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私のショートショートの書き方・解説 #2|ショートショートnote杯

こんばんは、戸画とが美角びかくです。

需要ありそうなので、前回の記事からの続きです。

今回は以下の3作品です。

コロコロ変わる名探偵
数学ギョウザ
空飛ぶストレート

ネタバレを含むので、事前に読んでいただけると幸いです。

コロコロ変わる名探偵

私の中で『アナログバイリンガル』と並んで、もっとも難しいと感じたお題の1つでした。

最初に思いついたのは、平和な街なかで名探偵が事件を求めてコロコロ変わるというアイディアでした。

イメージしづらいと思いますので、残っていた全文を引用します。

「さて…今回の事件についてですが…」
いや、カッコよく決めても誰も集まってないからね?

「そう、だから早く関係者を現場に集めなくてはならないのです」
いや、そもそも事件が起こってないから。

「そう、だから事件が起きる必要があるのです」
こんな平和な街なかで事件なんて起きないでしょ?

「それならばクローズドサークルを用意しましょう。それが確実だ、間違いない」
いや、だからここ都会のど真ん中だから!

「ふむ…では考え方を変えて私があなたを殺すというのはどうでしょう?
いや、ダメでしょ!僕だって死にたくないし。

「私が殺したのだから事件は確実に解決しますよ」
そしたら名探偵じゃなく、ただの殺人犯だよ。

「同時に成り立つ可能性も?」
推理を披露してる最中はそうかもだけど、最後には殺人犯しか残らないよ。

「なんなら殺人犯でも…」
いやいや、君はいったいどこを目指してるのさ!?

「それが名優の辛いところさ」

メタ視点の落とし方(名優=小説の登場人物として作者に演じさせられていた)は悪くないと思ったのですが、どうもキレ味が悪いですし、オチも読み取りづらいということでボツにしてしまいました。

あらためて読み直してみると、文章次第ではもう少し面白く出来たような気がしなくもありません(最後も『名優』ではなく『登場人物』とすべきだった気がします)。

そんなわけで考え直した結果、採用したのが「推理がコロコロ変わる」という、まぁ他の作品と被ることが目に見えているアイディアでした。

そこで問題になったのが「なぜ名探偵が推理をコロコロ変えるのか?」という点でした。名探偵がヘッポコという落とし方ではイマイチ捻りが足りないと感じたからです。

そこで「友人たちが共犯だと見抜き、そのことを悟られないように(いつものような)推理劇を演じる」という落とし方にしました。

そう、名探偵であっても私だって1人の人間なのだ。
親友である彼女ら全員を共犯として告発することなど誰ができようか。

あとは文字数との戦いでした。

最低でも3人は犯人として登場させたかったので、410字に収めるための校正がわりと大変だったのを記憶しています。

数学ギョウザ

一定の層からやたら人気が高かった(ように感じた)のが本作です。

最初に私の頭をよぎったのは「数学ネタは他と被るだろう」ということでした。また、ショートショートで読むの物語として難しいのはあまり好まれないだろうと思い、(純粋な)数学ネタは入れないことを決めていました。

しかし、お題に『数学』が含まれている以上、数学要素を入れないわけにもいきません。

そこで「食べたら数学が得意になるギョウザというのはどうだろう?」と考え、そこからギョウザのニンニクを連想し、その臭いをオチに使用することを思いつきました。

テストが終わると、僕は満面の笑みで隣の連中に話しかけた。

「おい、今回のテストどうだったよ?」

すると、連中は複雑な表情を浮かべながら答えたんだ。

「お前がニンニク臭くて集中できなかったよ」

この作品は最後の一文でオチているにも関わらず、やや独特の読了感があるように自身で感じています。なんと言いますか、物語が終わっているけど終わってないような感じでしょうか。

これは結果として成功だったように感じますが、実のところ410字という文字数制限による部分が大きかったです。わりと細かい表現をたくさん修正して何とか410字に収めた作品でした。

空飛ぶストレート

ショートショートだからこそ許されるであろう作品に仕上がった本作です。

お題を見て最初に思ったのは「ストレート空を飛ぶ」ではなく、「ストレート空を飛ぶ」なんだな、ということです。そうすると当然のごとく「ストレートって何だ?」という疑問が湧いてきます。

ストレートヘア、ストレートネック、ストレート……うーん、どれもいまいちピンとこない、という感じでした。

そこで現代における神のような存在である Google 検索に頼ることにしました。

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ウイスキーなどを水で薄めず、生(き)のまま飲むこと。

いやはや、これだと思いました。

お酒が好きなのにウィスキーが思い付かなかったのは『空飛ぶ』という単語が頭に残っていたからかもしれません。

ちなみに余談ですがウィスキーならマッカランのストレートが一番好きかもしれません(一番好きなお酒はワインですが)。

閑話休題。

そんなわけで「ウィスキーのストレート」をストレートに飛ばしてしまうことに決めましたが、問題はどうやって物語を落とすかです。

ウィスキーについて考えていたら、飲み方として「ロック」が頭をよぎり、「ストレートだったはずが、(何らかの理由で)混ざってロックになってしまった」というオチを思いつきました。

そんなわけで俺たちはオンザロックのウィスキーになったわけさ。

あとは『ストレートに生きる』とか『ロックに生きる』みたいな言葉の連想に力を借りつつ、「ストレートに生きることを曲げた男が結果としてロックになる」という、分かるようで分からないような変な話が完成しました。

ちょうど執筆時に #ほろ酔い文学 という note のお題があったので、それとかぶせるようにして「酒場で昔話を語っていた」という設定にしてみました。

酒のつまみには悪い話でもなかったろ。

この一文は読者に「まぁたしかに酒のつまみの暇つぶしに悪くない話だった」と思わせる効果もある、個人的にはキレのある一文だと思っています(ウィスキーだけに)。

あとがき

といった感じで、3作品について作者による解説・ネタバレでした。何かしら参考・共感などにつながるものがあれば幸いです。

記事を書いていて需要があるか不安になることもあるので、スキ・コメントなどでリアクションいただけると助かります。

もちろん、意見・感想などはお気軽にです。

それではまた次回をお楽しみに(?)

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