見出し画像

『ダイアナ・ヴリーランド 伝説のファッショニスタ』と『どの色すき』 シネマと戸田デザイン研究室 Vol.4

映画大好き!な、戸田デザイン研究室 広報・大澤がテーマを設け、素敵な映画作品と戸田デザイン研究室の作品をご紹介する【シネマと戸田デザイン研究室】。

第4回目のテーマはファッションを主軸に【多様な美しさを知り、自分の世界を開いていこう!】テーマにご紹介します。

ダイアナ・ヴリーランド 伝説のファッショニスタ 監督:リサ・インモルディーノ・ヴリーランド

「力のあるファッション編集者と言えば?」と聞かれたら、多くの人がアメリカ版『VOGUE』の編集長、アナ・ウィンターの名を挙げるかもしれません。

しかし、この方を忘れてはなりません!ダイアナ ・ヴリーランド 。

世界で最も古くからあるファッション誌『Harper’s BAZAAR (ハーパース・バザー)』で20年以上働き、後にライバル紙『VOGUE』にヘッドハンティングされ編集長に。70歳を目前にメトロポリタン美術館衣装研究所の顧問に就任した、超パワフルウーマン!

鍛え上げた美的感覚で自らの人生を切り開いた彼女の姿を映したのが、こちらのドキュメンタリー映画です。

-----

1903年、パリで生まれたダイアナ。様々な文化が花開き ベル・エポック(美しい時代)と言われた時代のパリで裕福な家庭に育ち、美に対する感覚と知性を磨きました。

とても恵まれた環境に感じますが、容姿のことで母親から酷い言われ方をされるという辛い幼少期を過ごしたようです。しかし、彼女はそんな逆境にも負けず感性を育んでいきます。

ダイアナの人生が大きく変わったのは、とあるパーティーでの出会い。シャネルのドレスをあまりに自分らしく着こなす彼女を見て、当時の『Harper’s BAZAAR 』編集長がスカウト。

ここから彼女の才能が大爆発!人や人が作り出すモノの魅力と可能性をいち早く見抜く天賦の才と、既存の美や世間の常識にとらわれない新しい視点でファッション誌の新たな未来を作りあげました。

『Harper’s BAZAAR 』で連載した【Why don't you ?】と題したコラムでは、既成概念にとらわれない「●●してみたら?」を提案。当時の女性の心を大いに刺激しました。また音楽や社会など、多角的な視点で誌面を編むことも彼女が開拓した分野です。

さらに個性的な特徴を持ったモデルを積極的に起用。小枝のような細い脚でミニスカートの女王と謳われたTwiggy(ツィギー)をアメリカに呼び、まだ無名だったミック・ジャガーの厚い唇を大絶賛し誌面に紹介。彼女の元で素晴らしいファッションフォトグラファーも誕生しました。

(ちなみに…現代のシューズデザイナーの帝王、マロノ・ブラニクに靴のデザインを勧めたのも彼女!ビキニやデニムが発展したのも、彼女が大胆な特集を組んだからなんです。)

-----
ファッションにおいても美には様々な形があります。それを知り、感動したり、時に嫌悪したりすることで感覚は磨かれ、自分の好みやスタイルを掴むことができます。

そうなると人生は楽しい!装いで自分を表現する術を知り、新しいものに触れたいと言う好奇心も持ち続けられるでしょう。

ファッションを通じて様々な美を知る・楽しむことは視野を広げ、人生の幅を広げる。ダイアナはその意味を深く理解し、自分の才能と人生をかけて多くの人にその可能性を提案し続けたのだと思います。

『どの色すき』 作・絵:とだこうしろう

画像1

さて、こちらは子どもたちにファッションを通して色の豊かさ、美しさを伝える戸田デザイン研究室の絵本『どの色すき』。私が勝手に"戸田デザイン版  VOGUE"と呼んでいる1冊です。

お話は色の組合せを考えることから進んでいきます。例えば「レモンのような、きいろいTシャツに…」。と言うお題を受けてコーディネートが展開されるのですが、これが洗練されているのです!濃いピンクにモカっぽいブラウン、グレーと黒の2トーンコーデ。

どの配色も偏った子どもらしさにとらわれない、洒落たコーディネートが満載。(さらに服だけでなく傘や帽子と言った小物使いまで披露されるのがニクイ!)
最後は盛大にファッションショーも開催されます。

様々な心躍るコーディネートを提案する作者 とだこうしろうですが、決して"この組合せが最高だ、一番だ!"ということは言いません。

「どの色すき?」「どの配色があうかしら?」「ぼくはこの色がすき。きみは?」最後はいつも子どもたちに問うのです。まるでファッションを通じて自分の好きなテイストを探る練習を促すように…。


「知育絵本とファッション」この組合せに若干の違和感を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、言葉や数字など 知識を持ち自分の考えを広げること。色の豊かさや服飾の面白さを知り、自分らしい装いを生み出すこと。どちらも同じくらい豊かで、自分という核を作るのに大きな支えになるものです。

そして一つの世界に美を感じ強い好奇心を持てば、自ずとさらに広い世界へと目を向けていくもの。それを実践したのが、まさにダイアナでした。

ちなみに とだこうしろうも装いには自分なりのこだわりを持ち、帽子や巻物などの小物使いも楽しんでいたそうです。

様々な美の在り方に触れることは、自分の世界を広げ可能性を生み出す素晴らしい手段のひとつ。流行や他人との比較に振り回されず、そんな気持ちでファッションに触れると、また違った自分に出会えるような気がします。