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天球の卒業式

筆で文字を記さなくなったから
誤りは 消しゴムで書き直せる
ひとつの空間に居なくても話せるから
コメントは 液晶のなかで消去できる
やり直しの効く生活に
慣れきった僕らは
やり直せない間違いに弱くなった

すれ違うあなたとの感情
置いてけぼりの淡い妄想
途切れてしまった僕らの創造は
地平を見下ろす天球に吸い込まれた

無数に浮かぶ小惑星の海で
定まらない座標軸ばかり求めている
うなだれたままじゃ変わらない
たとえ黒い雲に覆われても
僕らは
スピカを見つけられるかな

卒業しよう
湿りすぎた過去の詩を
このまま終わりたくないだろう
どれだけ時の番人が冷たく当たろうと
恥も 愛も 妬みも 怒りも
仰いだ星空に撃ち返せ

「あんなことしなければ」って
悔いるのはもうやめよう
無理する必要はないんだよ
夜に封切られた涙が
僕らを一人にしないから

卒業しよう
怒りに紅く染まった月を
未完成の道標が
空白だらけの天の川が
抽出された言葉たちが
僕らが棲む常夜の闇を埋めていく

人間の運命に俯いてしまう
僕らでも
人間の可能性に帰依する
僕らなら
もう一度 仲間と
星空を歩けるよ

ほら スピカはそこに在る

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