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『ピストルオペラ』と『22の色』 シネマと戸田デザイン研究室 Vol.2

映画大好き!な、戸田デザイン研究室 広報・大澤がテーマを設け、素敵な映画作品と戸田デザイン研究室の作品をご紹介する【シネマと戸田デザイン研究室】。映画のイラストは、弊社 戸田やすしのオリジナルです。

第2回目のテーマは【革新は伝統の先にあるのさ!】をテーマにご紹介します。どちらも日本の色彩感覚やセンスの素晴らしさ、「型(カタ)」を知ることで生まれる新しさを伝える作品です。

『ピストルオペラ』 監督:鈴木清順

日本が世界に誇る映画監督のひとり、鈴木清順の作品。鈴木清順監督と言えば「清順美学」と言う言葉が象徴するように、日本特有の美しさに強烈な個性をプラスしたイメージが魅力です。

『ピストルオペラ』もそんな清順ワールド全開の極彩色エンターテイメント!日本国内のみならず、多くの海外の映画ファンも熱狂させました。

江角マキコさん演じる殺し屋、通称“野良猫”はエージェントに殺しの依頼を受けます。(このエージェントは、世界に日本の美を伝え続けたウェアリスト・山口小夜子さんが演じています。)

しかし、連絡の行き違いからターゲットを誤ってしまい、ここから殺し屋ギルドのNo.1に君臨する通称"百目”との命を懸けた戦いが始まるのです。

ストーリーはかなりシュール…。話の筋を追うより、次々に展開される美しく妖しく強烈なイメージに身を委ねるのが良いかも知れません。黒い着物に猫柄の帯を締めた  江角マキコのシャープな美しさ。幽玄な美を放つ山口小夜子の存在感は圧巻。

渋い色味の暖簾、蛇の目傘、提灯、障子と言った小道具。そして銭湯や富士山といったど真ん中のロケーションに独自の美を加えた世界は、日本人でも思わず「ワンダフル、ジャパン!」と叫びたくなります。


ちなみにこの映画は清順監督が80歳に手が届く晩年に作られたと言うのだから驚きです。古きを知り、常に独自の世界を打ち立てる清順監督のエネルギーと独創性は、いつの時代にも観る者に不朽の新しさを感じさせるでしょう。

『22の色』 作・絵:とだこうしろう

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日本の伝統美から生まれる強烈なオリジナリティー満載の『ピストルオペラ』。その世界に心を踊らせた方にぜひ一度読んでいただきたいのがこちら、『22の色』。昔から伝わる日本の22の伝統色を選び、紹介していく作品です。

ご覧の通り見開きの1ページには色とその色のイメージにあわせたイラスト、もう1ぺーじには色の名前と由来が書かれています。じっくりと読んでいくと、昔の日本人の細やかで遊びごころに溢れた色彩感覚に思わず唸ることも しばしば。

微妙な色のニュアンスを実に繊細にとらえていたことがわかりますし、「ときいろ」「あさぎいろ」など自然の美しさも取り入れたネーミングセンスも粋!

今でも着物などの伝統的な日本の衣装を目にすると、その斬新な色合わせの妙に驚くことがあります。(個人的にはお坊さんの着られる“袈裟”のカラーブロッキングの凄さにも、いつも感動してしまいます。)

そして「斬新」と評価される海外のアート作品が、こうした日本の色彩文化に大きな影響を受けている事もよく見受けられます。


衣装でも映画でも本でも、人々が作り繋いできたものには 根っこがあります。色彩だって同じこと。受け継がれてきた「型(カタ)」を知って自分なりの表現を加えていくことで、唯一無二の新しさが生まれていきます。

清順監督のように本当の意味での「型破り」な面白さを生み出すためにも、ぜひ日本の伝統色の豊かさを知っていただきたいです。




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