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損をするのは嫌だと考えるのは卑しいと気づきたい

 日銀総裁の発言は為替介入以外の方法としては最強の円高効果だった。国際金融市場の輩に追い込まれた挙げ句の策であり、そこに誘導された結果でもあったのは皮肉でしかない。こうした何気ないニュースの背景で、一握りの金持ちがまた私腹を肥やしたことには違いない。
 これを契機に日本は諸外国との金利差を埋める方向に動き始めたということになるのか。実際にはとても直ぐに埋まるような金利差ではないが、将来の方向性が匂ってくるだけでも市場は大きく反応するものだ。たとえ示された方向性に大した根拠や信念が無くても。

 今年のトレンドとなった円安ムードは少し前から沈静化しつつあった。アメリカやヨーロッパの今後の利上げもあまり期待できなくなり、世界で物価上昇に伴う景気減速懸念もあって市場はドルの一人勝ちブームに疑心暗鬼になりつつあった。
 
 欧米ではクリスマス休暇を迎えるこの時期、今年の営業は既に店じまいという市場関係者も多いはずだ。それはスプレッドの拡大とボラティリティの高まりを招き、値動きが荒くなる事を意味する。
 だから、冬休みは円安切っ掛けに興味を抱いたFXにじっくり取り組もうと考えている人は注意が必要だ。皆が休んでいるときは休んだ方が良い。火傷をしないためにも。
 普段とは違う値動きの中でたまたま上手く行ったとしても、年が明ければ上手くいかなくなる可能性が高い。
 
 来年の円相場は円高方向に向くのだろうか。そうだとして、ここ日本での資源高や物価高はどうなるのだろうか。
 昨日までよりも今日の方が物価が高いのは悪いと感じるのは、私達がそう思うような社会を生きているからだ。高度経済成長の頃は、モノの値段も給料も右肩上がりに上がっていた。金利が高かったから借金したら利払いは大きかったけれど、銀行に預金しているだけでどんどん増えたし、もちろん投資をすればガンガン増えた時代だろう(私は世代でないので知らない世界だが)。
 そして何よりも、明日は今日よりもっと良くなるという希望や期待が現実感を持って共有されていたから、みなエネルギッシュで上を向いて歩いていたものだ。たぶん。

 今日は貧しくても、明日は少しだけ貧しくなくなる。そんな未来が保証されているとしたら、その遥か先に開けている黄金の世界を夢見て頑張れるというものだ。
 もっとも、みんなが同じように少しずつ豊かになっていく世界では、誰かが突出して裕福になるということはあまりない。つまり大きな夢はつかみにくい。しかし多くの人が小さな夢を分かち合う。そんな世界だろう。

 明日を信じることが出来ない状況は間違いなく社会を停滞させる。
 景気を良くしようと思って行われた経済対策が意外にも思い通りに行かず、社会がより良くなるようにと思って行われた政策が意外にも人々を不幸にしてしまう。何事も計算通りに行くものだという幻想が、そういった思い違いを招く。それは為政者側だけではなく、生活者側にも当てはまる。
 本当の世界は何がどうなるのかは分からないし、政治に過度に期待しても駄目だし、赤の他人に頼ってもたかが知れている。

 相手を出し抜いてどうやって自分が得をするかを考えずに済むような仲間と共に生きる。自分が損したとしてもそれで仲間が得をするならまぁいいやと思える間柄。そういった人間関係を構築出来るような社会の仕組みが自然発生的に出来てくる事は無いのだろうか。
 それが叶わないとしても、自分だけが損をするのは嫌だと考えるのは卑しいと気づきたいと思っている。

おわり

 
 
 

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