金が隊員のために投入されているし、多くの人がぼくたちが安全に活動できるように裏に表に動いてくれている。

けれど、それを個人の人生として考えた場合、大したお金ももらえないのに精神を消耗してまで2年間がんばることかという疑問は当然でる。これは専門家でもない人が、たった1人で派遣され、たかだか2年間がんばったところで世の中はそんな簡単に変わらないよというリアリスティックな視点も入っている。

自分が派遣されたところが、ほんとに良いところだと言えるのはそれはほんとに素晴らしいことだと思う。おめでとうと言いたい。

派遣前訓練の修了式のとき、どこかの偉い人が、

日本人にとっては日本ほど住みやすい土地も安全な土地もないんです。それを、わざわざ、危険なところに志願していく。君たちはいったいどんな顔をしてるんだ。どんな顔をして任地へ向かうんだと、その顔見てもらいたくて、うちの若手職員を連れてきました。

みたいなことを言った。

当時ぼくはなんだか大層なことを言ってるな、戦争に行くわけじゃないんだからみんなのほほんとしておるよと思っていたんだけれど、そんなこともないのかもしれない。

1914年、アーネスト・シャクルトンという人がとある求人広告をうった。

MEN WANTED for Hazardous Journey.
Small wages,
bitter cold, long months of complete darkness,
constant danger, safe return doubtful.
Honor and recognition in case of success.
 (求む男子。至難の旅。わずかな報酬。極寒。暗黒の長い日々。絶えざる危険。生還の保証なし。成功の暁には名誉と称賛を得る。)

これはイギリスの南極探検隊員募集のものだ。(ひょっとしたら幼女戦記で知っている人の方が多いかもしれない)

名誉も称賛もないのが青年海外協力隊だろうなぁ。

当時、この広告には5,000人以上の応募があったらしい。

タフな条件よりも夢や冒険のロマンがあったからだろうと思う。

青年海外協力隊も同じなんだろうと思う。

それぞれ夢やロマンを持って参加している気がする。


あれ、いま気づいたけど、ぼくとっくに心折れてないか?

しれっと帰国しているかもしれない。


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