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難民就職

 ウクライナからの難民を受け入れているポーランドでは、現地のハローワークを通じて既に700人以上が就職しているという。
 彼の地のハローワークにはウクライナ語で求人の張り紙も出されている。

 同じようなことが日本のハローワークでも可能だろうかと想像してみたが、とてもじゃないが無理だろうと思った。

 まず、難民の受け入れがスムーズに行かない気がする。
 難民以外の外国人の受け入れだけでも上手くいっている気がしない。
 行政手続きもそうだが、我々の意識の問題もある。
 日本に住む大和民族、アイヌ民族、琉球民族などの民族を仮に日本民族と呼ぶとすると、日本民族から見た場合に、日本民族以外以外の外国人との間には精神的に大きな隔たりがあることが否定できない。外国人や難民が日本国籍を取得して日本人になったとしても、日本民族の日本人からみれば同じ日本人ということにはならない気がする。
 日本国籍を持つ日本人のうち、純血日本人(日本民族)と非純血日本人(国籍取得した旧外国人)には意識上の境界線があって、容易には取り除けないのが現実であるように思える。

 このことは紛れもなく差別意識の現れで、それが故に、外国人を受け入れた際にはある種の「お客様」として扱われがちになる。親しくなれば決してお客様ではなく、同じ人間としての付き合いが出来るかもしれないが、そのためには外国人側でも日本流への歩み寄りが必要だったりして、何かと高いハードルを超えなければならなかったりする。
 「お客様」は一歩間違うと「隷属者」として扱われてしまうこともある。それは彼ら彼女らが「日本語」を喋れない、すなわち人間ではないという誤った認識をしてしまう人の場合に起こる。これは悲劇でしかない。

 仮に外国人の難民が無事に受け入れられたにしても、ハローワークを利用して就職先を探せるようになるかというと疑わしい。難民とは言え母国では普通に仕事をしていた人々で、中には高学歴の人もいるだろう。そんな人々それぞれの能力に見合った就職先がハローワークに登録されているとは思えないし、登録されていたとしても現在のハローワークのシステムでマッチングが出来るとは思えない。
 正規に就職するということは、納税や健康保険や年金の問題もクリアしていなければならない。そもそも日本人でさえ新卒生以外では正規雇用を獲得するのが困難な状況の中で、外国人難民が正規雇用を得るのは夢のまた夢ではないか。

 そして一層ハードルが高いのが言葉の問題や生活習慣の問題だ。
 例えば日本民族のあなたが明日急に難民になって、中東のイスラム圏の国に行くことになったとする。就職先ではアラビア語が使われていて、それ以外の言語は通じないとする。あなたはイスラム教のしきたりも知らないとする。そんな中で言葉を習得し、価値観や人生観、生死感を含めた人々の生活習慣を理解し、その社会に馴染んで生活することが容易に出来るだろうか。
 外国人から見た日本という国はそんな風に見えるのかも知れない。
 中東の国々では日本とは違って受け入れ体制が整っているかもしれないが、ここ日本では右も左も分からない外国人が住みやすいと思えるようになるには相応の努力が必要だし、時間も掛かるはずだ。

 日本では日本民族とそれ以外という無意識な区分け意識は強固で、それが差別意識の一種であるということを私たちは良く理解しなければならない。区別と差別は違うというが、見た目や出生地を気にして接している時点でそれは区別ではない。
 みんなが同じという前提ではなく、みんなが違うという前提に立たない限りは、どうしても「みんな(日本民族)」と「みんな以外」の境界線が出来てしまうので差別意識を消すのは難しい。
 初対面の人でも日本民族というバックグラウンドは共通していることの方が圧倒的に多いから、みんなが違うという前提には立ちにくい。

 外国籍の人が日本人口に占める割合は2%だという。
 50人にひとりが外国人と聞くと思ったより多いという印象があるが、かなりの少数派であることには変わらない。
 日本で難民がスムーズに就職出来るようになるには、どのくらいの年月が必要だろうか。

おわり
 

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