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#ミステリー小説部門
花畑お悩み相談所 プロローグ
プロローグ
寝る前にスマホを見ないのは、良い眠りのためのお約束だそうだ。
そう言われましても。若い頃からずっと夜型で、寝室へ向かう前に最後のメールチェックをしてしまう。退職した今でも、その習慣は変わらない。富原律子は老眼鏡をかけると、スマホの画面をタップする。
深夜のリビングに、かすかな金属音が届く。家の前の空き地に、マンション建設が始まっていて、今夜は突貫で電気工事をすると知らされていた
花畑お悩み相談所 第一話
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悠人からのメール (1) 赤いスカーフの女
紅子はカゴを抱えて歩きます。小さな頃は重かったものが、もうすぐ十三になろうという今は、片手で持ってスキップでもできそうでした。
けれどもそんなことはしません。中には、おばあさんに届けるケーキとワインが入っているから、揺らさないよう、石につまづいたりしないように気を配りながら山道を行きます。
真っ赤なスカーフで顔を巻き、
残夢【第一章】①手錠
女は髪を振り乱して俺から逃れようともがく。手首は白くて折れそうに細い。
俺はそのコートから伸びでた手首を素早く掴んで捻りあげ、女がそれ以上抵抗できないようにブロック塀に体を押し付ける。
「イヤッ……」
小さく息を漏らした女のおくれ毛は汗ばんだ頬に張り付き、思うように身動きの取れなくなった上半身を必死に動かし振り向こうと再び藻掻く。
抵抗しても無駄だ。
俺は必要最小限の力を込め女にそれ